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どん底の食事は、半熟卵を魔火の微調整で

「最高精度で、とびっきり美しくて美味いヤツ」



ブルーメはベッドから身体を起こすと、伸びた銀髪をクシャクシャと掻きパントリーを覗き込んだ。


そうしてパントリーのオニーンを一玉掴み、自作の魔冷庫からキチキチ鳥の腿肉と卵を取り出す。


手際よくキチキチ鳥の腿肉をきり分け、オニーンはみじん切りに。熱した魔火パンのたっぷりの油のなかにばらばらと放り込んだ。


焼き目のついたキチキチ鳥のいい匂いがふわりと鼻腔をくすぐる。腹がぐうと鳴る。


骨ばった指の先で魔火コンロの火力を微やかに調整すると、仕上げにキチキチ鳥の卵を豪華に3つ使って半熟に焼き上げ、具材と混ぜ合わせたコーメにのせる。

半熟卵がつやつやして美味そうだ。


半熟は魔火パンの熱伝導の微調整がコツなんだよなあ。

魔工電池のそれと良く似ててキマるとちょっと気持ちいいんだな、これが。



少しだけ取り分けてあった炒めた具材を湯に入れ調味料を濃く混ぜ溶き、簡単なスープを添えて出来上がりだ。


「やっぱり落ち込んだ時は美味いメシだよな。うん、今日の微調整、完璧にキマったな。卵黄の非ニュートン流体と卵白の弾性ゲルとの美しいハーモニー」


 





食事を綺麗に平らげ満腹になると、次のことを考える余裕が少しだけ出来てきた。


「無駄に息吸うより新しい仕事探さなきゃだ」




次の日。ブルーメは持っている服の中でも一番綺麗なものを身に纏った。伸びた銀髪を後ろで1つに括り、長くなった前髪は自分で整えて労働ギルドへと向かった。


さらりとした銀髪の後れ毛が白すぎるほど白い華奢な首筋に一筋たれ、陽の光を浴びてきらきらと光る。


街を歩くと青年たちがブルーメにチラチラと視線を寄せた。



ブルーメは小柄で筋肉があまりつかない細身の身体に、母譲りの女顔だ。どれだけ日に当たっても赤くなるだけの万年体調不良のような生白い肌と無駄に大きいぼんやりとした青紫色の目。


額を出していると少女に間違えられることもあり人さらいに遭いそうになったこともある。 


母は自分そっくりな美人に産んだんだから顔を出しなさいと言っていたけど、ブルーメはそんな男らしくない外見が嫌で前髪を伸ばし目を隠すようにしていた。



「さすがに転職するのに目も見えないような風体はダメだろ。」



そう思い前髪をバッサリと切り揃えた。



移民ということもあり雇ってもらえる職種は限られているだろう。けれども自分がやれることはやって臨もうという決意の表れでもあった。


「そこのお嬢さん」


やはり女に見えているんだな。

そう思いながら振り返ると、貴族の子息風の男がまじまじとブルーメを見つめ手を取った。


「ああ………。ハァハァ、横顔も美しかったが、正面はそれにも増して美しい。私はモヴデース子爵家の跡継です。お嬢さん、私とぜひお茶…」


「俺は男です」

  

手を振りほどき言い捨てる。

男は目を見開いて、ハァハァしながら男でもいい可愛いと再度ブルーメの手を鼻息荒くねっちょり握る。



「止めてくださいっ!気持ち悪いっ」



握られた手を荒々しく振り払うと、男は生意気な平民め貴族に逆らうのかと、さっきまでの態度はどこへやら、怒りで真っ赤にした顔で拳を振り上げた。



せっかく洗って綺麗にした髪がまた汚れちまうな。ブルーメはぎゅっと目を閉じて両手を上げ、身体を固く竦めた。



その瞬間、ふっと場違いに爽やかな甘い香りが鼻先を掠めた。



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