春名:どうしよう……
丁度校舎の角を曲がったところで、ばしゃっと水がかかった。
「あ、ごめん! 大丈夫?」
「……吉成君?」
「喜多さん?」
そこに居たのは、野球部のユニフォーム来たままの、吉成君。
長く伸ばしたホースで、その辺に水をまいていたみたい。
慌ててホースを下に置くと、あたしの方に走ってくる。
「うわー、結構濡れちゃったじゃん、ごめん」
「ううん。まだ暑いし、乾くと思うから」
吉成君は、前にお昼を一緒に食べないかって誘ってくれた人。
春臣と食べるからってお断りして、それからほとんど話すこと無かった。
クラスも違うから、あんまり顔を合わせることもないし。
「花火大会行くんだ?」
「うん」
「藤田とでしょ? 仲いいよな」
「うん」
ハンカチ持ってきて良かった。
右側の太腿辺りからびしょ濡れになっちゃったのを、ぎゅ、ぎゅって押さえるようにして拭いてみる。
大丈夫、とは言ったけど、結構濡れちゃったな。
春臣と会う前に乾かすのは、ちょっと難しいかも。
ドライヤーとか無いし、……仕方ないよね。
「それ、ほんとごめんな」
「ううん、大丈夫」
「でも風邪引くかもしれないし、良かったら部室来ない? タオルあるからさ」
「大丈夫だよ」
一年生だから最後まで残って後片付けしてたんだろうな。
野球部は新入部員が少なかったみたいで、今でも部員を募集してる張り紙が購買の近くに貼ってある。
「いや、まずいでしょ。せっかくの花火大会なのにさ」
「んー……」
「責任感じるしさ」
「偶然だから、気にしないで」
あたしもぼんやりしてたのが悪かったんだもん。
何となく水音してたような気もするけど、気付かなかったのはやっぱり浮かれてたからかもしれない。
初めての花火大会だし、春臣に買ってもらった浴衣だし。
──って、髪の毛も崩れちゃってそう……
「あ、多分ドライヤーもあると思うよ」
「ほんと?」
「多分。先輩が使ってたのみたような気がするし」
だから、ってもう一度誘ってくれる。
ドライヤーがあるなら、浴衣も乾かせるし、髪も直せるよね。
今から急げば……うん、間に合うと思う。
「じゃあ、借りてもいい?」
「それじゃ、行こうか」
「うん」




