欠片は集まり塊へ
朝に会った野鳥と、その他時間経過とともに増えたお仲間さんは私の周りをピョンピョン、トテトテ、徘徊する。
スズメ、カラス、なんか小さいの、うわぁ、ペットショップ開けそうとか冗談で考えたり。
「──売ったら君たちいくら位なの?」
『ヤメテぇー』
『ネーヤメー』
『ギャー』
「わ、わかったから……嘘だから」
うぇぇぇぇ、なんで人語なの……!!
「犬猫に好かれる人ならいそうだけど、鳥はすごいよね……ルリ」
あぁ、友達が遠くに感じるー。
しかも私以外に声は聞こえていない……ただ単に群がっているようにしか見えていないの?
「(尚更たちが悪い……!)」
みんなに聞こえるなら説明つくのに、これじゃ自分だけ変な感じだよ……。
『首ナデテー』
『デデデー』
「あぁ、うん……はい」
あったかい、手触りがいい羽根だなぁ、羽毛布団の中身をワシャワシャとやっても同じ感覚は味わえないだろう。
スズメさん?の催促で首回りに人差し指を埋める。
見た目以上に指は深く埋もれ、指の第一関節とまではいかなくてもぬくぬくでフカフカ。
これだけあれば飛べるよね~と、納得のさわり心地。
スズメさんは首を動かしマッサージさせる場所を変えて、目を閉じてすごく気持ちよさそうにしている。
とてもリラックスしてくれているようで何より…こっちもなんかまだ午前中なのに眠くなりそう。
出来ることなら、「ピー」とか「ちゅんちゅん」あたりで抑えて欲しかったのが少し残念。……残念、なのかな?少し楽しんでた自分もいたような気がした。
体育の授業はこちらを置いてけぼり、私にとってはふれ合いの時間となり、チャイムが鳴る。
同時に鳥たちも大空にどこへともなく飛び去ってしまった。
「自由だなぁー」
──時間は進んで放課後へ。ちょっと寄り道で橋から沈む太陽を眺める。
なんだかいろいろあった……でも良い事もあったと言えばある。まぁ、あまり関係ないけど授業変更で忘れ物をした教科が変わったことくらいなんだけど。
夕方ともなると鳥たちも人と同じく巣へと帰っていく。ようやく辺りが静かになっていき、身体の疲れを実感する。
ここまで歳を重ねてきたけど新たにこんな刺激のある、いや、不可思議なことを体験できるなんて思いもよらない。
よし!良かったことにしようっ。楽しかったと言えば嘘ではないわけだし、長くは続かない…と思うし。
面白い事や楽しいことほど長続きはしないものだからね。
それに、ソラが一番不思議度ナンバーワンだし。
上には上がいるとはまさにこのこと、かな。……なんてソラにはなかなか失礼だよね。
よし──そろそろ行くかなー。
寄りかかっていた橋から体勢を戻し、二足歩行へ。
いつまでも立ち止まることはできない。突っかかっても、また無理矢理でも歩き出さなきゃいけない。
足で地面を踏んでいる限り、倒れるまで。
「──?」
何か聞こえる……?唐突の音。
周囲を確認をするけど、自分の今の周りに『ヒト』はいない。あともし、いるとしたら。
見えない場所で大きな声を出しているか、もしかしたら幽霊か、あとは私に聞こえる声……。
どこから?
川の流れる水音の中に、僅かに生物の音、声があるような。
入り混じる雑音から、疲れた耳を集中して澄ます。
「──!あそこだ」
考えるより先に足が動いていた。
橋の先まで走り、土手をこけそうになりながら駆け降りる。
橋の上から見た景色と川岸から見た景色の違いに注意しながら聞こえたはずの音源を探す。
……見つけた!
「やっぱり鳥だ!」
それも小鳥、赤ちゃんかもしれない。飛びなれずに落ちてしまったのだろうか。
確かなのは危機であること。助けを呼ぶにも人の気配が無い。助けなきゃ、溺れる……でも助けれるのはこの状況では私だけだ。
本来なら無視されても仕方のない声が、鳴き声が、人の声のように私には聞こえる。聞こえたんだから……。
──だったら……助ける!
カバンを放り投げ、腕まくりをする。
見たところ流れは少し急になっている気がする、深さも濁っていてわからない。
そういえば、この前の大雨でダムの排水量が多くなっているってニュースをやってたような。
この街はダムが多い。場所にもよるけどダムの影響で水量が大きく変わる河川があり、そういったときはニュースなんかで注意報が出る。
小鳥は羽の油がほとんど取れて、自力で飛べることは不可能、無理に動けば流されしまうに違いない。私も泳ぎは得意というわけでもなく、急流を制することなどできない。
全身に力が入る。
おそらく水位は深い、溺れるのも容易だろうから。慎重に流れに入っていく。
「つめた……!」
水温まで考えてなかった……!二、三歩進みようやく気づく凡ミス。そして明らかな水位の上昇。
うぅ。おそらくこのまま行けば、すぐにでも膝まで達するよこれ……。
一つの決断……「お、泳ぐ……」いや、でも。
葛藤、二の足を踏んでる場合ではない。
──行くしかない。
流れに流されることを考慮し、すこし上流から飛び込む。
包み込む飛沫に冷気。張り付く制服が気持ち悪い。
もう少しで小鳥のもとへと手を伸ばしてみるが、まだわずかに距離がある。
川底に大きな岩があるのか水の流れが入り乱れ視界と体勢が奪われる。
岩と岩の間の隙間にしがみつく小鳥。水しぶきを時折かぶり今にも飲み込まれそうだ。
私も……人のこと言えないけど……!
「はぁ……よかった、間に…あった」
無事たどり着き、息が上がる。
小鳥は衰弱しているようだけど、まだ生きている。
後は引き返す──「わぶっ!!」
引き返し間際、足で蹴った水中の岩がズレてバランスを崩してしまった。
それでも小鳥だけはと、両手は水中に埋まらないように足だけで復帰を試みる。
手が使えないことで溺れることは無くても流されてしまうことに抵抗は出来ない。「(やば……体が冷えて……)」私も小鳥と同じ状態になりつつあるなか、少し先に大きなトンネルがあるのを見る。
うまく足で舵を取り、運よくその手前で川底が低くなりトンネルへ。
「はぁ……はぁ、ぅう、助かった」
髪からタチタチと落ちる滴を拭いながら、小鳥の安否を確かめる。
「無事……だね……はぁぁぁ……」結構な無茶だった。そう今更思っても後の祭り。
制服はびしょ濡れ、カバンは置き去り、靴は脱げずに頑張った、大丈夫……いや、大丈夫じゃない。
さぁ、どうしよ。
次なる問題はここからの脱出だ。それも早く安全に……でないと小鳥が心配だし、カバンの回収もできない。
まず、あの急流に身を流すのは無理、却下。今流されて今度行ったら本当に溺れると確信が持てる。
「ここ、進んでみるしかないのかな……あは……」
審議の結果、まさかのノーアイテムでトンネルの中を進んでみることに。
下水道?排水トンネル?なら他に出口があるはず。
トンネル内部は電気が通っており、人が通れるような僅かな道があるのだから点検用……だと信じたい。
最悪道路のマンホールからこんにちはでもして助かるしかない。
『ピー……』
「──急がないとね」




