面接が終わったらコーメ握りを食べるつもり2
面接は全員で受けるらしい。
ゾロゾロと会議室に入ってきた面接官のうち、前方の机には五人、後方にも何人か座った気配がした。
自己紹介と志望動機を促されると、端に座った受験生から緊張した表情で履歴書を一気に読み上げるかのように喋りだした。
王都の技術部の主任研究員、州立の魔工房団体のエリート女性、王立軍の技術少佐、地方の名門魔工房の期待の新星、貴族女性の研究者…。
俺みたいなやつが聞いているだけでも凄いんだとわかる。
「…レオンハルト・フォン・アイゼンフェルト。グリンベルク王立学院首席卒、王立研究所所属。主な業績は境界固定係数安定化論文で最年少王国表彰、王立研究所での軍用魔気障壁の強化改良実績。専門分野は境界固定工学。志望動機は…クローヴェン教授の理論の空白を埋めるため、です」
あの赤銅色の髪の男が喋り出すと、面接官の手元の紙をめくる音すら止んで場がしんとした。受験生も無意識に姿勢を正す。
侯爵家出身で俺の二個上。
整った顔立ちにすらりとした体躯。
赤銅の髪の下には意志の強そうな眉と溶けた飴のような琥珀の瞳。
周りの反応から見ても、王国きっての若手エースなんだろう。
「受験番号47 ブルーメ・クンツェ」
重厚な机に片肘をつき指の背に顎をのせた面接官がもう片方の指先でトントンと机を叩く。
ぼんやりしていた所に急に呼ばれてハッとした。
慌てて立ち上がろうとして、脛を椅子の脚にゴツンとぶつけてしまった。地味に痛いやつだ。
「イテテ…」
面接官のうちの一人がフッと笑ったが、静まり返った部屋の雰囲気にコホンと咳ばらいをした。
「ブルーメ・クンツェ…です。アンゲーベン商会で魔工士を3年ほどしていました。得意なことは…いらなくなったもので道具を作ること。志望動機は、給料がいいのと…魔工具が好きだから、です」
ブッと噴き出す面接官。受験生も笑いをこらえている。
そんなにおかしなこと言ってないだろ?
全員の自己紹介が終わったところで、面接官が次の質問をした。
「あなたにとっての魔工具とは何ですか」
社会のインフラ、生活を豊かにするもの、国防のためのもの、人類の未知への鍵など、それぞれの考えの根本が滲みでる回答が次々と語られる。
「…秩序を維持するための技術です。人は脆い。その脆さを再現性と安定性でもって固定する。そのための手段です」
揺れのない琥珀の瞳が真っ直ぐに面接官を捉えて語り、面接官達も納得したように頷く。
もはや俺の答えなどいらないのではないかと思ったが、順番がまわってきたので仕方なく口を開いた。
「魔工具は…壊れないためのもの、です」
受験生は目を点にし、面接官は言葉を失い固まった。
その回答にレオンハルトと、後方に座っていた翡翠の瞳だけが顔をあげた。




