転職活動に出かける
「あーっっ腹立つ!こんな時は、アレだ」
そう1人ごちてベッドから身体を起こすと、ブルーメは伸びた銀髪をクシャクシャと掻きパントリーを覗いた。幸い、食料はつい先日多めに買い足したばかりだったので1週間はなんとかなる。
綺麗に手を洗い自作の魔冷庫からキチキチ鳥の腿肉と卵、パントリーからオニーンを一玉取り出しまな板にのせる。
手際よくキチキチ鳥の腿肉をきり分け、オニーンをみじん切りにすると、魔火パンを魔火にかける。
魔火パンが温まったところに油を敷きキチキチ鳥とオニーンを炒め始めた。
オニーンが飴色になってきた頃合いで昨日の残りのコーメを入れて炒め、調味料を入れる。炒めたキチキチ鳥のいい匂いがふわりと鼻腔をくすぐる。美味しそうな匂いに腹がぐうと鳴る。
仕上げにキチキチ鳥の卵を豪華に3つ使って半熟に焼き上げると、炒めたコーメにのせる。
半熟卵がつやつやして美味そうだ。
少しだけ取り分けてあった炒めたキチキチ鳥とオニーンに湯を入れ調味料を濃く混ぜ溶き、簡単なスープを添えて出来上がりだ。
「やっぱり落ち込んだ時は美味い食事だよな」
感謝の祈りを捧げてまだ熱い半熟卵とコーメにカラトリーを割入れた。
食事を綺麗に平らげ満腹になると、先ほどの絶望や怒りがなくなったわけではないが、ブルーメは次のことを考える余裕が出来てきた。
「食料があるうちに新しい仕事探さなきゃだ」
次の日、ブルーメは持っている服の中でも一番綺麗なものを身に纏い、伸びた銀髪を後ろで1つに括り、長くなった前髪を自分で整えて労働ギルドへと向かった。
街を歩くと青年たちがブルーメにチラチラと視線を寄せる。
少し前まで残業に追われ、人の少ない早朝か深夜しか街を歩いていなかったブルーメは不安にかられる。
ブルーメは小柄で筋肉があまりつかない細身の身体に、母譲りの女顔だ。どれだけ日に当たっても赤くなるだけの万年体調不良のような生白い肌と無駄に大きいぼんやりとした青紫色の目。
額を出していると少女に間違えられることもあり人攫いに遭いそうになったこともある。
ブルーメはそんな男らしくない外見が嫌で前髪を伸ばし目を隠すようにしていた。
「さすがに転職するのに目も見えないような風体はダメだろ。」
そう思い前髪をバッサリと切り揃えた。
移民ということもあり雇って貰える職種は限られているだろう。けれども自分がやれることはやって臨もうという決意の表れでもあった。
「そこのお嬢さん」
そうこう考えを巡らせて歩いていると後ろから声を掛けられた。やはり女に見えてるんだな、とブルーメは思いながら振り返ると貴族の子息風の小綺麗な格好をした男がまじまじとブルーメを見つめ手を取る。
「ああ…何て美しい。横顔も美しかったが、正面はそれにも増して美しい。お嬢さん、私とぜひお茶でも…」
「俺は男です」
手を振りほどきブルーメが男に言い捨てる。
男はなにを言われたかわからない顔をして、可愛いねと呟きながら再度ブルーメの手をねっちょり握る。心無しか鼻息が荒く、ブルーメに身体を擦り寄せてくる。
「止めてくださいっ!気持ち悪いっ」
ブルーメが握られた手を荒々しく振り払うと、男は生意気な平民めと、さっきまでの下心まんまんな態度はなんだったのかと呆気にとられるくらいに怒りに満ちた赤い顔をして拳を振り上げた。
なんて幸先悪いんだとブルーメはぎゅっと目を閉じて両手を顔の位置まで上げ身体を固く竦めた。




