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空色空想ネスト  作者: グレーミー
Chapter2「黒鳥」
24/52

地に着いた黒鳥

ビルゴシティー 住宅街 ルリ自宅



「ふぅぁー……」

今日は休日という安心感で、ベットの温もりとの格闘時間が延長し、いつもより遅く目を覚ました。

重い目蓋と意識が完全に覚醒した頃には、朝食を作ったり、顔を洗ったりと、朝の一連の動作をし終えていた。

二度寝してしまわない程度にリビングのソファーで休憩を挟んだ後、頭の中で数々の難儀な存在がよぎり、二階の勉強机に向かうことに……



シャーペンの動きが止まり、午前11時をデジタル時計が示す。

何にもすることがなければ宿題に取りかかれるなんて都合のいいようにはいかないよね……面倒なのは何もなくてもやりたくないもの。

これ以降、シャーペンの軽快な動作を見せることはなかった。


集中力が途切れ、宿題以外で時間を潰そうと考えている私は、椅子をクルっと回転させて窓のある左の方を向く。

今日も青い空が広がる春の日だなぁー。

青色に誘われ、気分転換も兼ねて窓を開けると緩やかな風がカーテンを踊らせる。

ただ、春といってもまだ4月。肌寒さが少し残る。


雲一つなく澄みきった青に遮るものは当然なく、直に日光を届ける太陽。

日差しがほんのり暖かくて本当に二度寝しそう…

ベランダでボーッとしていると突如異変が起きた。


……?


日差しが少し遮られているように感じたのだ。

さっきまで雲なんて無かったのに…

体はベランダに寄りかかったまま、顔だけ空の方に向けると青い空に黒い点が……

ん?えっ、落ちてきて…る?

体も起き上がり、ちょうど太陽に重なってよく見えない黒い点。

点はだんだん大きくなって、確実に落ちてきている。


光を手で遮り、姿を確認し易くなるまで距離が近くなると、点だったものはシルエットを描き、その正体に確信が持てた瞬間……意識と体が我に返った。


「鳥っ!?」


大きな翼を広げた鳥はピンポイントでこっちに向かって突っ込んでくる。


「きゃっ!」


とっさの判断でベランダに隠れるようにしゃがんだ瞬間、風を切る音が頭上を通り過ぎて「ドンガラガッシャーン」とまではいかないものの、穏やかではない音が耳に届けられる。視線を見上げるもさっきの影はもういない。


……?視線を水平に戻して部屋の中を見るとベットのところに黒い影だったものはいた。

部屋は黒い羽が散りばめられ、宿題のプリントも豪快に舞い、部屋は変災に見舞われた。



ふーー。

部屋の片付けが終わった頃には昼が過ぎていた。

今から何か作るのも面倒だったので手頃なトーストを二枚焼いて食べた。────鳥と一緒に……。

少し距離を置いて、向かい合うように黙々と食べてる黒い鳥。

この辺りで飛んでる黒い鳥と言ったらカラスぐらいしかいない。やっぱり正体はカラスで、少し周りのカラスに比べて大きな気もする。今美味しそうにパンを器用につまんでいる。


カラスが突っ込んできた時は猛スピードだったし、よく見えなかったから気づかなかったけれど、見たら羽を怪我していてベットのシーツに血が付いていた。

急いでリビングまで降りて、救急箱を手に取ってカラスを治療してあげた。

カラスの方は暴れたりしなかった。でも羽に直接包帯を巻いただけの治療とは言い難い治療しかできなかったけど、痛がる様子も無かったからそのままにしておくことに。


「(ほんと…おとなしいな~)」


普通だったら暴れて手が付けられないと思ったのに。

野鳥でも偶にいるんだなぁ…こういう鳥。

カラスと聞いたらゴミを漁ったり、器用に餌を取ったりして、ズル賢くてイタズラをするマイナスなイメージが植え付けられているけど……こうして見ると普通に可愛いかも……


触っても大丈夫かな?あまりにおとなしくてなんだか愛着が湧いてしまったせいか、ちょっと触りたくなって後ろに回ってそっと手を伸ばして見た。


……カプッ


カラスは首を180度捻って、伸ばした人差し指をバッチリ捉えていた。


「いったぁ~~~っ……」


徐々に痛みがジワジワと伝わり、噛まれた指はその跡をしっかりと残している。

うぅ…愛着が湧いていたのは私だけで、まだ触らせてはくれないみたい。


「カァッ!」

「わっ!!びっくりしたー…」


いきなり鳴いたかと思ったら何かを訴えかけていた。

足を器用に片方だけ上げてパタパタと繰り返す。


「んー…止まり木?」


何で分かったんだろう?自分でも分からないけど何となくそう感じて、昔の記憶を頼りに家の中を探す。

二階の今は使ってない部屋の押入れを探していると、役目を終えて黒いビニールが被さったまま眠り続けていた大きな鳥かごを見つけた。カゴは四角い金属製でよく売っているタイプのもので、前面部だけ取り外せたりとなかなか作りがいいものだった。


部屋に持って行き、軽く掃除をして設置してあげると早速木に止まり、おとなしくなる。

大きな鳥かごでも、流石にカラスには小さかった。

鳥かごも負けずと大きいが、カラスの尻尾が動く度に引っかかる。

止まり木も少し小さそうで、グラグラと何度かふらついて落っこちそうになる。

明日でもホームセンターに行って見てみようかな。

少なくとも怪我が治るまでは見てあげたい。

飼ってみたいとも思ったけど、ずっと狭い檻に居させるのも可哀そうだし、何より外を飛べた方がいいと思うし……


窮屈ながらも、かごに入った後でも相変わらず静かで、じっとしてるカラス。

こうしているうちに日は沈んで、普通なら体験出来ない、カラスと一緒に夜を過ごす。


「おやすみ?」

「……カァ?」


それでも何だか家族が増えたみたいで、少し嬉しかった。


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