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効率厨の魔物運用論 ~人も魔物もどう扱うかは投資価値で判断する~  作者: ファイアス
第1章:幼き探索者見習いに時間を投資する

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第17話:効率的なレベル上げは繰り返してこそ

 護愛はこれまでに人型の魔物をたくさん倒してきた。

 ゾンビ。

 スケルトン。

 マミー。

 いずれもアンデットで外見は醜悪。

 生きている人間とは程遠い。

 そのため、倒すことに罪悪感がなかった。


 しかし、魔法陣から現れた魔物は違う。

 全身綺麗で神秘的、何より知性を感じた。


「この人がウンディーネ……」


 護愛はためらっていた。

 この人を、ウンディーネを攻撃してもいいのだろうかと。


「経験値……経験値……」


 ウンディーネを倒そうと言ったのは護愛自身だ。

 今更投げ出すわけにはいかない。

 だから理性の枷を外すため、必死に自己暗示をかけた。

 目の前のウンディーネは単なる経験値と、何度も何度も自分自身に言い聞かせることで。


 護愛は剣を手に取り、戦いの構えを見せる。

 それなのにウンディーネは何も動きを見せない。

 まるで心の迷いを察知しているかのようだった。

 何もしない沈黙の時間が続く。


「あっ、あわわわ!」


 その長い沈黙は突如として破られた。

 身体のバランスを崩した護愛は剣を握ったまま前進。

 直後に転倒し、握っていた剣がウンディーネの顔面に直撃したのだ。

 ウンディーネは戦闘態勢に移行。

 二人の戦いが始まった。

 起き上がった護愛は剣を拾う。

 その瞬間、ウンディーネは口から水のレーザーを吐き出した。


「ぶぶぶぶっ!」


 ジェット噴射のような水が護愛の顔面にぶちまけられる。

 喉を詰まらせたように苦しむ護愛。

 だが、それは最初だけだった。

 咄嗟の防衛本能はすぐに収まり、ダメージがないことを自覚。

 そしてチャンスだと思った。

 前方がきちんと見えないこの状況は、相手の油断を誘えるからだ。


「うっうっああーー!」


 護愛はもがき苦しむ素振りをしながら剣を振り回し、再びウンディーネの頭部に重い一撃を叩き込んだ。

 水のレーザーは止まり、よろけるウンディーネ。

 トドメと言わんばかりに護愛は剣を再び振り下ろす。


 ザッ!

