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王女ですが、可愛いウエイトレス目指します!  作者: 浦 かすみ


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覗き魔が役に立った日~シュリーデ&ローズ~

ヒーローの名前を思いっきり間違えておりました。失礼致しました




 膝枕……それは何とも言えない至福の時間だった。


 ローズベルガのふんわりとした太腿の質感と、呼吸をするたびに小さく動くお腹や太腿の躍動感。


 スン……匂いを嗅げば、少し甘酸っぱいような良い匂いがした。


 なーにがローズちゃんの膝枕だと、ラクラの木の怪しげな券を見て思っていたが、ローズベルガの言うとおり、憧れている方とご一緒出来る時間を得られるなら、高価なものでも買いたくなるかもという気持ちが今は良く分かる。


 この券を発案した者に賛辞を送りたいくらいだ。


 朝……膝枕の興奮が冷めやらぬ状態で警邏の詰所に出勤した俺の所に、ケムイが駆け寄って来た。


「あざーすっ副隊長!あの~昨日俺が買った、ローズちゃんの同伴券返してくださいよ~」


「同伴……ん?膝枕の券か?それなら使っ……イヤ、ゴホン。そもそもなのだが、あれは本物のローズを騙った偽物の線が濃厚なのだろう?証拠品として没収だ」


 証拠品と尤もらしい事を言ってはいるが、ローズベルガが自身の膝枕券を記念に下さい♡と言ってきたので、すでに渡してしまったので実は手元に無いだけなのだ。


「ええっ!あの券、高かったんですよぉ!?俺の銀貨二枚がぁ」


 ケムイの言葉に耳を疑った。


 なんだと?あれで銀貨二枚なのか。ローズベルガの価値が安いな。何気にイラついた。


 俺は懐から財布を取り出して、銀貨二枚をケムイに渡した。


「経費で落とせるから、処理しておく。くれぐれもローズ……嬢、本人に券を突きつけたりして迷惑をかけたりしないように」


 自分は突きつけて膝枕までしてもらっているのにと、内心ヒヤヒヤしながらケムイに銀貨を手渡した。


「まあいいっすけどぉ。でも副隊長、あのラクラの木の発券商法どうします?明らかに違法だと思いますけど」


確かに……一早く摘発して凝らしてめておきたいところだが。


「被害届が出ていない今の段階では摘発に踏み切れないな」


「そろそろこの券を買っちゃった男どもが騒ぎ出しそうな気がしますけどね」


 その時は軽くケムイに話していたのだが、恐れていたことがその後起こったのだった。




✧*☆.。.:*・゜✧*☆.。.:*・゜




 昼前の事だった。


 男性数名が入店して来るなり、私の周りを取り囲んで出来たのだ。あまりにも突然の事で恐怖で身が竦んでしまった。


「ローズはいつになったらあっちに顔出すんだよ!」


「いい加減にしろよ!こっちは金払ってるってのにさっ」


 男性達はそう言って怒鳴り散らしてきたのだが、これはもしかしてラクラの木の?


 私が驚いて固まっていると、パティシエ兼店長のバードさんが厨房から走り出てきた。


「お客さんっ!うちの店員に恫喝するな」


 そう言って叫びかけた時に、店の扉がものすごい勢いで開かれた。


 皆が驚いて振り返った店先に立っていたのは……殺し屋だった!違うっ殺し屋みたいな目をした、シュリーデだった!


