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銀の花が降ってきた日 ライモンド視点
あの日、俺の目の前に、それはそれは美しい銀の花が、唐突に降ってきた。
手が、印象的だった。
一纏めにしたさらさらな銀の髪、雪のように白い肌、吸い込まれそうなほど大きな青紫色の瞳。
花のような美少女だと思った。
抱きしめたらすっぽりと腕の中に収まりそうなほど小さく華奢な身体、それなのに、手だけ骨ばってとても大きい。
アンバランスで、やけに印象的だった。
そんな美しい花に絡む男を目にして、思わず身体が動いてしまった。
いつもなら、こんなふうに事を荒立てない。
花の声は思ったよりハスキーで、自分と同じ性別だと気付くのに時間はかからなかった。
聞けば、魔工士だと言う。
ああ、あの骨ばった大きな手は技師の手だ。
人差し指と中指の筆ダコはそれが本来の指の形や固さであるかのように自然だ。
彼の体内を美しく循環する銀色の光がまるで音楽のようだ。
あの手が、どんなふうに幾何学模様をなぞるのか、骨ばって長い指はどんなふうに自分の作品をさわるのか、あの手が指が俺をなでたならどんなふうに。
思わず、触れたくなった。
銀の花に。
偶然を必然にしようと、決めた。




