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効率厨の魔物運用論 ~人も魔物もどう扱うかは投資価値で判断する~  作者: ファイアス
第1章:幼き探索者見習いに時間を投資する

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第14話:上位生産者への道は地味でつまらない

「おお、約束通り来てくれたんだね。それじゃ早速受け取ってくれ」


 ダンジョン7階。

 スク水フェチのロリコン変質者は鼻息を荒くしながら護愛に水着を手渡した。


「ありがとうございます」


 護愛は何の忌避感もなく受け取る。

 水着は二着あり、サイズはどちらも変わらない。

 乾かしている間のもう一着ということだろうか?


「それじゃお着換えよろしくー」


「はーい」


 変質者に催促された護愛はその場で服を脱ぎ始める。


「えっ……えっ……」


 変質者は唖然とする。

 着替えは物陰に隠れてするものだと思ったのだろう。

 常識的な感覚がない護愛を甘く見ていたようだな。


 裸体は見せても減るものではない。

 だから俺は制止しなかった。

 誰も迷惑しないのだからな。


「着替え終わりましたー!」


「お、おー」


 護愛は明るい表情でスク水姿を披露する。

 鞭で叩かれた直後の陰鬱な感情は吹き飛んだようだ。

 変質者はそんな護愛をまじまじと見つめる。


「もういいか?」


「う、うん。というか、目の前で脱がせたのは……」


「俺の指示じゃないよ。護愛が世間知らずなだけだ」


「……安心したよ」


 高額なサービス料金を請求されると思ったのか?

 俺は違法なぼったくり店の経営者じゃないんだ。

 ハニトラを仕掛けて稼ぐような真似はしないよ。


 ◆


 変質者との取引を終えた後、俺たちはダンジョン9階に足を踏み入れた。


「護愛、このフロアに出現するファイアピラーの特徴は分かるな?」


 まずは昨日と同じように魔物の予習状況を確認する。


「はい。炎を撒き散らす柱で防御力の高い魔物です。でも灯された炎を消すと、柱そのものが脆くなって簡単に倒せるんですよね」


「ああ、完璧な回答だ」


「やった!」


 満面の笑みだな。

 暗記してきたならともかく、メモ帳に情報をまとめただけなんだ。

 調べることくらいできて当然と思ってほしい。


 このフロアではファイアピラーの他、新たに三種類の魔物が出現する。

 スケルトンソルジャー。

 スケルトンウォリアー。

 スケルトンランサー。

 いずれも武器を持つようになっただけのスケルトンだ。

 すでに見知った魔物も同然。

 こいつらに関してはわざわざ予習の確認をする必要もない。


「ああ、そうそう。このフロアにいる間、護愛には鍛冶作業をしてもらおうと思う」


「楽しみです!」


「……水を差すようで悪いが、くっそつまらない単純作業だと先に伝えておく」


 長時間にわたって同じ作業をずっと続けるのだ。

 楽しめる要素は微塵もない。

 この単純作業を楽しめたらもはや才能だ。


「えー……そもそも何を作るんですか? 8階までに一つも素材を拾ってないですよね?」


「鉄のインゴットだよ」


「9階で鉄鉱石が採掘できるなんて情報なかったですよ」


 よく予習しているじゃないか。


「スケルトンどもの武器をインゴットにするんだよ」


 スケルトンソルジャー。

 スケルトンウォリアー。

 スケルトンランサー。

 いずれも鉄製の武器を持っている。

 その武器を強奪して分解すれば、インゴットの素材が確保できるのだ。


「スケルトンたちの持つ武器ってレアドロップですよね?」


「強奪すれば100%の確率で手に入る」


「……従えたスケルトンたちから武器を奪うんですか?」


 護愛は「また酷いことをするんですか?」と言いたげな目だ。

 下等生物の武器を再利用してやるんだ。

 その行動は慈悲深い心があってこそだろう。


「正解! ……と、言いたいところだが、今回はもっとシンプルな方法を取る」


 強奪方法は二つある。

 そのうちの一つは護愛が言った通り、従えてから武器を奪い取る方法だ。

 この手順も悪くないのだが、従えたスケルトンの後始末がめんどくさい。

 倒す(野生)、従える、武器を奪う、倒す(従魔)という手順を──つまりスケルトンを二回ずつ倒さなければならない。


「その手順は今から見せてやる」


 俺は近くの小部屋に入る。


「デモンダイスは六の面で俺たちを守れ。攻撃する必要はない」


 その部屋にいた魔物へ対応すべく、デモンダイスに護衛の指示を出した。

 俺は懐から鞭を取り出し、襲い掛かってきたスケルトンソルジャーに応戦した。

 狙いは右手──いや、その手で握っている武器だ。

 パチーン!

