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空色空想ネスト  作者: グレーミー
Chapter3「狼煙」
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再起ニ縛ラレシ者1

「いつも、こんなことしてるんですか?」


「時と場合、依頼の内容、……気分によるかもな」


「気、分って……」



自分なりの不意に思いついた冗談は、とてつもない怒りを買った。

予想だにしない反応に俄かに危機を感じたのか、問題点を即刻修正する。

どことなくミナキとシグのやり取りとその結末がよぎり、危機回避の参考となる。



「……ッ!気分は撤回だ。ったく」

「俺は必要以上にはやらない……基本的にはな」



必要以上にやらないポリシーに嘘はない。

やっても無駄なことに労力を使うほど、リスクも疲れも欲しくないのは不動の思いだ。


なによりこの会話も、そこはかとなく無駄なのだが。


俺から言わせてみれば、こいつは学校とやらに行ってるだろうが、こっちからすれば非日常的事案の一つだ。

まさにお互い様なのだか、この一方的な正義とやらは俺にまで強要を求められるらしい。


いますぐ味方を撃ちぬけとでも言われている気分だ。

聞き流しているクレームに無言の対応を張る。


……それにしても、文句が止まらないやつだ。



「私だってこんなことに巻き込まれたくないですよ……そもそも!巻き込んで来たのってゼノさんたちじゃないですか!」



──くっ……。



「こっちだって大誤算なんだよ」


「責任取ってくださいよ!!」



──メンドクセェ……。



「取ってやってんだろが!」


「「ム……!」」


「おーおー、恐ろしぃこって」



我慢の限界に双方が叫び、睨み合う。

思えばこういった反論のし合い、というのはなかなか無い。

大抵一方的な会話か、成り立たない会話、果たして知能はあるか考えさせられる場合が多々多く、ろくに応対内容に気をつかう必要もなかった。

おかげで、言い合いの叫び合いがひどく新鮮に感じた。



「はぁ、もういいです。それよりあの子……大丈夫かな」

「あぁ?」


「だって、見た目は子供ですよ?あんな小さい子を」

「なら、ガキじゃなきゃ倒しても気分を害さなかったか」


「そういうわけじゃ……ないけれど」


「ふん……(まと)まんねぇ」


「分かんないんですよ……だから、その」


「分かってやれやぁ、ゼノよ。ワカンねぇ気持ちをよ」


「……はぁ、分かるかよ。とっと送れ……よオイ!?」

「な、なに!??」



突如車体が大きく右に傾き、バランスを崩す。



『──アハ、アハハハハハッ!!!!』


「まさかじゃないだろうな……!?」



唐突の甲高い笑い声。そして発砲音。

襲撃に対応すべく、左ドアの窓から身を出して応戦に備える。


脅威の居場所は一目で分かった。

静寂な闇夜を赤黒く照らす、狂った殺意が急速に近づいてくる。

──奴だ。



『──ザザッ……』

望まぬ、そして有り得ない再会と同時に、通信機が受信する。



『……ハァーイ、みんな元気?僕だけどちょっといい?』

「良くねぇ!!黙ってろ!」

「ちょ、ひど!!」


「お前とは仕事をしたくない」



再び逃走劇が開幕するなか、陽気な調子の通信相手はシグだった。

あからさまな適当なる態度に即刻通信を切ろうとすると、慌てて(なだ)め声で続けた。



「そんなこと言わずにさぁ〜頼むよゼノ、もう近くにいるしさ」

「は?」


「ラウザ!やっていいよ!」



────まさか。

地上の騒音に、埋もれ隠れていたものが近づいてくることに気付いた俺は、上空を見上げる。

黒い背景の遥か遠くに一機のヘリが車両を追跡していた。


小さな機影はプロペラ音を大きくしながら急降下、車両を襲撃する対象の後ろに低高度で尾けた。

低空飛行によって、突風と轟音が辺りを騒がしく掻き立てる。



「おい!派手なもん持ってくんな!!奴らが来るぞ」

「呼ぶためにやってんのさっ、さぁ、楽しくなってきたよ〜!」



混沌と化していく状況のなか、通信機に叫ぶ。

あの赤い奴の再来に一定の危惧は予想していた。

ただ、この仕事をしている者たちにとってもう一つの懸念すべき敵がいる。


