なんとか食いつなぐ話 食堂でバイト始めました
久々に高揚した気分になったブルーメだったが、次の日に自宅の魔冷庫を開き、固まった。
食料が…ない。
魔冷庫の中にはキチキチ鳥の卵が一個、冷凍室の奥の方に干物にしておいた小さな魚が一匹。パントリーの隅にオニーンが一玉転がっていた。
ズボンのポケットに手をつっこむとすり減った銅貨が3枚、無機質にカチンと鳴った。
このままだと試験結果を見に行く前にあの世行きだ。
日雇いでしばらく凌ごう。
労働ギルドに足を運んだが、すでに今日の仕事は満員御礼。
それならば目先の食料の確保だと、パン耳を買いに走ったが売り切れ。
なんてこった。
朝から食事も取らずに街に出てきて腹がぐうぐうと鳴る。どうにも限界、せめてスープの一杯でもと目についた食堂に入ったとたん、食堂の女将さんと思しき女性の大きな声が響いた。
「ああ、この魔火コンロ急に使えなくなっちまったよ。もう注文も取っちまったのに!今日は修理屋が休みなのに一体どうしたらいいんだい!」
店はそこそこの人気店なのか昼時よりずいぶん前にも拘わらず席が埋まり始めていて、大きな声にどうしたのかと座っていた客が視線を送っている。
女将さんはパニックになっていて、今しがた店に入ってきた俺のことなど気付いてもいない。俺はというと腹が減りすぎて他の店に行く気力もない。なんでもいいからすぐに腹に入れたい。
「あの…そのコンロ、俺が見てもいいですか?」
突然声を掛けられたことに驚いたのか、女将さんは大きな目をギョロリとさせて訝しそうにジロジロと俺を眺めまわした。
「なんだいアンタ、初めて見る顔だね。修理屋かい?」
「まあ、そんなもんです。コンロが直ったら料理できるんですよね?」
空腹で意識を失いそうな足どりでフラフラとコンロの前に立ち一瞥すると、コンロの一部分を爪でガリガリと擦る。途端にボッと魔火が勢い良く着いた。
「固まった油で魔気回路の一部が分断されてたんですよ。たまに熱湯で拭いてやるといいです」
「なんだいアンタ凄いじゃないか!」
驚きと今日の営業ができる安堵とで女将さんはパアッと顔を輝かせた。
「さあ、またせたね。今から料理をじゃんじゃん作っていくよ!アンタも座って。今日はアタシの奢りだよ。」
店内に大きな声を響かせると丸太のような腕で大鍋を振るい料理を作り始めた。




