銀の突き匙の新名物3 〜肉肉ニクい人気者
「美味っ!噂どおり、いやそれ以上の味。お前も食べてみろよ」
「なんだこれ、熱っ、モーモチーズがカリッカリで腸詰めの肉汁が凄っ!」
「トマソースもヒレ肉もコーメが全部の旨味を吸ってて堪らないな。うちの近所の店も同じ魔火オーブン使ってるのに、焼き具合が全然違う。なんでなんだろ」
「女将さん、俺にも肉肉ドリア!」
新メニューの噂はあっという間に広まり、ますます銀の突き匙亭は賑わった。
そしてそれと同じくらいヤッタローも注目を浴びた。
「あの木樽だろ、皿があっという間にピカピカになる樽」
「油でベトベトに汚れてるのに、樽から出すとピカピカになってるんだよ。なんかいい香りもするし」
「すごい音するけどな。けど、皿に傷一つない。他の店の皿と大違いだ。貴族街の店以上の仕上がりかもな…ブサイクな樽なのになあ」
「水だけでこんなに綺麗になるのか?」
「そんなわけないだろ……知らんけど」
ザバァと返事をするかのように回るヤッタローに客たちは不思議そうな視線を向ける。
そんな反応に女将さんは喜びを隠せず、大きな声で嬉しそうに自慢する。
「あのヤッタローはブルーメが作ったのさ。水は1日換えなくても皿もコップもピカピカ。残り水は掃除に使えるんだよ。おまけに竈の燃料も出てくる。アタシにもよく分からないけど全部使えるんさね」
その賑わいの外で、眉間に深いシワを刻む者がいた。地味な外套とは裏腹に、よく磨かれた革靴。その踵をカツンと大きく床に打ち付けた。
「あんな物があっては――ならない」
その言葉を聞いていたかのように、ゴウンと回っていたヤッタローがほんの一瞬動きを止めた。ジジ…と微かな高音を出したかと思うと、また何事もなかったかのように回りだした。
ヤッタローが皿をピカピカに洗い上げた頃には、もうその席は空になっていた。




