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空色空想ネスト  作者: グレーミー
Chapter3「狼煙」
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紅色の襲来

心地よい風。

少しずつ緑が増え、寂しい地面が一層活気付いてきたころ。

最近は快晴続きだ。

ただあいも変わらずというか、いつもより少し眠いかもしれない。

それも日課に並ぶ日常的なようなものになっていた頃に、転機はいつだって唐突に自然な流れでやってくる。



「ふあぁ……ぅう」



背伸びをした瞬間に襲われる、クラリとした目眩にしばらく硬直する。

そうは言っても、この欠伸と気だるさは何もいま始まったことじゃない。

放課後まで引きずってきたのだから、相当疲れているか、寝不足か。

どちらにしろ、足早に帰路に向かっていたのだけど、実はちょっと寄り道をしていた。

それは──



「ピー」

「うん、そう」

「ううん……うん」

「ピッ……ピー」

「でもね……」



人目につかないようにこじんまりと私、人である「ルリ」は名も知らぬ鳥と普通に会話を交わしていた。

なんとなくの理解で話が通じるのだけど、未だその原因はわかっていない。

校門で待機していたその鳥は、私を見かけた瞬間にスムーズ、且つ自然に肩に着陸。

周りの視線を少し浴びながら、挨拶代わりか2、3回突かれた。結果、離れなくなってしまったので、急遽帰宅方法を徒歩に変えた次第なのだ。



「へー……」

「ピャァッ!」

「わっ!?なに」



いつも通り落ち着いた川音を背景に、橋のへりに寄りかかり耳を傾ける。

以前にも通った場所に近いけど、少し離れた橋……。

少しだけ、まだショックから立ち直れてないのか、自然と避けていた。

そんなことを思いながら聞いていると、鳥は何かに気づいたように姿勢を変える。舞い上がる翼、顔面で突風受け止め前髪もハネる。

何を思ったのかと、こちらも姿勢を起こし飛んでいく姿を追うのだけど──。



「──っ……?!」



頭のなかに頭痛のような痺れが一瞬走る。

ピリッとした感覚。



「ケタケタ……!エヘヘ……へへ」



赤い姿が私の目の前に控えられていた。



「──ククッ」



全てを笑うその表情は、嘲笑うという言葉がその通りだ。

私の目前には赤い、小さな子が特徴的な衣服に身を包み小さく笑い続けていた。

フードで顔ははっきりとは見えず、ユラユラと揺れる。

私の視界も揺れる。

クラクラと、嫌な感じだ。



「ネエ、オネイチャン……フフフッ」

「な、なに……?」

「ツギハ、オネイチャン」

「……え?」



一歩。

姿勢を低く、今にも噛み付いてきそうな威圧感に思考が焦る。

あまり良くなさそうなことは確かだ。

また一歩。顔の半分は隠れていても感じ取れる恐ろしげな表情が、私に恐怖を与える。

──そして。



「オネーチャン、死ーンダ!」

「…………!!」



全部を聞き終わる前に本能が反射する。

走れ、と。

だから走った。

出来る限りの全力疾走で橋を渡りきり、後方を確認する。



「アハハハ!!……待テー」

「はや、くない……!?」



体力に自信は無い。

だからこれが限界だ。

それでも異様なスピードで追いかけてくる追手の手には、歪な形をした剣のようなものを引きずってきている。

まさかそんなものを振り回す気なの……!?



「無理……一体、どうなってるの」



もし追いつかれて、振り下ろされたらどうなるだろう。

あまり考えたくは無い。

それにそんなものどこから……。

勝算が薄れるほど嫌な汗と速い鼓動を敏感に感じる。



「オッワーリー♪オッワーリー♪ギリギリ?ザクザク?」



恐ろしい。

とんでもない……狂気だ。

あがる息を整えようにも、恐怖が邪魔をする。



「はぁ、はぁ……」



気づけば周りは静かで、まるで隔離されたようだった。人の気配は失せ、重い空気が、重圧が意識を削る。

遠のく、歪む視界。

────遠くで、エコーのかかったエンジン音が徐々に聞こえた。

エンジン?


──響く爆音。

橋の方から音と共に現れた、道路に写る影。

車が……飛んでいる。

少し山なりになっている橋で、どんなスピードで走ってきたのだろうか。

その名の通り大ジャンプだ。


上がったものは下がる。

重力はいつも下向きだから。

勢い良く大ジャンプを果たした車は、勢い良く落ちる。

車体は…………派手なバウンドをして着地────したあとに、跳ね飛ばした。

なにを?

目で追ってしまった。

次に舞うは赤。

紅がたなびく。

対象は数メートル先に飛距離を引き延ばし、粗雑に宙を舞ったそれは電柱に激突した。

無機物と有機物が跳ねた音は最悪だった。



「ひっ…………」



車は、跳ね飛ばした衝撃で横転しかけるが、小さくドリフトして回避。私の前でドアが乱暴に開く。



「ぁぁぁああ……最悪だぜ……嬢ちゃんよ」

「──あ、あの時の……」

「……乗りたければ乗れ。特別救済だ」



煙る焦げたゴム臭と辺りを覆う白煙。

奥で崩れる、瓦礫と砂埃。僅かに見えるシルエットはピクリともしない。

運転席の窓から項垂れる姿と、後部座席を大きく開け放つ姿。

見覚えのある人物達に、私は突飛に再会を果たす。



「────なに、してるんですか……」



私は引きつった顔に状況に合わない冷静な応対をして、その場に崩れ座り込んだ。



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