第十一話 Sī vīs pācem, parā bellum. 其のニ『父の為』
CEIって、なんだか意味深な呼び方?
とか思ってみたり。
はてさて、何か裏があるのでショーか。
(-.-)y-., o O
◆中央都市シデン
白き建物。美しく自然と調和している。
それでいて機能美も兼ね備えている。
この地の代表“トノ”が執務を行う場。
現在の“トノ”モレウ。
紅蓮が訪れた。米沢から、直ぐに。
モレウ
「ご無沙汰してます」
紅蓮
「板についてきたな」
モレウ
「この街に相応しくあろうと
もがいています」
紅蓮
「謙遜だな」
秘書らしき者が、お茶を用意している。
紅蓮
「この街はどうか」
モレウ
「私は評価する“側”では、ありません」
「この街も、私も評価される“側”です」
紅蓮
「ならば、どのように評価されている」
モレウ
「より良く生活出来ている」
「そういった声が聞こえてきます」
紅蓮
「及第と見てよさそうだな」
「ところで」
紅蓮の視線が鋭くなった。
「CEIを、どう見る」
モレウ
「豪奢ですな。そして規模」
微笑みながら
「まだ本来の役割に達していない」
湯呑みを手にとりながら
「と、いうことでしょうか」
茶をすする。
紅蓮
「話が早いな」
満足そうな笑み
「今回は、その件だ」
勧められた茶を手にして
「大量に人材を連れてくる」
茶は呑まない。
「寝泊りする施設が要る」
「そこで一日中、学ばせろ」
モレウ
「厳しそうですな」
まだ要点が掴めない。
紅蓮
「生まれついた文化は尊重する」
顔を近づけ
「しかし、礼儀作法は身につけさせる」
姿勢を正し
「起床から就寝まで、だ」
「仔細は、ここに記してある」
「早急に取り掛かってくれ」
ここまで聞き、モレウは概要を掴む。
モレウ
(大きな国を創る。ということ、か)
紅蓮
「宜しく頼む」
要件が済むと、紅蓮は立ち去った。
モレウ
(期待に応えられるよう努めます)
“トノ”は、既に姿を消した男を
黙って見送るように、暫く立っていた。
そして、この後。
少しずつ、少しずつ。人が集まる。
日本国中の、
訛りの違う者。
目鼻の大きな者。
浅黒く無口な者。
どこか和人に似た異邦人。
食えずに口減しをしていた農村。
凍てついた大陸の村。
クラたちが訪れた村。
アイヌの地よりも遥か北の村。
ある者は噂を聞き。
ある者は“草”から。ある者は信頼を得て。
CEIへと集まった。
集まった者たちが、ここで学ぶこと。
それは、甲斐塾と変わらない。
違っているのは、全寮制。
起床から就寝まで、
礼儀正しく、規則正しく。
理想郷を創る者へ。
その基礎を学ぶ。
出稼ぎの者。家族移住者。
基礎を学び、実践して身につける。
◆米沢
紅蓮。
例の件の結果を聞く為に訪れた。
“粟の巣の変”
外交の行き違いから、
畠山義継は強行手段をとった。
◆米沢近郊
冬の気配。
空気は、張り詰めている。
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屋敷。 静かだ。
だが――どこか、歪んでいる。
面会は、終わった。
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玄関口。
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輝宗
「遠路、ご苦労であった」
見送る。主として。
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義継
「……」
応えない。
緊張が走る。
その一歩。 距離が、詰まる。
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次の瞬間。
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刃。 喉元。 同時。 周囲。
家臣たちが、動く。
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遅い。
囲まれている。
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輝宗
「……ほう」
理解は、一瞬。
義継
「ご同行、願おう」
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静かだ。
だが――逃げ場はない。
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周囲。既に、配置されている。
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畠山勢。
誘い出された。
ではない。
“ここまで来ていた”。
義継
「貴様は良い友人だった」
輝宗は、睨みつける。
義継
「あのような仕打ち」
「貴様が悪いのだよ」
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◆別所・林中
風。 草。 揺れる。
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潜む影。
黒脛巾組。
動かない。待つ。
ただ、一点を。
(……来た)
合図は、無い。
だが――全てが繋がる。
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◆道中
輝宗。
縛られている。だが――歩く。
その背。
崩れない。
前。
義継。
周囲。
敵。
その時。
遠く。 気配。
視線が、動く。
林の奥。
いる。
息子。
伊達政宗。
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対峙。
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空気が、凍る。
誰も、動けない。
その一瞬。
輝宗
「撃て!!」
響く。
政宗
「――っ」
一瞬の迷い。
輝宗
「独眼竜が、舐められてどうする」
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断ち切る。
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父が。 命じる。
「撃て!!政宗ぇっ!!」
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涙。
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だが――
政宗
「……撃て」
低く。
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鉄砲隊。
構える。 火。
轟音。 煙。
一斉射撃。
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世界が、白く弾ける。
肉が裂ける音。 骨が砕ける音。
倒れる。
畠山勢。
そして――
輝宗も。
崩れる。
煙。 火薬。
視界は、潰れる。
その中。
“動くもの”がある。
音が、しない。 影。
縛めが、切れる。血に見えるもの。
だが――違う。
引く。 担ぐ。 消える。
誰も、見ていない。 煙が晴れる。
そこにあるのは―― 死体。
そう見えるものだけ。
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場面、切り替え。
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◆米沢
静かな部屋。
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紅蓮は、静かに座している。
対面には、
重定(竹中半兵衛)
紅蓮
「首尾は」
重定
「運に恵まれました」
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間。
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紅蓮
「構えるな」
重定
「……では、少しだけ」
茶を、置く。
重定
「大殿は、事前に備えておられた」
紅蓮
「防いだか」
(あの御仁に銃撃に耐える術が…)
重定
「ええ」
それ以上は、言わない。
紅蓮
「痕跡は」
重定
「残しておりませぬ」
紅蓮
「敵は」
重定
「“終わりました”」
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静か。
だが――十分。
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紅蓮
「……そうか」
(一掃した…そういう事か)
目を細める。
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評価。
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紅蓮は何も言わずに
(見事だ。“今孔明”は伊達じゃない、な)
立ち上がった。
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名は、飾りではない。 実である。
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紅蓮は、背を向けて
「次に向かう」
それだけ。
重定は、頷く。
戦は、終わっていない。
ただ――
一つ、未来が繋がった。
つづく
半兵衛は、いったいどんな策を使ったのか。
魔法無しの策である事は、間違いない。
では、何があるのか……




