ギルドと転職 話のわかるブルースライム ぷるぷるぷる
「ブルーメ先生、さようなら」
「ああ、また明日」
転職してから一つ季節が過ぎ、こんな会話にも大分慣れてきた。
あの生ける彫刻のような男ライモンドに助けられた後。
労働ギルドに向かおうとすると、件の男は、さも当たり前のような顔をしてついてきた。
間が持たなくなって簡単な自己紹介をする俺に、その美しい男は興味深そうな視線を寄越した。
神々しい外見とは裏腹に話をしてみると案外に気さくなやつだったが、俺のような移民とはあまり接する機会がないのだろうか。
ギルドでは、魔工に関わる仕事を第一に、無理なら日雇いで肉体労働をしながら生活を繋いでいくつもりだった。
だが、名門商会をクビになった俺の悪い噂がもう流れていた。
掲示板には魔工関係の募集が何件も貼ってある。
それなのに、ギルド員は冷たく斡旋できる魔工の仕事はないと伝えてきた。
誠実に仕事をしてきたつもりだった。移民であること、それだけのことでなぜここまでの目に遭うのだろうか。
どんな仕事ならあるのか聞く俺に、ギルド員はかなりハードな肉体労働を斡旋してきた。
無理なら歓楽街で身体を売るしかない、そう嫌味まで言われて。
「……わかりました。何でもやります。魔工の仕事が見つかるまで」
背に腹は代えられず仕方なしに申し込もうとした時、ライモンドがギルド員との話に割って入ってきた。
「それは変ですね」
ライモンドが移民の権利と仕事の斡旋方法のおかしさを整然と詰める。
すると、先ほどまで高圧的だったギルド員はしどろもどろになり押し黙ってしまった。
それを見ていた他のギルド員が、今度はなんとギルド長を呼んできた。
イディオットはギルド長まで巻き込んでたった一人の貧乏な移民を追い詰めたいのだろうか。
怒りよりも悲しみの感情が湧き上がってきてぐっと唇を噛んだ。
ギルド長はギルド員に耳打ちされ、ブルーメを馬鹿にしたような目で見ると尊大な態度で近づいてきた。
しかしブルーメの前に立った瞬間、ギルド長の顔はブルースライムのように真っ青になった。
「かっ、かっ、かっ、かっっ、閣…!」
顔色と一緒に態度までヘコヘコと媚を売るようなものに瞬時に変わると、魔工の募集用紙を両手に抱えてすごい速さでブルーメのところに持ってきた。
ブルーメの後ろに立つ彫刻のごとき男の、剣呑なまでの鋭い眼光。
その凍りつくような気配に、ギルド員たちはガタガタと震え上がった。
狐につままれたような気持ちのまま、たくさんの募集用紙をあれやこれや眺めていると、ライモンドがそのうちの1枚をブルーメの前に置いた。
「グリンベルク王立学院 魔法工学部教員募集」




