春名:野球部の部室、初めて入った
校舎の裏を少し歩いて、吉成君と一緒に歩く。
グラウンドの側には、運動部の部室が幾つか並んでる。
でも、入った事はない。
授業以外でグラウンドに行くことってほとんどないから、外からたまに見るくらい。
だから、部室に入るって、なんだか新鮮な感じ。
「あ、そっちじゃないよ」
「え?」
「そっちも部室なんだけど、ドライヤーはグラウンドの向こうの部室」
「野球部って部室が二つあるの?」
「そうそう」
──知らなかった。
昔は野球部って、今よりもずっとたくさん人が居たんだって。
それで、今通った運動部専用の部室と、それとは別にグラウンドの端っこにもう一つ部室があるって教えてくれる。
体育の授業のとき、あの小さな建物はなんだろうって思ってたけど、部室だったんだ。
「それじゃ、どうぞ」
「失礼します」
少し歩いて、もうひとつの部室についた。
吉成君がドアを開けてくれたんだけど、中に入ると、──なんていうか、凄く知らない場所って感じ。
窓はあるけれど、埃が溜まってるし、外の様子がほとんど見えない。
だからこんなに暗いのかな。
バッドとかユニフォームとかがおいてあるけど、大分古そう。
壁に小さい鏡があるけれど、これも凄く汚れてる。
「ごめんなー、掃除滅多にしてないから、ちょっと汚いだろ」
「ううん、大丈夫。ドライヤー、借りてもいい?」
「ちょっと待ってねー」
──バタン!
ドアが閉まる音がして、一気に薄暗くなる。
「あ、ごめん、ドア締まると暗いよな」
「……うん、少し。開けてもらってもいい?」
この部屋、天井に電気が無い。
それに、空気の流れが止まって、独特の埃っぽさと、汗臭い感じがする。
「んー、開けたいところなんだけど、もう部活終わりの時間だからさ。ここ使ってるのバレたらまずいんだ」
「え、じゃああたし出るよ」
ドアの方に向かおうとする──けど、吉成君があたしの前に立つ。
「いや、鍵を閉めておけば大丈夫だから」
「でも──」
「5分くらいで終わるでしょ?」
「そう……だけど」
本当はダメなのに、鍵をかけて……って、なんだか落ち着かない。
それに、こんなに薄暗かったら、やりづらい。
「それなら早くやってサクッと帰る方がイイって、ほら」
やっちゃおう、って吉成君に促されて、仕方なく鏡の方を向く。
とりあえず鏡の側の机に荷物を置いて、──鏡に映る吉成君が見えた。
戸棚からタオルを取ってくれてる。
「タオル、洗って返すね。少し遅くなっちゃうけどいい?」
「構わないよ」
「ありがと」
やっぱり結構崩れてる。
一回髪の毛解いて、縛りなおした方が良さそう。
……あ、でも解いちゃうと大変だし、ピン外して止めなおせば何とかなるかな?
腕を上げて、一箇所崩れないようにしっかり抑える。
そしてそのままピンを外して──
「ん?」
「ほんと、喜多さん小さいよね」
吉成君が、すぐ後ろからあたしの左手を掴む。




