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空色空想ネスト  作者: グレーミー
Chapter1「傭兵」
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舵を失った沈没者5

いまだに聞こえる発砲音の方へ駆ける足音。

砂利交じりのコンクリートの地面を走る音がワンテンポ遅れて暗闇のどこかからか反響し追いかけてくる。

それは自分の足音ではなく悪魔の足跡に聞こえてしまうほど不気味だった。

再び研究棟が並ぶ区画に入り込み、見慣れた姿を目にする。


「リユか…!」

「カイ……」


会えた…

でも、素直に喜べはしなかった。


「カイ…!腕……」


息をのんだ。

その人の片腕は…腕が……


「ぁ…あぁぁぁああ……っ!!!」

「いやぁぁ!…ぁぁ……」


傍に崩れ落ちる。頭がぐるぐるとまわって嗚咽を繰り返す。


「リユおいっ!!」


その場で泣きじゃくるわたしを残った片手で支える。


「リユ!…ここから出るんだ」

「いやだ…いや……」

「いやじゃねぇ!…リユ、行くんだ。」

「一度旅団に戻るんだ。戻ってこいつの弾とか修理をしてきてほしい」

「……」

「…全部出来たら来い、な?俺はフユタを探さなきゃいけないからよ」

「……死なない?ぜったいに……」


返事は返ってこなかった。ただ、頭を撫でられてカイのAkを渡される。


「重いぞ」

「重くない…」

「強くなったな、リユ」

「ちがう……」

「いいや、俺の目に狂いはないな。少しずつ強くなってるぜ?」

「…ほら、早く来てくれよ?待ってるぜ」


ずるい。

この約束は叶わない。

それはわたしにも分かること。

カイも分かって言っている。

お互い黙認してしまった。

それでも走った。カイに背を向けて。何度か走りながら振り向くも、暗闇ですぐに姿は見えなくなってしまった。


あのあとカイは武器も持たずにどうするの…?

フユタをみつけてどうするの…?

わたしは必要だったの…?

『理由』はあったの?

どうすれば、助けれますか…?


「助けたいよぉっ…!」

『なら、助けてあげましょうかぁ~?クク…』

「ひぃっ……!」


耳元で笑いながら話す男の声。通信機からだった。


『いいですネェ~その驚きぃ』

『いいですヨォーええ、驚かすようにした甲斐があったってもんですよぉー』

『あ、驚くついでに死にませんかねぇ?NO.xx……』


「いやっ…!」

耳から取り外し、不気味な声の流れを止める。

不快な声…恐怖を誘い、悪そのものを表すかのような嫌な声。

電源を切り、ベルトが入っているチャック付きのポケットに押し込む。


「キュゥゥゥルゥゥゥァァァァ!!!」


人外の声が後ろから聞こえてくる。再び発見されのだ。


「はぁっ…はあっ…」


息がさっきより乱れ、疲労と恐怖が圧し掛かる。涙も勝手にあふれ出ている。

もう立ち止まれない。


「わたしは生きなきゃ…また会うために」


わたしはこの重さを背負っていく。

そのうちに外を隔てる隔壁にたどり着く。施設のどの辺りかはわからないけど水の音が聞こえる。

遠くからは水の落ちる音…ダム…?


「…っ」


片手に一丁ずつ持ち、ストック部分を脇に挟んで押さえる。

そして強化ガラスの壁に向かいすべてを撃ちこむ。

弾丸が当たり続けた箇所が少しずつ欠けていき、破片が飛び散る。

数発分貫通したところで強度は一気になくなり、そこで弾が切れて銃の挙動は止まる。

そのまま背中で体当たりをすると簡単に割れて道が開けた。

最後の鋼鉄製の隔壁は一定箇所に非常扉があり、すでにいくつか開いていた。

研究員の人で脱出した人がいたのだろうか。


隔壁を出ると、外は何もなかったような静けさ。中で起きている出来事、悲鳴、銃声、何一つ外には漏れ出していない。これでは誰も異変に気付けないに決まっている。


「はあ…っ!はぁ……うぅ…」


急な立ちくらみ、落ち着かない息。足元がおぼつかない…


「あれ、疲れちゃった…?ハハッ」


乱れた呼吸がさらに加速する。心臓が波打ち、息苦しい。

見覚えのある顔。見たことのあるその顔は恐怖の象徴だった。


「アハハッ…で、どうなんですかねぇ?疲れたなら終わらせてあげますよぉ?」

「…ぃ……っ」


逃げないと…頭ではそう思っても体は後ずさりをするのが限界だった。

迫る速度をわざと遅く距離を詰めてそれを見て楽しんでいる。

この人に遊ばれて殺される…?


「────っ!?」


「ザァーンネン。後ろは激流ですヨォ~?」


……。


「何するつもり?」


………。


「わたしは戻るの…だから死ねない…!」

「で?」


ケラケラ笑う顔。許さない、絶対に。あの笑顔を崩したその顔を忘れない。

二つの銃をしっかり両手でつかんで、流れに身を投げる。

背中から尖った冷たい感覚が体全体を一気に包む。

体はどんどん激流にのまれていく。


「ぁあ…落ちちゃいましたよ。まぁーいっかぁ!クッ…アハハハ!!」


半ば溺れながら流されていく姿を、ゴミのように見下して去って行った。

わたしはどこまで流されたのか。そのあと助かったのか。

死にたくはない。なら生きれたのか。



なにもわからない。


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