表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空色空想ネスト  作者: グレーミー
Chapter3「狼煙」
44/52

兆しと軋み

____ビルゴシティ ARD駐屯基地付近

____AM 11:14




時の流れを忘れさせてくれる、何もない時間。


暗雲立ち込める嵐の前の静けさとは、よく言ったものだ。



「──……!!グ……?」


「リカバリー完了、正常値まで回復しました」


「アイツラハ……?ドコダ」


「少しは休みなさい、ロロン。あれだけやられたのだから、おかしいと感じるとこは?本当に大丈夫なの?」


「なに、ソーナよ。そこまで心配せずとも良かろうよ。そうだろうロロン?」



夜間に行われた活動により負傷……というより、こと切れたロロンが回復し目覚める。

命の際限を知らぬ身体は、この子だけの力。

しかし──。



「大丈夫ニ決マッテル!……早ク殺ス、殺シテ潰シテ引キ裂イテヤルンダ!」



急に形相を変え、地面を叩きつけ叫ぶ。咆哮。怒り。


──この通り。

その対価として蝕まれた破壊のみの精神は、こちら側の者でさえそれを制御できるのか未知数の状態。

皮肉にもその小さな紅い命は、生きているようで死んでいるようなものだ。



「へっ!呑気なもんだぜ? なぁ〜ロロンー?無様にやられやがってさぁ?」


「ナンダト!?」


「はぁ!?やんのかよクソガキ!」


「ウルセェ!シネ!!」


「「コンノラァ〜〜〜〜!!!」」


「ノク!あまりちょっかいを出さないで」



目覚めを待っていたかのように、ロロンのもとに来たかと思うと、その第一声は罵声だった。

まだ地面にしゃがむロロンを見下すように、上目線で睨むのは「ノク」。

ノクとロロンは互いに額をぶつけ合い、いがみ合うが、すぐに抑止されノクが立ち上がる。



「はあ……甘いんだよなぁ〜ロロンにはさ? まっ、いいけどね」


「おいロロン!また突っ伏してると獲物、貰ってくからな!」


「コノーヤロウメ。ノクノ分際デ」


「まったく……どうしてこんな仲が悪いのよ」


「バイタルに問題はありません。御二方の精神思考の偏りが問題なだけかと、本官はザラっと考えます」


「ある意味、仲睦まじいということだ。それに、ロロンにここまで素の喧嘩腰で相手をできるのは、そうそういないだろう」


「リオ。そう言って単に面倒だからなんじゃないでしょうね?」



太陽を避け、日陰に寄りかかる初老の姿。

図星なのか聞き馴染みのある大笑いをする。



「フハハハッ!!そうは言っておらんだろうに」


「……さて、話は変わるが、例の事案ではどうなったという訳か?」


「接敵した対象はNo.54、護衛ユニットに設定された者のようでした」



話題は先日の襲撃時に現れた、「あちら側」のレブンズに移る。

シンフが特定した情報を、あの場にいなかったリオに話す。



「ほう……少しばかりか、動いているようだな。あちら側も着々とな」


「こちらも悠長にはできないわよ」


「しかし、滅したのだろう?駒が一つ失われたわけだ。戦力の優劣ではこちらが一歩出た訳なら、いい塩梅(あんばい)だろう?」


「その代わりに警戒心は強まったでしょうね。現に私たちも少なからずやられたのよ」


「狙われたのがロロンだったから、まだ良かったものの……」


「今回の接敵は元々想定外だったのです。少々暴れすぎたのでしょうか? 」


「軍勢力との戦闘と本来の作戦目標。邪魔でしたので軍の方々には引いていただきましたが」


「結果的に目標はロスト、もといマスターのご指示でのロストですが。本官としてもロロンの消滅は大きな損失と考えていますので、正しい……もしくは妥当な判断と本官はまとめています」


「珍しく語るわね、シンフ」


「いえ……本官は提出したレポートを抜粋したまでです」


「そぅ……随分な仕事ね」


「本官の業務ですので。質、量ともにピカリと光ると自負しています」



いつも口数が少ないシンフが珍しく口を動かし、無表情のまま「ピース」と手を向ける。

そして日陰では何食わぬ顔でタバコをふかし始め、遠回しなのか意味が理解しがたいことを初老が口を開く。



「なぁに……シンフよ。(つる)はいつだって曲がりくねるモノよ……磨かれた筋書き程、な」


「それで、死体はどうしたのだ? その辺に干しておく訳にもいかないだろう?」


「死体、ですか?残念ですがボコボコにしましたが、絶命に至らずに良くて重症です」


「ハッハッハッ……いやはや、ではトドメを刺さずして追わず、か。これではどちらが勝っているか、判断の濁る始末だな」


「なによ、どうせこっちの不始末よ」


「いいだろうさ、ソーナ。元気に動けない程度には消耗させたのなら、相手も考える。我々も同じく、相手の上へと考えを巡らせば良いこと」


「ハイドラシティに巣食ってる傭兵による障害も考えものよ。そうよ……あいつらのお陰よ、まったく」


「ソーナ同様の意見で間違いはないかと。最大の弊害にして、今回の失敗要因……」



シンフが空間に漂う電子スクリーンを広げ、データを閲覧しながら一つのファイルを直視しながら話す。

続くように初老、「リオ」は早々にタバコを吸い切り、シンフの引き抜いた浮いた電子データを摘まんで一瞥し言った。



「ならば、ハイドラシティの環境については我が引き受けるとしよう」


「なによ、私たちには任せられないってこと?」


「ふっ……そう悲観的になるでないさ。単に、この仕事は自らに向いていると判断したまでだ。何分、暇な役柄でな」


「腑に落ちないわね……」



自ら動くことのない初老がこうして自発的に行動するときはいつだって企みがある。

遅かれ早かれ、事前事後。

一応、リオに任せておくことにした。


それよりも……



「クヌヌヌヌヌ」


「ウェーイ、ウェーイ〜役立たずーひゅー―!!」


「ヤッパリ、オ前カラコロス!!『ミンチ』ダ!!!」


「ノク……ロロン……いい加減に!!」


「やれやれね。と、本官はソーナの真似して巡回に行ってきます」


「フッフッフッ……全くだな。シンフ、同行しよう」



騒がしい喧騒。

皮肉にも、ずっと続いてもいい。

そんな気持ちになりながら、二人を再び抑止する。

なぜ、ずっと続けなどと思ったのだろう。

それはきっと……。

永遠には続くはずがないと、この身体は知っているからかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