第5話:倫理意識とルッキズムは両立する。
カタカタカタ!
カタカタ!
スケルトンたちが俺たちの元へ戻ってきた。
その後ろには2体のリビングソードがいる。
護愛と話している間に引き連れてきたようだ。
「護愛、エアガンでリビングソードを撃ち落とせ」
全身刃のリビングソードは高い攻撃力を誇り、多くの探索者に深い傷を負わせてきた。
報告されていないだけで死傷者も多数いるだろう。
しかし、あまり耐久力はない。
とりわけ射撃、刺突に弱く、エアガンで撃てば簡単に撃ち落とすことができる。
「はーい」
とはいえ、リビングソードは宙に浮いているだけでなく、身体の面積が小さい。
動きも素早く、慣れないうちは攻撃を当てることが難しい。
パァーンパァーン!
パァーンパァーン!
パァーンパァーン!
案の定、護愛は攻撃を上手く当てられない。
「ちょっと貸せ」
「は、はい」
俺は護愛からエアガンを取り上げ、代わりにリビングソードへと発砲した。
パァーンパァーン!
パァーンパァーン!
スケルトンが攻撃を受けた瞬間は動きが鈍るのだ。
そのタイミングを狙えば、当てるのは難しくない。
カンカンカン……
リビングソードたちの動作は止まり、地面へと転がった。
「テイム!」
「テイム!」
俺はすかさずリビングソードたちを従えた。
リビングソードは攻撃力と素早さが高い反面、耐久力の低い鉄砲玉のような魔物だ。
この魔物を起用するということは、死にやすい魔物に経験値を分散させるも同然。
稼いできた経験値ごと殺されてしまう可能性が高い。
そうと分かった上で起用したのは、そのリスクを上回るだけの処理速度を期待できるからだ。
「リビングソードどもは3メートル以上距離を取れ!」
全身刃の魔物だけに誤って触れてしまえば怪我をする。
普段は距離を取っておくのがベターだ。
護愛は宙を舞うリビングソードをじっと見つめている。
鍛冶の素材にしたくてたまらないのか?
「こいつらが生きている間は溶鉱炉に入れるなよ」
「フェルザーさんじゃないんだから、そんな酷いことしないですよ!」
俺の所有物に手を出すことはなさそうだ。
安心したよ。
「ああ、そうそう。リビングソードを再現した武器を作るならダンジョンの外に持ち出すなよ」
「呪われるんですか?」
「いや、そうじゃない。銃刀法違反で捕まる」
銃刀法はダンジョンの素材と鍛冶スキルで作ったものだろうと適用される。
そのため、剣を武器にする探索者はほとんどいない。
「はぁ、バカらしい」
いや、世の中そんなものだろ。
護愛は警察や法律に何らかの不信感があるのか?
あまり警察不信を拗らせると反グレのカモにされちゃうよ。
「戻ってきたようだな」
ガーゴイルの処理を済ませてきたのだろう。
指示を出していたゴーストたちが戻ってきた。
「先へ進むぞ」
「はーい」
5階に降りてきてから約15分間、俺たちはずっと階段付近で待機していた。
ダンジョン内では通信状態が悪く、スマホで情報を調べられない。
生産スタイルに切り替えたら、魔物が言うことを聞かなくなってしまう。
安全、かつ労力を抑えられるのはいいが、どうしても暇な時間が増えてしまう。
効率的に時間を使えないのはもどかしい。
「あれ、あの石像って……」
探索の最中、俺よりも先に護愛がその姿に気づいた。
毛のない猿のような風貌。
尖った耳。
オブジェクトのように静止しているさま。
間違いなくガーゴイルだ。
「ああ、ガーゴイルだな」
「さっき倒すようゴーストたちに指示してましたよね? なのにまだ残ってるってことは、待遇の悪さに耐え切れず手抜きを……」
何でそうなる?
……というか、ゴーストへの待遇は比較的良いだろ。
「俺が倒すよう指示したのは、通路にいるガーゴイルだけだ」
近くで倒すガーゴイルを残しておかないと、従える前に消失してしまうからな。
さすがに二度は同じやらかしをしない!
※魔物使いにスタイルチェンジした初日はやらかした。
「ゴーストども、あのガーゴイルに奇襲を仕掛けろ!」
視界に映るガーゴイルは1体だけ。
従えるには打ってつけの個体だ。
ゴーストたちは壁の中をすり抜けて、ガーゴイルの背後に回り込む。
そのまま時間を掛けることもなく、闇魔法でガーゴイルを襲った。
その数秒後、ガーゴイルは地面へと転がり落ちた。
「テイム!」
起き上がったガーゴイルは俺の目の前でばっさばっさと羽ばたく。
そしてしっかりと俺の目を見つめてコクンと頷いた。
忠誠を誓う意思表示だろうか?
なかなか利口そうな魔物だ。
高い防御力と飛行能力を兼ね備えたガーゴイルは石像になりすますこともできる。
暗殺者としての活躍も期待できるわけだ。
もっとも、初期ステータスはさほど高くない。
育成が進まないうちは浮遊しているだけのスケルトンと言っても差し支えない。
「ガーゴイル! そこのスケルトンを経験値にしてもいいぞ」
俺はさっそく経験値を与えるため、スケルトンを餌にするよう誘った。
ガーゴイルはコクンと頷くが、行動を起こさない。
従えた魔物は経験値にできないということだろうか?
「フェルザーさん、その子は頑張ってくれましたよ」
「それが?」
盾役として見た場合、ガーゴイルはスケルトンの上位互換なんだよ。
繋ぎとしての役目を終えた今、次の担当にバトンタッチさせるのは何もおかしいことではない。
「それがって……」
家具を買い換えたら古いものは使わなくなるから処分する。
俺はよくある家庭の判断を魔物に適用しただけだ。
カタッカタッ! カタッカタッ!
2体のスケルトンが護愛のほうを向いて踊り出す。
こいつら、俺を差し置いて護愛に媚びを売っていやがる。
そんなにバラされたいのか?
「う、うわっ! わ、私何かしちゃいました? ふぇ、フェルザーさん、なんとかしてください!」
でも残念だったな。
その醜い外見では好意を伝えても怖がられるだけだ。
護愛のルッキズムぶりを舐めないほうがいい。
そして俺の公平ぶりに感謝するといい。




