志と運命
【所持パッケージ】
*緊急応戦パッケージ
*通常パッケージ
【ミッション指示】
*コードネーム『ラプソディ』の回収。
*稼働中レブンズの管理監視。
【ステータス】
*No.01-Sinf[96%]
*No.49-Rio[98%]
周辺個体、同期完了。
作戦目標の遂行を続行します……
____ハイドラシティ
____シティ中心地付近
____シンフ
「──シンフよ」
「……」
「あ……はい、なんでしょう」
「なんだ、また考え事か?」
「いいえ、データ処理を行っていただけです」
「ふむ……それは結構だが、その意識が半分飛ぶのは些かどうなのだ?」
「これでもマルチタスクに動いているつもり、と本官は思います」
「稀に見る大自然。偶には周りの景色を見ながら散策というのも良いと思うが」
「何物でもない風景を見てどうするのですか?」
「はぁ、心が足りんの」
解せません。なぜここまで言われなければならないのでしょうか……。
この方の言葉には含まれる意味が多義に渡る為か、返答に困るものが多いのですが、本官は忠実なパートナーシップを維持するため、努力を惜しみません。
それでも今回は、頭上に疑問詞を浮かべておくことにします。
「?」
「なぁに、気にせんでいいさ」
「ん……貴官、なんですか」
「フハハッ、素直で良い。何処ぞの世話焼きとは別格だ」
「んん……髪の毛が乱れました」
何を思ったのか、不意に本官の頭をわしゃわしゃとされました。
一つ間違えば子供にワイセツな行為を大公開で晒すご老人の姿として、世の中に周知されてしまう光景なのですが、この方は気にしないようです。
本官が少女型のモデルをしているのが問題なのであれば、是非、近しいモデルである「ロロン」にも同行動をすればいいと思います。
9割強の確率で腕部の損壊を受けると、無意識に脳内計算をして即刻計算結果をクリアし、乱れた髪の毛を直すことに尽力します。
「どうせすぐに直せるだろうに──さて、ここか」
「はい、おそ……らく、んぅ。……く、どうしてくれるんですか貴官」
残念ながらハネた髪の毛が直りません。
一体どんな圧力でわしゃわしゃしたのか、数本だけ流れを逆らい目立ってしまいます。
「んあぁ?全く、唾でもつければ」
「却下です」
少女にご老人の唾液を付けられようとは、本官はご立腹&キチガイ行動に呆れます。
これでも女の子なのですが、どうしてそれこそ手ではなくて唾が出てくるのでしょうか。
内なる愚痴をこぼしていると、布らしきものが視界を覆い徒歩スピードに支障をきたします。
「では、ついでだ。これを着ておくといい」
「なにぶん、それでは目立つ」
目立つとは?と思いましたが、以前「ソーナ」にも同じようなことを告げられた記憶データが参照され、本官は自分の姿を確認します。
背中に羽は生えてません。手、腕はしっかりと構成され、翼はありません。口元を触っても、固いくちばしではなく、人体の基準に合わせられています。
気づいたとすれば、人気の多かったコーバスシティにて異様に本官がじろじろと見られている視線は感じられました。
試しに「リオ」を見て、もう一度自分を見ます。
肌の露出が大きい、でしょうか?
かと言って、ご老人の肌色面積の肥大化に需要は感じないと確信があります。
しかし、結果として肌色は多いと駄目なのでしょうか?人間の常識、というものは深いです。
後で情報を収集する必要があることを脳内タスクに保存し、被された布を広げると「ロロン」の着ているようなフード型の服が広げてわかります。
「重いです、これ」
「我慢せぃ……行くぞ」
「致し方がありませんか、我慢も職務にしときます」
「あーそこの爺さん」
目標地点目前、損壊した建物群に入りしばらくしたところで接敵。
スキャン開始。
「ここは危ない。そこの子供も、別の場所で散歩しな」
「フックク……飛んだ老ぼれ呼ばわりか、全く世知辛いものよ」
「外見判断のみだと間違いはないかと思いますが?」
「なぁシンフよ。ヒトは中身が大切だと言うぞ」
エネミースキャン。
アサルトライフル、ダガーナイフによる武装確認。
通信機器を確認、接続数……ペアリンク接続。ローカル接続と判定。
ECM、展開準備。
「残念ですが貴官──」
「なぁ頼むよ……こっちだって」
『……おい、どうかしたのか』
「あー?あー、そのー、爺さんたちが」
『……なんだって?……じ……って…………?…………』
「あぁ?なんだ壊れちまっ……ッ……ハ?」
通信切断。
妨害工作を施行する中、リオによる制圧により、エネミーキルの確認。
残存敵勢力、1。
「…………」
「……ECM解除。貴官、残念ですが貴方は人などではありません」
「……我はよく思うのだがな、シンフよ」
「はい」
「生き返えさせれるのであれば、一度殺し、邪魔にならぬとこで戻してやりたいところだ。だがな?それは出来ぬこと。不可能、非現実、禁忌だ」
「それが生命だ。故に……」
「故に、命は断てるのだ」
「捻くれた生命は悲しいものだ」
「ロロンのことでしょうか?」
「いいや、皆だ。我々は人ではない。なら、何なのだ」
「そんな思想に明け暮れ、一つの答えに辿り着いたのだ。これが運命なのだとな」
「答えになってるのでしょうか?それは」
「ワハハ!いや、なっとらん」
「故に運命だ。この老体には答えは出なかった。出ないものは出ん」
「……おい!どうしたってんだ……急に電波が悪──」
「なんだ……?こ、こいつら……!!」
「まったく、言っとるだろうに……人よ」
「───オービット、頭部にロックオン」
攻撃機器展開、照準補正──射出。
「──我々は人ではないと、な」
スキャニング中……完了。
周辺敵戦力殲滅の確認。武装解除します。
「我が言いたいことはな。自分の考え、思想を持っておけということだ」
「他と同じでなくて良い、あくまでこれは我の柱。シンフよ、いずれ決めておくといい。己の志を」
「本官にはすでにミッション指示が与えられています。それが本官にとっては志というものに代替するものと考えます」
「……世知辛いのぉ、シンフ。それがお主の運命か」
「どちらかというなら責務です」
「フハッ、ハハハハッ!!」
「……??」
「いつまで隠れておる……ソーナよ」
「……!」
周辺の警戒を続けていると、こちらが察知する前に「リオ」が指摘し、「ソーナ」が視界に現れました。
このご老体、実はすごいのかもしれないと、ほんの少しだけ劣りを感じてしまいました。
「まったく、一筋縄にはいかん堅物よ。手がかかるわけだ」
「……いつから知ってたのよ」
「何、ついさっきの事だ。さぁ」
「次はこちらの拝見と行こうか。シンフ、ソーナよ」
「リオ」の見上げる老朽化の進んだビル。
目標地点での作戦目標を脳内で再確認し、不備をチェック。
完璧です。しかし、これは計算上です。
元ハイドラシティー研究局、BSF基地内部への侵入を開始します。




