春名:春臣に会う前に、ちゃんと
「よし、出来たわよ」
ふう、と溜息をついたところでママがそう言った。
顔を上げてみると、キレイにまとまってる。
「ありがとママ。浴衣、崩れてない? 大丈夫?」
ママにお礼を言って立ち上がる。
イスに座ってセットしてもらってたんだけど、それでも着崩れしてないか心配。
くるくる周りながらママに見てもらう。
「大丈夫よ。忘れ物は無いわね?」
ほっとして、もう一度持ち物を確認する。
お財布もあるし、スマホもある。
他にも必要なものは持ったし、大丈夫。
時計を見ると、なんとか予定通り。
これなら、春臣がつくより早く、学校につけそう。
「うん。それじゃあたしもいってくるね」
「はいはい。気をつけていってらっしゃい」
ママにそう言うと、あたしも家を出た。
足はまだ少し痛いけど、ゆっくり歩けば大丈夫。
体重かけたりしなければ何とかなる。
その辺も考えて、早めに準備したんだもん。
*****
「よかった、春臣まだ来てない」
春臣のことを、先に待っていたかったのもある。
けれど、できればもう一回髪型とか、浴衣着崩れしてないかとかもチェックしたかったんだ。
歩いている間に、もしかしたら少し乱れちゃったかもしれないしさ。
「んっと……」
鏡を出して見てみると、少しだけ後ろ側が気になる。
ピン、もうひとつ留めた方がいいかも。
鏡を見ながらじゃないと難しそうだから、トイレに──と思ったけど、
「……って、開いてないよね」
夏休みだしこの時間。
校舎は閉まっていて、入れそうに無い。
「困ったな──」
あちこち見回して、思いついたのは外のトイレ。
そこなら鍵とかもないし、部活の生徒の為に解放されてるはず。
日陰にあるから冬は物凄く寒いけど、夏は結構涼しい。
あまり人目につくところじゃないのもあって、時々煙草くさい事もある──んだけど、夏休みだしわざわざここに吸いに来る人もいないよね。
待ち合わせは正面玄関の前。
時間はまだ15分位ある。
少し急げば、髪を整えても、5分前には戻ってこれると思う。
「うん、そうしよう!」
着崩れしないように気を付けながら、校舎の裏側にあるトイレに向かう。
自転車置き場には何台か自転車が置いてある。
もう部活はどこもやってないみたいだけど、部室とかで打ち合わせとかしてるのかな。
それか、おきっぱなしにしてあるか、かな。
誰も居ない校舎を、外から見ながら歩く。
なんだか不思議だよね。
あたしは部活とかしてないから、休みの日に学校に来るって滅多に無い。
しーんとしてて、なんかいいな。
流石に夜とかは怖いのかもしれないけど、この位の時間なら平気。
あんまりこの辺歩く事無いから、新鮮──
「きゃあっ!」