 そう言えば今日も覗いていたんだった!いつもは少し気味が悪いと思っていたけれど、初めてシュリーデのストーカー行為が役に立った?瞬間だった。


「シュリーデ」


 シュリーデは怖い表情のまま素早く私の傍に来ると、私を背後に庇って怒鳴り込んできた男性達と向き合った。


 いきなり入って来たシュリーデのイケメン迫力に押されているのか、男性達は明らかにたじろいでいる。


「な……いきなりなんだよ!?警邏の兄ちゃんには関係ないだろ?」


「そ、そうだっ!あんたなんだよ!」


「何って?ローズの旦那ですが?」


 興奮した男性達の問いかけを、旦那ですが何か?と、さらりと返したシュリーデ。


 シュリーデの言葉の後、マリリカの夢の店内は恐ろしいほどの静寂が訪れている。


「きゃあああ!!」


 その静寂は、黄色い悲鳴をあげたウエラさんによって破られた。


「格好いい!素敵ぃ!バード見た!?お城の王子様も逃げ出すほどの格好良さだよね!!」


 いきなり兄達(王子)の話題が出て、ヒュッと息を吸い込んでしまったが、私より息を吸い込んで窒息状態?になっている人達がいた。


 それは怒鳴り込んできた男性達だった。


「だだだ……旦那ぁ!?」


「ローズ、あんた旦那がいたのか!?」


「旦那がいたなんてっ騙されたっ!」


 いや?ちょっと騙すってなによ?私、独身ですなんて言ったこと無いけど?


「私、騙してな」


 なんとか反論しようとした私の声に被せられるようにして、ウエラさんの甲高い声が発せられた。


「うちのローズちゃんに格好いい旦那様がいることが、あなた達に何か関係がありますか?ローズちゃんは真面目に当店で働いてくれている、可愛い給仕ですっ!!ラクラの木なんて関係ありません!」


 男性達は何か言い返しそうな表情をしていたが、恐らく私の前に立つ無表情の怖そうなシュリーデに威圧されたのだろう、小さくブツブツ言いながら店を出て行った。


 怖かった……今更ながら体がガクブルと震えてきた。


「大丈夫ですか?どこか触られましたか?」


 背中にソッと手が当てられたので顔を上げると、相変わらずの無表情のシュリーデが私を見下ろしていた。


 私が頷くと、シュリーデは少し表情を緩めた。表情筋が少し仕事しているみたいだ。


「なにあれ!?ローズちゃんの旦那さん、あれどういうことよ?」


「ローズちゃんのご主人、ラクラの木が何かしているのかい?」


 マリリカの夢のご夫婦が私とシュリーデを心配気に身ながら近付いて来た。シュリーデは私に頷いて見せてから口を開いた。


 ラクラの木にローズという店員がいて、そしてその店員がマリリカの夢のローズと同一人物であるかの如く、吹聴していること。


 ラクラの木ではそのローズと同伴出来る、怪しげな券が販売されていること。近々“ローズちゃんのお披露目”をするということを公言しているということを話してくれた。


「お披露目って」


「代役でもたてるのか?でもさっきみたいな客がローズちゃんじゃないと分かれば、ねえ?」


 私の周りにマリリカの夢のオーナーご夫妻、常連のおじさん二人と、お姉さん三人が集まって来ていた。


 シュリーデは話し終えた後に、対処は考えています、と言い切った。


「警邏の方に、券を買ったがローズが店にいないという苦情が入って来ています。今後この状態が長引き他に訴え出て来ることが増えれば、被害届を出すことが出来ます。ただ今日のようにローズ本人に難癖をつけてくる者が出て来るのであればもう動いてもいいかも。ローズ、暴行罪で届を出すか?」


「暴行!?いえ、あの、そんなことはされていな……考えておきます」


 シュリーデの鋭い眼光からの謎圧を受けて、取り敢えず考えていると言ってみた。


「そうそうっあんなに威圧的に言われて黙ってたらいけないよ!」


 お客のおじさん達もそう言いながらシュリーデに賛同してしまった。これは訴えてやるぞ!と、私が立ち上がらなければいけないのか?そうなのか?


