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空色空想ネスト  作者: グレーミー
Chapter1「傭兵」
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交差する夜明け3

Welcome(ようこそ), online(システム) systemオンライン.will transition(待機状態に) to the standby(移行します) state……A3'S 起動しました。』

感情の無い棒読みの電子音声で、手持ちの端末システムの起動を確認する。

依頼の時に起動させる便利アイテムなのだがこちらで詳しく解説することはできない。

生憎、電子的な機械には疎い為こういった内容はアマネが詳しい。


「ひゅ~っ、カッコいいー」


横目には感情丸出しで、端末を見つめる冒険野郎のシグ。


「…で、どこに行くつもりだ?言っとくが面倒なのは勘弁してくれよ」


もうこの時点で面倒臭さは沸点に近いが、これ以上は避けたいに決まっている。今の今まで依頼内容をロにしないシグに抗議を説くがいまだ回答は得られていない。

事前情報なしに依頼を受けるなんて前代未聞だ。


『次の角を左、その先はD-19リフトでショートカットできます。端末に送ったナビ通りに進めば困ることはないかなと…地上に出たら目的地まで輸送部隊に車両を手配しておいたのでそれに乗る…で、いいんですか?シグさん』

「うん、全然オッケー円滑かつスピーディだね!」

「おい」

「ん、どしたの?忘れ物?」

「あぁ…お前の脳みそ忘れたのかもな。どこが円滑だよ…そろそろ話せ」


ショートカット用貨物リフトに揺られながらイライラも募り始める。

場所はおおよそ予想がついたというか確定した。

端末のナビ、移動方法から察するにあの場所だろう。

地下通路での移動はハイドラシティー境界線付近の旧トンネル、地下通路の終点でもあるその場所から車両移動するならその先はコーバスシティー……


「ねぇ、ゼノ」

「あ?」

「撃つのは好きな感じ?」

「やっぱりその手なのか…」


大きなため息をつきながらホルスターからハンドガンを引き抜いてマガジンを模擬弾から実弾に切り替える。……結局、クソドンパチしそうな依頼を受けやがったな。


「さすが、なんにも言わなくても準備に抜かりないね~」

「お前な……」

「まぁまぁ、報酬は僕から直接渡すし、弾むよ?」

「で、何を殺るつもりだ」

「怪物さ」


「は…?」ようやく口を割ったかと思いきや要求した答えを最後まで理解することは叶わなかった。

この世に人外が敵として現れるとでもいうのか…?

まぁ、あの街なら有り得てもおかしくはないかもしれないが。あの街で、あの場所なら。


「ワクワクでしょ」

「いや、帰りてぇ」


自分から問いておいてなんだが今更質問なんてしなければよかったと後悔する。



地下通路をリフトで移動するのにも終点が来た。高速リフトを乗り継ぎ最後の上昇リフトで薄暗い、工事用の赤い点滅ランプと資材、瓦礫が転がるトンネル内に出た。辺りは少し粉埃臭い。

今は使われないこのトンネルは昔事故があり一部を残して陥落。復旧の目途も立たずに半ば放棄となり、立ち入り禁止の目印と通せんぼで済まされている。

詳しくは知ったことではないが…。


「あんたらか。待ってたぞ乗りな」

「ごくろーさまー」

「旅団長直々にお出かけとは珍しいな」

「あははっ、だよね~」


仲良いんだか、適当なのか中年の筋肉質な男と話すシグをよそに先に車に乗り込む。

外装は一般車両と何一つ変わらない普通車。4WDか…?車内も同様の通常仕様で無駄な装飾はないが、至る所に弾痕が残っていて外側だけは『普通』を装っていた。どこ走ってるんだこの車……


「や、ゼノお待たせ」

「よし飛ばすぞ」


今のは俺が銃口なんかを突き付けて頭を吹き飛ばすとか言ったわけではない。

運転席の中年男がそう言うとゲームセンターにあるカーゲームのペダルの如く加減なしにアクセルを……!


「をごっ……!?」



……。

「─」

「──っ…!」

「あ、気が付いた?」


「ってぇ……」後頭部をさすりながら周りと状況を把握する。


「だいじょぶかい?ゼノ」

「なんでこの席だけヘッドレストが無いんだ…」


座席の頭部分のクッションはそのもの自体が無く、急発進と同時に前かがみだった上半身が波打つように後退、後部座席の領域を超えさらに装飾の少なさが誘因して鉄骨に頭を強打したらしい。弾痕やらに気がいってしまい寄りかかることなく前かがみで待機していた結果である。結構イテェ…


「…く……」


やけに静かだが明るい。


「──コーバスシティーの中心地を抜けてるとこさ。予想外の仮眠もとれたみたいだけどもうすぐ着くよ」


気を失っていたとはいえ、寝ていたのとさほど変わらない。人工的な電球の光源が乾いた目に直接光を通し、強すぎる刺激に耐えられず軽く目を閉じる。

俺の意識が戻って数分。車は明らかにスピード違反を触発させる速度で中心街を抜け、頭の片隅に忍ばせておいた予想通りの場所付近にあるセーフティハウスへ到着した。


「じゃあな、必要ならコールしてくれ」

他にも用事があるらしく俺達を降ろした後も変わらぬスピードでUターンして角に消え、エンジン音が妙に耳に残った。


「……で、どうするんだ」

「─ここには寄って行ったみたいだね…」

「おいシグ?」


セーフハウスに我先に入り独り言を言いながら見回すシグ。

このセーフハウスは休憩場、または仕事場に臨む最後の確認部屋のようなものでシティー各所に点在し、依頼の再チェックやミーティング、簡易の弾薬補充ができる。

誰かと固まって動くことの無い俺にとっては無縁の場所だが集団行動をする者たちには好評らしく、生活感のあふれるセーフハウスもあるようだ。(もはや家と変わらない気がするが…)


「何か用でもあるのか?」

「んーいや、だいじょぶだよ。確認したし、行こうか」


どう見てもなんでもなくはないのだろうがあえて突っ込むことはせず、今聞かなければならない要項を優先した。


「お前は何がしたい?」


シグがこちらを振り返る。

俺は今図らずもこいつに雇われている身となっている。たとえ同じ組織で身内でもそれは変わらないこと。

なら、これを聞いておかなければならない。雇い主は何をしたいのか。それが俺の原動力であり、報酬に繋ぐパイプラインだからだ。


「そうだねぇ…」


「研究所に入って暴れたいね」


無謀、且つ無意味。そこに利益はあるのか計り知れないが本人はそれを望むそうだ。

あぁ、もうやってやるよ─ここでようやく一つの答えにたどり着く。この面倒くさそうな夜に歯止めをかける即効性のある方法。

「(さっさと終わらせて帰る)」

そう、これが最善。分かってはいたさ。ただ、これ以外にないのかといつも嘆息を漏らす。

結局、ガタガタのパイプラインに向かって「そうかい」と、ひきつった苦笑いを返すのが今の精いっぱいでもあった。


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