第9話:予習してきた魔物の情報
亜炉麻と出会った翌日。
俺と護愛はお互いに初挑戦となる7階を目指していた。
1階と2階は次のフロアへと続く階段まで直行。
襲い掛かってきたゴブリンのみを撃破。
3階と4階も前回ほど慎重には探索しなかった。
ゴーストは接近してきた個体のみを撃破。
ゾンビは完全に無視。
リビングアーマーは魔石狙いで視界に入った分だけ撃破。
スケルトンはゴブリン同様、襲ってきた個体のみを返り討ちにした。
前回と探索方針を変えたのは、護愛の成長によるところが大きい。
護愛のレベルが10を超えた今、ゴーストから不意打ちを受けてもさほど危険はない。
ゾンビは体力の割に経験値が少ないし、新フロアを探索する前にMPをあまり消費したくない。
誘導する手間もできるだけ省きたかった。
5階は前回と同じ手順で探索を進めた。
リビングソードはまだまだ危険と判断したためだ。
ガーゴイルだって油断していい魔物ではない。
6階は前回探索した時点ですでに舐めプしていたも同然だ。
ガーゴイルの数も5階よりずっと少ない。
あまり慎重になる理由がなかった。
そして7階に到着。
前日と違ってMPは7割以上温存できているし、時間はまだ15時前後だ。
探索の効率化に成功した証だ。
「護愛、このフロアの魔物について予習してきたか?」
まずはやってこいと言った予習の確認だ。
無知を脱却するにはある程度自分で学んでもらわないと困る。
「はい!」
「よし、ならば予習してきた内容を話してみろ」
「分かりました」
予習してきたことは疑っていない。
ただ、情報を適切に拾えるとは思っていなかった。
「ちょっと待ってください」
護愛はカバンからメモ帳を取り出し、最初の1ページ目を開く。
「マミー。これといった特徴なし」
「まあ良し」
あまりにも雑な説明だが、間違ってはいない。
火属性と光属性に弱い特徴はあるが、アンデット系の魔物ならほぼ共通したものだ。
わざわざそこを指摘するなど、ただの揚げ足取りでしかない。
「デモンダイス。クッションに便利。柔らかい面、硬い面、温かい面、冷たい面があり、気分に合わせた座り心地を選べる。倒すと即座に破裂してしまうので、普通に戦っていたらテイムできない。まずは近くでギャンブルなどの運試しをして興味を引くことが大事。そうすれば力を示さなくても従ってくれる」
何で従えたときの情報だけをまとめてるんだよ!
魔物のことを予習するのはあくまで危険な目に遭わないためだろ!
予習の目的を根本的に分かっていない。
しかも微妙に腹立つのは、俺でも調べられなかった情報が混じっていることだ。
目の前でギャンブルすれば興味を引けるなんて聞いたことがない。
「論外。情報は正しいと思うが、身の安全を守ることに全く繋がらない。しかも今の護愛は魔物使いじゃないだろ。それなのに魔物使い向けの情報を拾ってきても意味がないだろ!」
俺には有益な情報だったけどな。
「うっ……」
俺の調べた情報によれば、デモンダイスは各面ごとに異なる特徴を持っている。
一の面は全てが弱点でそこを叩けばゴブリンも同然の雑魚。
逆に六の面を叩けば全耐性高めで、リビングソード以上の攻撃力を誇る。
二と五の面は標準的な攻撃と耐性。
三の面は火を噴き、氷に弱い。
四の面は氷を噴き、炎に弱い。
視点が違うだけで護愛の説明した情報と大体一致する。
だから情報そのものが間違っているとは思えない。
「で、唐傘小僧は?」
「えーっと、これも魔物使い向けの情報です」
「今日はもうそれでいいよ。とりあえず調べた内容を話せ」
「分かりました。えーっと、唐傘小僧。周囲に雨を降らせるが、その雨水は人体に一切の害がない。シャワー代わりにできるから超オススメ。ダンジョンでセックスしても事後処理に困らない。ただし、進化させると降らせる雨水の質が変わっちゃうから要注意」
「護愛、お前の情報源って亜炉麻だろ?」
「はい」
「やっぱりな。あいつの知識は正しいと思うが、要点を全く押さえられていない。今度からはきちんとスマホで調べろ」
魔物使いの視点でまとめられたふざけた内容。
その割に情報精度が低いとは思えないし、検索しても出てこないことまで含まれているのだ。
もう発信源は亜炉麻以外にあり得ないと思ったよ。




