今日は本当に良い天気4 三角四角の始めと終わり
「災害中心の気絶者を担架で搬送します」
あの魔気災害の後、学院内の復旧作業は驚くほど早く進んでいった。
境災班による迅速な学院封鎖と導線遮断は、結果として王都全体への致命的な被害の波及を防いだ。
「…導線全解除指令の時は、王都が消し飛んでしまうかと思った……本当に良かった」
地面に倒れ込み、ぐったりした境災班のメンバーが涙声で呟いている。
「レオンハルト様」
振り向くと、柔らかな茶髪の職員がペコリとお辞儀をした。
災害状況の聞き取りをしたいとのことだった。
あの災害で、俺達以外、誰一人として災害中心に近寄れなかったらしい。
境災班は外周封鎖のため中心まで来れなかったのではない。外周までしか入れなかったのだ。
――じゃあ、あいつは。
自然と視線が向いた先には、樽電池にもたれ掛かってスヤスヤと寝ている銀色のアタマが見えた。
叩き起こして一緒に聞き取りに連れて行こうと手を伸ばしかけた時、ライモンド試験監督長に静止された。
「――今回の立役者です。寝かせてあげましょう」
そう言って試験監督長は、銀アタマに自分の上着をそっとかけた。
「ライモンド試験監督長は、こいつが怖くないんですか?」
聞くつもりもなかった言葉が口から零れ出た。
「――とても綺麗でしょう?私が見つけたんです」
だから貴方はダメですよ、とでも言いたげに有能冷徹と名高い試験監督長は柔らかく微笑んだ。
学院の外では、あの恐ろしい魔気災害など最初から存在しなかったかのように、いつも通りの日常が動いていた。
ただしばらくの間、魔工具が誤作動を起こしたり、目眩がする人がいたりしたが、そのうちそんな話も聞かなくなった。
たまに酒の席で、川が光った話や綺麗に赤く点灯した魔気灯の話が、都市伝説のように出ては盛り上がった。
俺は災害の聞き取りの最中、端正な試験監督長の横顔が目に入り、あの声のことを思い出した。
ライモンド試験監督長のものではない、けれど、どこかで聞いたことのある、声。
銀アタマの力とは、いったい――
全てが日常に向けて戻ろうとしている時、その仄暗い一切の音のない空間で、笑う男がいた。
まるで人ではないような美しい容姿の白髪の男は、ゆったりとした口調にそぐわぬ無機質な声で呟いた。
「美しい――銀色。もっと見たい」




