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空色空想ネスト  作者: グレーミー
Chapter4「剥離」
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鏡合わせの少女



「──はぁッ……ようやく8階層だ。どこにいる……!」



ここに登りつめるまでに、すでに通り道となった場所では破損や倒壊が起き、素直に最短ルートとはならなかった。



「シグ!!」


〈報告:電子ジャマーレベルの一定数を検知、維持を確認。BSFジャマーカウンター起動により、小範囲での通信機能を確保中。現在有効範囲内に対象の通信は検出されません〉


「ここではないか、クソ──」



エリアの破損状況を見ながら、その被害が大きい方へと走る。

BSFの電子班のお陰でなんとか通信機能が生きている。だが、その機能は殆どダウジングレベルだ。宝の在りかを探すように隈なく迅速に探していく。


〈報告:対象のチャンネルを一時受信。継続受信範囲外のため通信が維持できません〉

〈警告:システム総EN(エネルギー)量残り60%、シールド90%回復中〉


ビンゴが近い。

一度立ち止まり、耳を澄ます。

大小の炸裂音が右奥の通路から木霊(こだま)している。

その方向に駆けながらもう一度通信機に呼びかける。



『──あ、ちょ!!!……ッてーー……』


「おいシグ!!」


『この声ゼノ!?……8層の集会ホールに敵と僕達諸共閉じ込めてるから!』



〈報告:マップデータ更新。8階層中心ホールの周辺隔壁閉鎖中。最短ルート上の隔壁を一時アンロック……〉


空薬莢と火薬の臭いが漂う長い通路を走り切り、目的地へ到着した。

赤色点灯した扉が緑に変わり、一呼吸置き扉にゆっくりと手をかける……。



「──もう殺さないで!!!」



……?

扉を(くぐ)ると、そこに銃声はおろか静寂の一つのみだった。

あったのはホール中心に押し倒され、今に殺されようとしたシグの姿と、押し付ける紅い悪魔に必死でしがみ付いていた青い服の少女の姿だった。



「(あの時シグの横にいた……)」



誰もが手を出すこともできなかった。

シグの命が刈り取られるその手前、ただ一人武器も持たずに素手で悪魔を止めたのだ。



『……離セ』


「い、いやだ……!嫌だ!!嫌だ!!!」


『ヂィッ!!』


「いたた……リ、ユ」



悪魔はシグを手放し、標的を変え青い少女、リユを軽々しく吹き飛ばす。

……まずい。あんな子供、一撃だ。誰もが思っただろう。

紅の悪魔は立ち上がり吹き飛ばしたリユに追撃、すなわち(とど)めを刺そうと歩み寄る。

しかし、周りを囲む俺たち側には何もできなった。

今の状況では無理だ。何かアクションがあれば……。


「……っ」


『オ前ハ、誰ダ、オ前ハ、何ダ』


「ぐっ……ッが」



ここで手を出せばターゲットが変わるだけで、むしろ被害が大きくなる可能性が大きい。

動きが静かなこのタイミングでどうにかするか、あの子供自身が何かしなければ……死ぬ。



『キヒイヒ……!!オ前ハ』


『ゴミダ』


『オ前ハ』


「わたしは……っ」

「わたしはリユだぁぁぁっ!!」



無抵抗に倒れるリユを何度も蹴る赤い女に、叫ぶ。

その場の全員に空気に振動を感じ、銃を握る手に力が入る。


短い時間の間にリユは二つの武装を手に持っていた。

それは紅い少女の写し鏡のような姿。

(こま)かは多少違えど、子供に持てるはずのないアサルトライフルを両手に構えるあの姿だ。

毎分600発ほど。殺傷力に富んだ口径がたった数メートルしか離れていない相手に、無音と静寂が数秒間消え失せる。


──それでも俺は知っている。

こいつは……。



『モウ、終ワリ……カナ???』



化け物以外何者でもないことに。

──万策尽きた。皆が皆、ついに痺れを切らし、銃を再び構えようとしたとき、紅い悪魔にも切れるものがあった。



『バイ、バイ……ヒヒッ!』


「────ぅっ……」


『………』



弾切れ……!

リユはすかさず紅い悪魔目掛け突進し、両者倒れ伏す。



「……うぁぁあっ!」

『キッ……』


『死ニ損ナイメ!!』


「うぅ!!」


『早ク、離レロ……』

「いやだ……」



引き離そうとする紅い子供とそれを許さない子供。

地面を転げまわり、その攻守が目まぐるしく入れ替わる為、周りを囲む傭兵たちは誤射を恐れ発砲は出来ない。

お互い殴り、蹴り、引っ張り、そして決着する。

頑なに相手を握りしめたまま離さないリユに、紅い悪魔は勢い任せの頭突きにより両者がよろめき、ロロンから立ち上がる。相手はフラフラとしながら、避ける様にリユから距離を置いてしまった。

その瞬間を逃すまいと傭兵たちは一斉に弾幕で対抗する。



『……』



弾丸は細い身体を瞬く間に貫き、身を守ろうとする紅き羽は抉れ、抜け落ちていく。

しかし、その表情に苦痛はない。



『オマエラハ……誰ダ』



「──!!!何だ?!」

「あの隔壁だ!」



そこへ突如隔壁の一部が吹き飛ぶ──またあの男だ。

ということはもう一人がどこかに?……どちらにしろマズイことだ。

元より不利な力量の差。物量では敵うことのない差が広がっていく。



『オマエラハ……ナンナンダ』


『ロロンよ、引き際だ』


『……』


『老人さん、まだでしょうか。サポートパッケージの限界が近づいてます……電子制御に乱れが』

『どうやら電子制御にハック攻撃が行われているようです……小賢しいです』


()くぞ』


『ワカラナイ。ワカラナケレバ、壊ス……』


『あぁ……シンフよ。残念だが我には子を制する素質が無いらしい』


『単純に個体が暴走しかけているだけです、リオ。行動権限を切り替えて強制帰還します……自我の剥奪まで個体を死守してください』


『致し方ないか。心得よう』



来る……。

瞬間が。



「──ゥルゥァァアア!!!」



ここで……漸く真向勝負といこう。


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