朱田波美編・第8話:プロポーズ相談編
再び音信不通になってから数年後、朱田さんから「自分本位で申し訳ないのですが、、、。相談がありますので聞いていただけませんか、、、。」とメールにて連絡がきてしまう。
私は面倒くさがりつつも「マンションに来てくれれば相談にのりますよ」とお伝えをする。
当日、事前にコンビニで2本の「カルピスウォーター」を買って待っておりました。
私は、距離を取りつつPCデスクの椅子に座りました。小さな四角いテーブルには2本のカルピスを置き、朱田さんはテーブルの脇に横座りをしました。
和やかな空気感でしたが、私は、また手のひら返しをされるのだろうと警戒しつつも、紳士道の「照れる蔵噺道」で磨いた、傾聴の黄金比(なるほどなるほど、うん、うん、そうだね、もちろんだよ!)を連発する。
朱田さんは、音信不通の時期の事はあまり語らず、近況報告を続けた。いろいろな事を話してくれた。正社員になり、お仕事が続いている。仕事はやりがいもあって、毎日、残業が少々きつく感じるものの、楽しいとの事。
朱田さんはカルピスを開封し一口飲んだ。何か決意したのだろうか。朱田さんはお話をしてくれた。
「今の会社関係で、親睦会と言うか他社さんとの飲み会がありまして、、、。」
「なるほど、なるほど」(黄金比、A発動)
「それで、飲料水会社の方々と、いわゆる合コンみたいな感じの、、、。」
「なるほど、なるほど」(黄金比、A発動)
「そこで、年下なんですが誠実な独身男性とお知り合いになったんです、、、。」
「なるほど、なるほど」(黄金比、A発動)
「1年ちょっとお付き合いしたので、私も彼の事が大好きで、、、。」
「うん、うん」(黄金比、B発動)
「サプライズで、私の為に仕事を休んで並んで買って来てくれたりFURLAの期間限定品のお財布をプレゼントしてくれたり、、、。」
「うん、うん」(黄金比、B発動)
「私の為に、誠意に溢れた心遣いが嬉しくて、可愛くて、、、。」
「そうだね」(黄金比、C発動)
「初心で純粋な年下彼氏に熱くプロポーズを受けているのですが、私は結婚して良いのでしょうか?」
「もちろんだよ!」(黄金比、D発動)
俯瞰する心は、何を言っているのだ、手首の柔らかな人は、、、と感じてました。
「いっちさん! あのね、、、でも、、、。」
朱田さんは彼の口癖を真似るように再現してみせてくれた。
「宇宙で一番好き!僕の事どれくらい愛してる?」
「もう他の男の人見ちゃダメだよ?」
「帰りたくないなぁ。離れたくない、あと5分だけ一緒にいよう?」
「とか言ってくる事が有るのでちょっと怖いです、、、。」
「それと、、、5股をしていた事を彼にお伝えするべきでしょうか?」
一瞬の沈黙
「えー、そ、そうなんだー!」(黄金比、壊れる)
私の俯瞰する心は究極の理不尽に直面した刹那に覚醒する。今、私は一人の女性の成長を見届けている観測者なんだ!ビッグバンの瞬間を体験しているんだ!
私は、朱田さんに最後の金言(魂のエール)をお伝えした。
「女の過去は言わなきゃ無いのと同じ」
「束縛系は結婚したら秒で言わなくなる。」
「年下の彼氏を労わりつつ、転がしちゃいなYO-」
朱田さんは、私の言葉に励まされたのか、むくっと立ち上がり、くるっと反転して、にこっと笑って「いっちさん今までありがとう!」と一言。
颯爽とマンションのドアを開け新しい人生に進んでゆきました。見送るように、舞ちゃんが小さく一声だけ「わん」と鳴きました。
呆然とする私。
そしてPCデスクの上で、結露によってポロポロと涙を流すようにビシャビシャになった、未開封のカルピスが1本佇んでいた。
【ステータス更新】
ウチの言葉、ちゃんと誰かの人生前に進めててウケる。
隠れ属性「全肯定で見届けるビジュのいい瞳」耐性、上昇。うんうん、進んじゃお!
朱田波美編、全8話お付き合いいただきありがとうございました。水族館デートから始まり、5股の発覚、そして「水底の説法」を経て、最後はプロポーズの相談相手になるという、不思議なご縁の着地になりました。
今にして思えば、第2話の水族館で不意に手を握ってきたあの瞬間、もしかしたら「ご褒美を先に与えておく」という、無意識の手口だったのかもしれません……なんて、今だからこそ穿った見方もできますね(笑)。
次からは、また新しい出会いのお話が始まります。どうぞ楽しみにしていてください。