 今日はもう帰りなさいと、バードさんに言われたので、シュリーデと一緒に店の外に出た。


 シュリーデは近付いて来た護衛のレイモンド卿とキリさんに頼むと、声をかけて私を見た。


「商店街を離れるまでは気を付けて下さい」


「はい」


 護衛もいるのだし大丈夫でしょ?と、内心思っていたけれど私の背中に触れるシュリーデの手にグッと力が籠められているので、シュリーデは心配しているのだと気が付いた。


 分かりにくいよね、だって無表情なんだもの。


 シュリーデはそのまま人混みの中に消えて行った。


「姫様、このまま帰られます?」


 ロエベがそう聞いてきたのが、久しぶりに商店街のお肉屋のコロッケもどきが食べたくなってきた。


「お肉屋さんに行こうかな~」


「えっ!?肉屋?」


 レイモンド卿とキリさんとロエベとナフラ、皆の声が綺麗に重なった。


「肉屋さんのウゴウが美味しいのよ?」


 ウゴウとはコロッケもどきのことだ。具材は野菜とモモガ(豚に似てる)のミンチが練り込まれて固めてパン粉で揚げられた、まさにコロッケなのだ。


 私は戸惑う皆と共に肉屋へと向かった。そして店に入ろうとした時に後ろから声を掛けられた。


「あの、ローズさん?」


 女性の声だったので振り向くと、若い女の子と三十才前後くらいの女性が立っていた。


 誰だろうか?顔見知りではないけど。


三十才くらいの女性が一歩前に出て、私に近付いて来た。何だかニヤニヤ笑ってて嫌な感じの人だ。


「マリリカの夢ではお給金幾ら貰っているの?うちはそれの三倍は出すわ。ラクラの木へ来てくれない?」


 お給金……ラクラの木!?もしかしてこの人達って……


 緊張して体が強張った。どうしようっ!?と、固まっていると静かにナフラが側に近付いて来てくれた。


「あら?マリリカの夢のローズさん?こんなところでどうしたの?」


「!」


 ナフラはそう言って微笑みながら、ラクラの木の女性二人をチラッと見た。


 ナフラの素晴らしい名演技に押されたのか、ラクラの木の人達は、舌打ちをして足早に去って行った。


「今のって」


「お給金を餌に殿下を勧誘しようとしておりましたね。ふんっ!やましいことがあるから逃げるのですよ」


 吐き捨てるようなナフラの言葉に驚きが走った。


「私を勧誘したいということは、ラクラの木にはローズはいないということが確定?」


「と、いうことになりますね。何ともいやらしいことを思いつくものですね!」


 レイモンド卿が走り去っていた女性達の後ろ姿を忌々し気に睨んでいる。


「シュリーデに伝えたほうがいいのよね?」


「勿論で御座いますよ!坊ちゃんに厳しく取り締まって頂かないとですよっ!」


 ナフラが拳を付き挙げている。ロエベも嬉しそうに一緒に手を挙げている。ノリの良いレイモンド卿とキリさん達は怖い顔をしているけど、力強く拳を挙げていた。


わ……私も交ざろうかな、エイエイオー!


 そしてその日の夜……戻って来たシュリーデにレイモンド卿が報告をした。


「なんだとっ!?あいつらっすぐ潰す!即刻潰す!」


 分かっていたけれど無表情で怒っていた。


 そして次の日には、ラクラの木への立ち入り調査が行われることが決まったらしい。


 立ち入り調査の前に、グロリー=クスラ大尉から事情聴取を受けた。警邏の詰所で大尉と話をしている途中、クスラ大尉は真顔になると……


「シュリーデの職権乱用案件ですので、ラクラの木の件は陛下にはご内密にお願いします」


 と、言ってきた。


 陛下、お父様ならノリノリでラクラの木の取り潰しに賛同してくれると思うけど、クスラ大尉が気にしてそうなので、分かりましたと頷いておいた。


 上(陛下)と下(旦那)との板挟みっぽくて、申し訳ない気がした。


 立ち入り調査の日はなんと、ローズちゃんのお披露目会当日にぶつけるみたいだった。


ローズちゃんは私なんだけど、ラクラの木のローズちゃんはどうするんだろうね。



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