第18話:固有特性に合わせた効率化を図るため
護愛と共にウンディーネの討伐周回を繰り返すこと3日間。
合計18体ものウンディーネを倒した俺はレベル30にまで成長した。
そのステータスがこれだ。
名前:赤穂 律文
メインレベル:30
スタイル:魔物使い
スタイルレベル:30
HP:289 / 289
MP:365 / 365
力:44
防御:70
魔力:91
魔法防御:68
素早さ:36
免疫力:18
取得済みスキル
テイム(専)
魔物召喚(専)
魔物送還(専)
魔物強化(専)
魔物硬化(専)
招集命令(汎)
探索者感知(汎)
魔物進化(専)
ファイアボール(汎)
アイスニードル(汎)
バースト(汎)
従魔
ゴーストLv21 ×2
リビングソードLv18 ×1
ガーゴイルLv19 ×1
デモンダイスLv19 ×1
状態:普通
累計経験値:116,861
次のレベルまでに必要な経験値:6,640
魔物たちのレベルはほとんど上がっていない。
ボス周回に参戦していないのだから、これは当然の結果だ。
不可解なのは護愛のレベルがあまり上がらなかったことだ。
そもそも本来獲得できるはずの経験値を獲得できていない。
ウンディーネ1体あたりの経験値は約10,000。
俺と山分けしているので、護愛が獲得すべき経験値は約5,000だ。
その経験値を18体分獲得すれば、累計獲得経験値は約90,000だ。
しかも護愛は周回前に初回の1体を一人で倒している。
そのため、護愛の累計獲得経験値は約100,000なければおかしい。
それなのに護愛の累計獲得経験値は未だに約55,000だ。
どう考えても計算が合わない。
「護愛は何できちんと経験値を獲得できてないんだ?」
本人だって分からないだろうな。
「『好奇心旺盛で飽き性な衝動』のせいです」
「何それ?」
というか、原因を分かっていたならさっさと伝えろよ!
損しているのはお前自身だからな?
「最近習得した固有特性です」
……思い出した。
それは護愛がウンディーネを初めて倒した時だ。
あの時開示させたステータス欄には、確かに謎の固有特性が追加されていた。
まさか成長を阻害する固有特性だったとはな。
「どんな特性か教えろ」
「興味関心に比例して獲得経験値が増減するんです」
まるでインゴットライン工をやりたくない言い訳だな。
ボス周回もとっくに飽きていたのだろう。
文句こそ口にしなかったが、早く先に進みたい願望がひしひしと伝わってきたよ。
「効率的な成長マニュアルを拒絶しているのか?」
初めて倒す魔物。
初めて使う装備。
初めての倒し方。
手探り中のスタイル。
倒してみたい魔物。
欲しい素材を持っている魔物。
こういった条件があれば、獲得経験値が増加するのだろう。
逆に周回や単純作業は獲得経験値を減少させてしまう。
まるで俺の方針に対するストライキだ。
俺の掲げる効率的な成長論を特性一つで論破できるもんな。
「ち、違います!」
はいはい、建前建前。
反射的に否定しているところが説得力ないんだよ。
とはいえ、責めてもどうしようもない。
「しばらくお前一人でダンジョンに潜ってみろ」
護愛の興味関心に合わせていたら、今度は俺自身の成長効率を落としてしまう。
それでは本末転倒だ。
だったらバラバラに行動したほうがいい。
護愛だってもうレベル26になったんだ。
ある程度はソロでも探索できる。
「えっ……?」
「俺のペースに合わせていたらできないことだってあるだろ?」
護愛は単純作業が嫌いで、地道な努力ができない。
けれどもその好奇心で様々な経験を積めるタイプだ。
遊んでいるうちに才能を開花させるタイプと言い換えてもいい。
その才能を開花させるなら、はっきり言って俺は近くにいないほうがいい。
「それは……はい……」
見限られたと勘違いしているのか?
俺はお互い効率良く成長できる選択をしたいだけだよ。
「安心しろ、仲間関係を解消するわけじゃない」
「そ、そうですよね」
とりあえず理解してくれたなら良い。
「このダンジョンのソロ探索は7階まで許可しよう」
一人で潜らせるとはいえ、俺は管理をやめるわけじゃない。
完全フリーにしたら、死地へと突っ走りそうだからな。
「許可した範囲を超えて探索したら、その時はまた鞭でぶっ叩く」
「あれは……もう嫌です……」
嫌がってくれないと困るよ。
抑止力にならないからね。
「活動範囲を広げたくなったら、まずは俺に相談しろ。その時の状況に応じて対応する」
「分かりました」
護愛の知識や対応力は正直まだ信じていない。
その前提で定めた活動範囲が7階までだ。
「あっ、魔物を従えるのだけはNGな」
どんなスタイルで探索したっていい。
どんな装備を作ってもいい。
ゆっくり進もうが、ゴミを拾おうが構わない。
でも魔物を従えて探索することだけは許可できない。
無駄なコストをつぎ込んだ挙句、切り捨てられなくなるのが目に見える。
どれだけレベルが上がっても自己管理能力は身に付かないからね。
それはお前の母親が証明している。
◆
【やっほー】
その日の夜、亜炉麻からLI〇Eが届いた。
護愛のソロ探索について、何か言いたいことがあるのだろう。
【やっほー】
俺は本来こんなノリで返す人間じゃない。
あくまで亜炉麻の信頼を維持するためのキャラ作りだ。
ノリを合わせてやっているに過ぎない。
【護愛ちゃんに飽きちゃったの?】
この女は恋愛、というか性欲絡みでしか考えられないのか?
【そんなわけないだろ】
【じゃあこれからも仲良くしてくれるってことでおっけー?】
【当たり前だ】
ようやくリターンを得られるようになったんだ。
このタイミングでポイするはずがない。
俺は投資の仕方を変えただけだ。
直接的な指導から、管理するだけの形へとな。




