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空色空想ネスト  作者: グレーミー
Chapter3「狼煙」
34/52

降り立つ者たち

____詳細不明 某所ビル屋上




「私はお前達のいずれかが倒れた時の代わり。いわば代用品……」



まだ夜が明けぬ暗がりの某所。

清風に煽られながら、二人の男女が空を見渡す。

少し前に男が現れ、共に感に浸る中。考え耽る女に語る。



「それまでは各々の役割の補佐を担当するのが私の役でね」

「かと言って、役に縛られるのは不得意でね。お陰でこうしてお守りに力が入るわけだ。ハッハッハ……!」



嫌みくさい解説をどうも。

風になびく髪を抑え、男の方を振り向く。

年は中年か、少し年季の入った声色に古ぼけた服装。

髪の乱れを気にしない、堂々として、やや適当というか。時の流れに逆らわない、老人は煙草をふかしながら忠告する。



「ふっ……とにかく死なんことだな。こちらとしても死なれては気分が悪い」

「サポートをしてその結果では、私の面目も立たぬしな?」


「誰が勝手に死ぬもんですか。こっちだって役割を取られるのは不愉快だわ」



まるで失敗するのを見越した言葉に反論する。

わざわざ機嫌を損ねに来たわけではないだろうに。

意に反する言葉を返すと、男は低めに笑った。



「フハハッ!良いぞ、その意気だぞソーナ」

「この運命の身だ、精々生きれる間は生きようではないか?」


「はぁ。あなたと話すのは不慣れと言うか、不規則で慣れないわね」


「それはお互い様と言ったところか……役割の代償による干渉とはまた面倒なものだな」


「仕方ないのものなのかもね」

「役割に必要な機能以外には制限がかかるわ。役割を通すのに必要な感情や思考以外は、奇行に走りかねない」



言い訳がましい論理に、両者はそれ以上に口を挟まない。この点、両者共に諦めか個人なりの理解で抑えているのか、どちらにせよ深くは言及しない。



「人間らしいのか、らしくないのか。それとも、らしく作られたのか。所詮、模造品と言ったとこか」

「元よりこの姿が擬態程度の効果が得られれば十分というなら、愚問だったが」


「上の考えることは分からないわ」

「……でもやることは決まってる。それに、そこがヒトと違うとこなのかも」



彼らなりの判断と理解。

正しい答え合わせなど存在しない。

ただ己の存在が薄れてしまわぬように、解を重ねる。



「結局、指導者に従うのみというか……これも『運命』と言えるのなら、なんとも使い勝手の良い言葉だな?」



「ヒトの考えることなんて知らないわよ……」

男の聞きなれた回答に嘆息する。

間もなく朝日が昇るという時、彼女の視界に新たに数が増える。



「アハハハハッ!!目ン玉ビヨンビヨンダー!」


「貴官の行動は怪奇そのものです。死体等本官は……っ!貴官!こっちに飛ばさないでください!!」



少しずつ見える輪郭、3つの存在が新たに現れる。

どれも最近見た顔だ。

紅い狂気、電界の狂気、影の狂気。

彼女にとって、あれらは苦手にしながら、仲間ではある。決して難には感じない、それこそ運命だろう。



「問題児達のご帰還か。あとは任せたぞ?」

「ちょ、ちょっと!……はぁ」



近づく姿に相反し逃げるようにして、男は彼女にそう言うと屋上から飛び降りる。

そして舞い上がる小さな影。

その姿は、すでにヒトの形ではない。


ビル群の隙間を朝日に照らされながら飛び去っていく。再び少し強い風に再び髪を抑え、照り光る朝日に目を細める。



とんだ運命……ね。

面倒な単語だわ……。


────我ら、飛び堕ちる者なり。


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