 魔力で生成された水の盾が護愛の剣を止める。


「!?」


 次の瞬間、ウンディーネは攻撃に転じ、水の槍で護愛の胸部を突き刺した。

 即死してもおかしくない一撃。

 それなのに痛みを全く感じない。

 水耐性100%のおかげだ。


「えぇっ!」


 安心したのも束の間。

 今度は足元から間欠泉が吹き上がり、護愛の身体が宙に打ち上げられた。

 その数秒後、ドサッという音と共に地面へ叩きつけられた。


「いったー……これは聞いてないよ」


 落下の衝撃だけは無効化できなかった。

 とはいえ、軽い痛みが走っただけだ。

 護愛は改めて物理法則の違いを実感する。

 何せ、高さ4メートルほどまで打ち上げられたのだ。

 普通なら死んでもおかしくない。


「はぁはぁ……」


 大したダメージを受けていない護愛だったが、疲労は蓄積されていた。

 対するウンディーネはダメージが蓄積されていた。

 一見すると互角の戦いだ。

 だからこそウンディーネは気づかなかったのだろう。

 落下の衝撃以外ではダメージを与えられていないことに。


 二回目の間欠泉が吹き上がる。

 護愛はこの時を待っていた。


「やーーーーーーー!」


「!!!!!!」


 落下の勢いを利用した護愛がウンディーネの頭部を狙い、剣を振り下ろす。

 ウンディーネは咄嗟に水の盾を生成したが、その勢いに耐え切れず消失。

 決定的な一撃を与えることになった。


「や、やりました!」


 歓喜の声を上げる。

 それとほぼ同時に閉ざされていたボス部屋の扉が開く。

 護愛は律文の元へ駆け寄る。

 ウンディーネを倒した喜びを伝えるために。


 ◆◆


 開かれた扉の向こう。

 魔法陣の描かれた部屋の中心。

 そこに立っていたのは護愛だった。

 その隣には白目を剥いたウンディーネが横たわっている。

 どうやら無事、勝利を収めたようだ。


 ボス部屋に入ったときの時刻は15時35分。

 現在時刻は16時12分。

 経過した時間は37分。

 決して短い時間ではない。


「律文さーん! ウンディーネを倒せましたー!」


 護愛が駆け寄ってくる。


「見れば分かるよ」


「えへへっ」


「じゃあ、すぐにステータスを見せてくれ」


「えっ?」


 何を驚いているんだ?

 ウンディーネを倒して効率良く経験値を稼ぐのが目的だろ?

 だったら、その効率の良し悪しを共有するのは当然じゃないか。


「い、今出します!」


 名前:魔乃(まの) 護愛(もりあ)

 メインレベル:20

 スタイル:鍛冶師

 スタイルレベル:17

 HP:79 / 99

 MP:63 / 88

 力:46

 防御:27

 魔力:32

 魔法防御:48

 素早さ:35

 免疫力:3


 取得済みスキル

 鍛冶(専)

 出力アップ(専)

 両手打ち(専)

 手加減打ち(専)

 ファイアボール(汎)

 アイスニードル(汎)

 バースト(汎)

 ヒール(汎)

 ステータスクリア(汎)

 メンタルクリア(汎)

 シャイン(汎)


 鍛冶レベル:5


 固有特性

 好奇心旺盛で飽き性な衝動


 状態:疲労

 累計経験値:17,991

 次のレベルまでに必要な経験値:2,124


「どうですか?」


「ほう、これは効率が良い」


 レベル15だった護愛が一気に20まで上がったのだ。

 これを効率的と言わず何という。

 獲得した経験値は推定1万ほどだ。

 かなり時間がかかったとはいえ、倒す価値があったことは間違いない。


「10分くらい休んだらもう一戦いける?」


「えっ? ……もう一戦?」


「ウンディーネと再戦するんだよ。これだけ効率良く経験値を稼げるんだ。周回しないのは勿体ない」


「あっ、途中でボス部屋を抜け出したのって……」


「そういうことだよ」


 さすがの護愛でも理解できたようだな。

 そう、俺が途中でボス部屋を抜け出したのは、ボスと何度も戦うためだ。

 通常、ボスと戦う権利は一人一回しかない。

 倒せば二度と出現せず、負ければ死ぬ。

 これがボス部屋本来の在り方だ。


 しかし、討伐未経験者がいればボスはすぐに姿を現す。

 たとえ室内に討伐経験者が滞在していてもお構いなしだ。

 俺はその仕組みを利用するため、途中でボス部屋を抜け出した。

 ボスを倒したタイミングで室内にいなければ、部屋の外から支援していようと討伐実績が認められない。

 つまり再び俺がボス部屋に入れば、ゴーレムとウンディーネと再戦できる。

 非常に効率的なボス周回ができるというわけだ。


 37分で約1万の経験値──俺と二人で倒しても各5000の経験値だ。

 レベル20で得られる経験値効率とは思えないほどだ。

 しかも37分という経過時間は護愛がレベル15だったときの成果だ。

 次回はもっと短縮できること間違いない。


「次の一戦からは経験値を吸わせてもらおうか」


「えっ?」


「いつもお前にやらせていることを俺がやるんだよ。エアガンで一発パーンとな」


 水の盾でBB弾を弾かれようと、当てさえすれば経験値の獲得条件は満たせる。

 利用しない手はない。


「あ、ついに私、律文さんの役に立てるんですね!」


「ははっ、そういうことだよ」


 投資してきた時間のリターンを得るタイミングがやってきた。

 これからの数日間、しっかりとレベルを上げさせてもらおうじゃないか。

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