動悸ドキドキ、したくない4
――おかしい。
撫でつけた赤銅の髪が走る度にほどけて揺れる。
レオンハルトはその琥珀の瞳に映る景色に違和感を覚えた。
銀アタマのバカと試験監督長を追って廊下を進むが、背は見えているのに一向に追いつかない。
廊下の魔気灯は割れ、まだ点いているものもパチパチと点滅し続けいつ破裂するかわからない。
細く亀裂の入った境界ガラスは、先に進むにつれ大きくヒビ割れ廊下に砕け落ちていた。
――この学院の最高固定の境界ガラスが割れるなんて。
たかが同期実験でここまでの被害が出るわけがない。
――それに、この廊下はこんなに長かったか?
学院の校内地図は隅から隅まで頭に入っている。
……カツン「カツン」「「カツン」」「「「カツン」」」
ふと気付けば、遥か先を行く2人の足音が自分の足音と寸分の違いなく重なっている。
背筋を氷で撫でられたような寒気が走る。
空気が押し潰されそうになるくらい、重い。
「……ブルーメ・クンツェ!!!」
恐ろしいほどの静寂に感情が抑えきれず、堪らずその名を叫んだ。
瞬間、あれほど遠かった銀色が目の前にいた。
幻でも逃すまいとその腕をしかと掴むと、3人の呼吸がぴたりと重なる。
くるりと、銀色が振り向いた。
「…こっちだよ」
惚けたように自分を見つめる青紫の瞳にレオンハルトはドキリとした。
大丈夫なのか。こいつは。
「…ライモンド試験監督長!」
現状の話をしようと銀色の隣を見て、レオンハルトは目を疑った。
見間違いでなければ、あの有能冷徹な試験監督長が本当に嬉しそうに口の端を上げて笑っていた。
◇
――中央公開実験場――




