転職とは 1 イケメンの圧はすごいんです
「……教員???」
俺は思わず、そう、本当に思わず、素っ頓狂な声をあげてしまった。
まったく、本当の本当にまったく、頭の中に欠片ほどもなかった未来だったからだ。
移民の俺が教員?
いやいや無理だろ。母から叩きこまれた技術と知識はあるけれど、師である母が亡くなってからは独学だ。学院なんて御立派な場で教えられるようなシロモノじゃない。
そもそも人に教えた経験なんてない。
だいたい出会って数刻も経っていないのに、このイケメンは何でこんな職を勧めてくるんだ?
突然降って湧いたような選択肢に目を白黒させていると、ライモンドはニッコリとその形の良い美しい口元を三日月にした。
「貴方のような人が、学院には必要だと、私は思いますよ」
この男がギルド員に物申してくれたおかげで選択肢が増えた。
しかし、なぜだろう。この神々しいほどのイケメンの、非常に魅力的とも言える笑顔が何だかとても胡散臭い。
「あのっ、ありがたい話なんだけど、俺には無…」
「明後日の水の刻に、王立学院の会議室だそうです。筆記試験もありますので筆記具と、筆記が受かったら面接で…研究業績は、そうですね、何か貴方が作った魔工具を持参できますか?――実物を見せた方が、きっと早いでしょうから」
「はい?」
「魔工具、持参できますか?」
「いやだから…」
「…魔工具、持参できますか?」
「はい…」
「では申し込んでおきますね」
だいぶ強めなイケメンの圧に負けて俺が頷くと、神々しいイケメンは大変満足そうに、さらに魅力的な顔で笑ったのだった。