──第三者の介入。

その原因にもなりかねる発砲音と騒音、一般人による発見、通報。

起因要素は考えるだけでも多岐に思いつく。

寧ろここまで何もなかったことが幸運なのだ。


害悪は修正される。

表の社会からすれば、その害とされる対象は俺たちも同じ(くく)りだ。

そのなかでも厄介な『奴ら』なのが……



「はははッ!来やがったぞ」


「最悪だ……」


「このサイレンって……」



荒れる騒音の中、徐々に聞こえてくる警報音に車内にいる者全員が同じ危機を感じ取る。

そしてどこからともなく、包囲網はやってくる。



『お前ら……ARD(アルド)がいるのを知っての所業か』


『シティの無象なるゴミ共め……。報告にあった制圧対象を発見した。機動部隊散開、機神(きしん)の忠誠を見せよ』


『──ウィルコ(機神の従いに)



「あ、あ、あれってアルド……ですよねッ?!ど、どうするんですか!?」

「分かってる!!」



一般人にも非常者にも通じる少ない共通点。

姿は見えずとも、聞こえてくる確かなサイレンに焦りを見せ、ジャケットの裾を引っ張られる。

再び通信機を強く握り、追及する。



「シグ……お前……!!」

『ハイウェイからハイドラトンネルに行って、って言ったら行ける?』


「あいよォ!お安い御用と」


『──よしいいね。それじゃ、頑張ってね〜。ラウザ、いーよ!』


『ハイハイ』



俺の言葉は通らずに短い指示を運転手に下した後、低空飛行のまま居住区群の方へ飛び去っていく。

今のところ追手の中に航空機はいない為、あちらが逃げるのは簡単だろうが、こっちには油に火を注がれたのだ。


『シティーの奴ら』と同業者に言えば、ARD(アルド)一択と言っても過言ではない。

──機甲化師団 ARD。

並行する3つのシティーの警備行なう軍隊だ。


本隊は別シティーにあるそうだが、その力は3シティーを守備するのに十分な戦力を保持する最強にして最悪なる第三者だ。



『……チッ、散らせやがって。アーキ隊、ヘリの追跡に移れ。ベラルム隊は俺に追随せよ』


『追跡車両後方の紅い奴に注意しろ、発砲はまだ許可をしない』



『エヘヘェ??ウルサイナァ……サイレン、サイレン、ウルサインダヨォォォ!!!』



『うぁぁ!!ベラルム3、紅の、ガァッ…………』

『部隊長、ベラルム3の車両に取りつきました!……ベラルム3!応答を』



後方をしばらく注視していると、紅い奴の後ろから3台ほど新たにサイレンを鳴らしながら現れる。

道脇から本線から、さらに合流し計7台ほど。

その内数台が再び視界から消えてゆき、残りの軍用車が猛スピードでこちらに追いついてくる。

しかし警戒はしていたのだろうが、俺たちと奴らの間にいる存在に目をつけられた1台が突如姿を消した。



『……ベラルム3、ロスト。車両大破』


『クソッタレが!もういい、発砲を許可する。……各員、実弾装填。周辺被害を最小限に抑えよ』


『事後処理は後続部隊にでも任せておけ──厄災の名残り共が……纏めて消し去ってやる』



そして俺は化け物の狩場を目撃する。


奇声と同時に瞬時急速反転。

高速で突っ込む一台の軍用車両に飛び移ると、フロントガラス目掛けて乱射する。

車両はすぐに軌道から外れ、土手に激突し爆破した。

時速90、100km。このスピードを追いかけている時点でバケモノに間違いは無いが、その動力を一瞬にして反転させる荒業をこなす。

まさに、紅い死神が魂を刈り取る狩場だ。


部隊長と思しき者が発砲許可を下し、青いレーザーサイトが無数に点灯する。

ある程度の照準が決められその直後、一斉射撃が開始される。


マズルフラッシュが軽減されているように見えるあたり、サプレッサーを装備しているのだろう。

それでも、銃撃の凄まじさには迷いがない。


紅い死神はARDに注意が向き、ARDもその対応に車列が大きく崩れていく。



「今度は何!?」

「奴らが撃ち始めた。今のうちに撒くぞ」



──ARD(アルド)

機械を崇めるその集団に、人間味は薄い。

そこに慈悲は無く、先にある秩序を目指す為に力を奮う。


その秩序に周りは見えていない。

奴らが厄介者とされる、一つの要因だ。


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