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銀の突き匙亭の新名物 〜全部お任せいたします 食堂魔工具その3

「あっ、美味っ」



思わず口から零れでた。本当に美味い。


あの合格発表から一週間。面接試験まであと数日。

 

俺は銀の突き匙亭で、新メニュー開発に付き合っていた。






「熱っ、煮込みが最後の一口まで出来たてみたいだ」

「このエールも氷より冷たいぞ」



新顔の客たちが驚いた顔をする。


大量に作った保温皿は、ツノブーブの煮込みをずっとアツアツのまま食べられると驚くほど評判が良い。

簡易冷却装置で冷やしたエールも大人気だ。



銀の突き匙亭は基本、女将さん一人で回しているのでメニューは豊富じゃない。


煮込みをメインに据え、サラダやキチキチ卵焼きなど作り置きがきくもの、コーメ料理に炒めもの何品か。



嬉しいことに、ここ数日で煮込みとエールの噂が噂を呼び、新規客がどっと増えた。


他のメニューも食べてみたいという要望も増え、最初は渋っていた女将さんも料理の腕を褒められると徐々にその気になっていったのだった。



問題は、人手である。



慣れないながらもブルーメが手伝っているうちはいい。

けれどそれも「ずっと」は出来ないだろう。


「人の代わり、か……」

 




次の日、ブルーメはバケツ片手に銀の突き匙亭に現れた。


右手のバケツには砂と石。左手の指の間には液体の入った2つの小瓶。 

ズボンのポケットは小さな丸い膨らみが重なりパンパンだ。



「おや、ブルーメ早いね。って、どうしたんだい?髪も服も葉っぱと木屑だらけじゃないか。」


朝からひどい格好のブルーメに女将さんが大きな声を出す。



「女将さん、要らない木樽と、もう捨てるって言ってた不燃ゴミ、貰っていいですか?」



心配する女将さんを他所に、不燃ゴミから壊れた銅鍋の蓋とホコリを被った蒸留器を拾い出すと、魔石クズをあるだけバケツへ放り込んだ。



そうして食堂の隅を陣取り、工作を始めた。


タンタン、トントントン、ガリガリ……ブシュュゥ…ボン!!

 


「ちょっと、店を壊さないでおくれよ!」


不穏な音に女将さんが叫ぶ。




次の日の夕方ごろ、それは完成した。


「できた!うん、なかなかいい出来」


鉄粉と炭だらけの手でブルーメは鼻を擦った。




「……何なんだい?ブルーメ。これは」


訝しがるように女将さんが不格好なそれを眺めまわす。



不格好なそれ、銅鍋の蓋が被せられた木樽、には瓶やら蒸留器の銅管やらがつけられていた。

底には木箱。木箱には鉄屑や炭にまみれた魔石クズが納められている。 

側面に付けられた樋と、その先にバケツ。



ブルーメは最後の仕上げにと銅鍋の蓋を開け、小瓶の液体を数滴垂らし、バケツの砂を一掴みバサッと入れる。


ブルーメは満足げに頷く。


ますます訝しげな顔をした女将さんに、まるで気づかないかのような良い笑顔でブルーメは答えた。



「皿洗いから乾燥まで、全部お任せヤッタローです」






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