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空色空想ネスト  作者: グレーミー
Chapter3「狼煙」
39/52

再起ニ縛ラレシ者2

______コーバスハイウェイ パーキングエリア




しばらくの逃走後、一時の安息。

穴だらけの車両は、燃料の補給の為に最寄りの休憩所で停車していた。


休憩所といっても、簡易トイレがある程度で売店などがあるわけでもなく、数台の車両が駐車してはいるが人の気配は感じられない。

それでもこのハイウェイは生活道路としての利用頻度は高く、昼間は渋滞を起こすこともある。

追っ手もいまのところは無く、油断はならない状況だが辺りは静寂としていた。



「あーあー、酷く穴だらけにされたもんだァな」


「燃料入れたら行くぞ。目立つに越したことない」



修理より新規で買ったほうが早い状態の車体を眺めながら予備で積載していた燃料タンクを車両に補給する運転手。

周囲の警戒を兼ねて外で待機していると少し遅れてもう一台の車が進入し、ライトを点滅させる。

先ほど大事(おおごと)をなした犯人が合流すると伝えられ、恐らくそいつだろう。

こちらにゆっくりと近づき、適当な場所に停車すると涼しげな顔をした腹立たしい光景がドア窓から現れる。



「やぁ、ゼノ。それに、ルリちゃんだよね。こんばんわ」


「お前──」

「まぁまあ、待ってよゼノ」


「…………あ?」



『────ネー、イツマデヤルノー?イヒヒ……』



「……!」


「お話は全部終わってから、にしよう?」


「まさか連れてきたのか?」


「ま、まさか……来そうな予感がしてたんだよ、はは」


「やっぱお前は最悪だ」



パーキングエリアの入り口付近に、不快な笑い声と共に現れる影。



『ニーゲラーレナーイ〜、ムリムリダヨォ?ニーゲマドエ〜♪……』


「さっさ、取り敢えずいまは車を変えよう?それだとすぐ壊れちゃうよ、僕の方に乗って乗って」


「面倒な……行くぞ」



電灯に照らされながらその場でクルクルと回る怪物。

回るたびに水滴のようなものが飛び散っていく。

……血だ。


怪奇そのものだが、行くならいまだ。

穴だらけの車は持ち主である運転手に任せることにして、シグの車に移ろうとする。



『アハハッ……♪──オィ!!!』



……が、数回転回った後両手を広げ叫ぶ。



『クックククク……待ナヨォ?──ナアァァアアア!!!!』



叫ぶと同時に両手覆う袖口から銃器が出てくる。

まるで魔法のように一瞬に両手に武装が施され、乱射しながら歩き出す。

付近の車両の窓ガラスが割れ、ボディに風穴を開けながら徐々に迫る。

それも笑いながら。

本当に、何者だ……コイツは。



「ま、待ってくださいよ!む、ムリですよ!!」

「くそッ、本当に面倒だ!シグ!!」


「はーいはい、お任せさん!」



距離が縮まるにつれ、弾幕に収束が出てくる。

このままでは嫌でも穴だらけになるのは確実だ。

スリープになった携帯機器を、一か八かで起動させる。同時に動けないでいるルリを抱き抱え、車を飛び出す。

援護射撃と飛び交う閃光で、辺りが火薬臭と煙に巻かれていく。



「ちょちょちょっと!??」


「安心しろ……!風穴開けられるときは諸共だッ」


「い、嫌ですよ!!!」



困惑するルリ。

そんなものに今は構ってられない。

動かなければ本当にそれまでなのだ。


〈──予備EN起動開始、シールド起動中〉


短いシステム音。

周囲が一瞬歪む感覚。

数発の弾丸が被弾する直前で火花に変化する。


〈警告:シールド減衰中、残り42%〉

〈ライフル弾の防御率低下、貫通弾注意〉


削れが早い……。

だが、この距離なら間に合う。



「はぁ……行け!」

「──んじゃ、各自解散行くよ!」

『あいよっと、荷が下りたぜ。料金のほうヨロシクさんな』


『ソーダヨォー、早クシナイトー……穴アキニナッチャウヨ〜!!アハハハッ』


「アイツ……何なんだよ!」



無事に移り変わり、後部座席にルリを押し込み自らも流れ込むように乗り込んで窓から応戦する。

通信で二手に分かれることを確認し、シグはエンジンを蒸し猛スピードで危険地帯から脱する。



『──ァーァ、行ッチャッタ……』


『──マ、イッカ♪クフフフ……ミーンナ、穴ダラケニシテヤルカラ』



************************************************




________場所不明 某所



〉アタックパッケージ実行中……

〉レギュレーション_5-B

〉オペレーション参加数_4

〉レブンズステータス_

自機[98%]

No.05[86%]

No.28[99%]

No.36[43%]


〉システムチェック、オールクリア。

〉定期レポートの転送完了、オペレーションに復帰…………




「…………」


「それで、どうするの」



少し遠くで、銃声とオレンジ色の光がぼんやりと明滅している。

ここの風は穏やかで、遠くの風景とは無縁のようだ。



「少々お待ちください。オペレーションの進行状態と現状を比較しています」


「……どうでしょう、支障はありませんが進行率に問題があるかもしれません。貴官は?」


「これじゃ終わらないわよ、しばらくね」


「では、一時中断ののちオペレーションの再構成を」


「いいわよ……そのまままで」


「貴官、怒っていますか?」

「別に」


「本官は少なからずの感情を感じるのですが」


「そうね、強いて言うなら……」


「──見てるだけの私たちに不満を感じるわ」


「貴官は何か勘違いをしているのでは?これは作戦であり」

「分かってるわよ」


「でしたら何が疑問なのでしょう」



この子に感情があったら。

電子機器とコードが服の間からちらつく服装で、抑揚の無い声。

空っぽのこの子に私はよく話しかける。任務だろうとそうじゃないときでも。



「聞かなくてもいいのよ。どうせ……貴方にはわからないでしょう?シンフ」


「はい、残念ながら。本官には理解しかねます」


「かわいそうね、貴方もあの子も」


「はい。理解しかねますが、慈悲の意として貴官に感謝します」


「シンフ、貴方もう少し表情出せないの?」


「それは貴官もです。頑なに強張った筋肉はたるみを促進させるかと本官は危惧ぅぅぅぅぅ……」


「そんなんで老化しないわよ!」



こうやってとりとめもない会話をしてこの子の状態を知る。私の責務の一つであり日課だ。

試しに表情を無理やり作ろうとこの子の頬をむにっと摘み、口角を上げさせる。



「……ほら、笑えば可愛いのだから」

「痛いです、貴官」



すぐに顔を横に振り、摘む両手を払われる。

そして少しするとこの子は一点を見つめ、私を見る。



「──命令受諾、オペレーションを更新します」


「貴官に指令です。ロロンの回収願うとのこと」


「……そう、わかったわ。一人で大丈夫なの?」


「問題ないかと。個人の防衛機能は有していますので」


「…………そうね」

「私も自分は守れるわ。でも、あなたもあの子も私は守れない」



再びその子の頬を両手で、今度は摘まずに少しだけ押さえる。

結局少しいずそうにするだけで表情は出ない。

喋りづらいせいで語尾がおかしくなる。



「……貴官の健闘を祈りまふ」

「──ふふっ……もう」



私は少し笑い、背を向ける。

この子と一緒に、ほんの一瞬でいいから笑えるときがくるだろうかと夢を描いて、私はその場を飛び立った。


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