 鞭が右手首に直撃する。

 その手は力を失い、握られていた剣は床へと転がった。


「叩き落とした武器はガーゴイルが回収して護愛に渡せ」


 倒した魔物はドロップアイテムを除き、一定時間が経過するとその全てが消滅する。

 所有していた武器だって例外じゃない。

 だが、倒す前に奪い取ってしまえば話は別だ。


 パチーン!

 パチーン!


 室内にいた残りのスケルトンも武器を強奪してから撃破。

 奪った武器はすぐに護愛の近くへと置かれた。


「俺はこんな感じで武器を回収するから、護愛はインゴットを作り続けろ」


「分かりました」


 護愛は早速作業を開始した。


「デモンダイス、このフロアではお前だけが頼りだ。引き続き護衛を任せる」


 スケルトンたちは斬撃に強く、闇属性が通らない。

 そのため、ゴーストは全く役に立たない。

 さらにリビングソードも劣勢を強いられる。

 ガーゴイルには運搬作業を任せたため、戦力として扱えるのはデモンダイスしかいない。

 手持ち戦力との相性は最悪だ。

 そのせいで俺自身が鞭を振るい、武器を叩き落とすしかなかった。


「テイム!」


 魔物たちを倒し回っている最中、俺は1体のスケルトンランサーを従えた。

 第二の運搬役だ。

 ガーゴイルだけでは運搬作業が間に合わない。


 パチーン!

 パチーン!

 パチーン!

 パチーン!

 パチーン!


 ファイアピラーはともかく、スケルトンどもは俺がほぼ一人で倒している。

 もはや魔物使いの戦い方ではない。


「ステータス!」


 魔物たちや護愛に経験値を分散させることなく、9階の魔物を倒しきったのだ。

 さぞかしレベルが上がったことだろう。


 名前:赤穂(あこう) 律文(りつふみ)

 メインレベル:21

 スタイル:魔物使い

 スタイルレベル:20

 HP:168 / 168

 MP:220 / 220

 力:36

 防御:52

 魔力:65

 魔法防御:45

 素早さ:23

 免疫力:13


 取得済みスキル

 テイム(専)

 魔物召喚(専)

 魔物送還(専)

 魔物強化(専)

 魔物硬化(専)

 招集命令(汎)

 探索者感知(汎)

 魔物進化(専)

 ファイアボール(汎)

 アイスニードル(汎)

 バースト(汎)


 従魔

 ゴーストLv16 ×2

 リビングソードLv14 ×2

 ガーゴイルLv17 ×1

 デモンダイスLv18 ×1

 スケルトン?Lv16 ×1


 状態:普通

 累計経験値:22,630

 次のレベルまでに必要な経験値:2,515


 たくさん経験値が入ったものの、レベルはそれほど上がってはいない。

 単純に必要経験値が多すぎる。


 ……というか、「スケルトン?」って何だよ!

 従える前に武器を奪ったせいで、スケルトンランサーと認識されなかったのか?

 もうスケルトンランサー(笑)でいいだろう。


「おっ!」


 純粋に喜ばしいこともある。

 ついに魔物進化のスキルを習得したのだ。

 進化させれば大きくステータスが伸びる他、新たなスキルを習得することもある。

 魔物使いには欠かせないスキルだ。


 目に付く魔物を一掃した俺は作業を続ける護愛の元へと戻る。

 その近くにはまだ20本以上の武器が積み上がっている。

 作業が全然進んでいない証だ。


「も、もう運んでこないでください」


 奪ってきた武器を捌ききれない護愛は泣き言を口にしていた。


「無理です! もう無理です!」


 単調な作業をずっと続けるのはやはり大変なようだ。

 俺だってやりたくない。


「これ以上は増えないから安心しろ」


「はぅー……」


「俺は10階を探索してくる。護愛はそのままここで作業を続けろ」


 倒し損ねた魔物がいたとしても、このフロアの魔物なら護愛一人で倒せるはずだ。

 心配する必要はない。


「な、なんとか追いつけるように頑張ります……」


「いや、追いつくとか考えず作業に集中してろよ」


 護愛の作業はまだ3分の1も終わっていない。

 この進み具合だと、全てを加工し終えるまでに2時間はかかる。

 インゴットを換金して得られる金額は全部で2000円ほど。

 ※ダンジョン産の鉄は、普通の鉄と市場価値が異なる。

 俺と二人で分配すると時給は約500円だ。

 各都道府県が定める最低時給の半分未満。

 それでも探索初心者には良い稼ぎなのだ。

 この現実を突きつければ、護愛だってもっとレベルを上げたいと渇望するだろう。

 ……インゴットライン工は効率的に鍛冶レベルを上げる模範解答なんだけどな。



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