第十一話 Sī vīs pācem, parā bellum. 其の一『首都シデン』
シシリ建国。
とうとうやり遂げました。
そして、次は何をやるのでショー
時は移る。 戦は終わらない。
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日の本の国。
本土。
権は、一つに寄り始めていた。
羽柴秀吉。
関白となり、天下を掌に収めつつある。
次は――九州。
南へ。 さらに外へ。
だが。
その流れとは、別の“流れ”がある。
北。
名もなき地より生まれたものが、
静かに広がっていた。
シシリ。
名は、まだ遠い。
だが――確かに存在する。
見えぬ手。 繋ぐ力。
それは、まだ誰も知らない。
そして――
動く。
◆コルサコフ
樺太南端に位置する、第二の拠点。
集う。
新たな地への準備。
本土からは、
黒脛巾組第一中隊、
第三中隊、
第四中隊甲小隊、丙小隊、
を呼び寄せた。
紅蓮は、見渡す。
既に集まっている。確認。
ナギ、クラ、弥七、月叟、つき、荻、
そして、忠太と つぐ 。
――空気が違う。
静かだ。 重い。
紅蓮が、立つ。 視線が、揃う。
「今回の任務だが」
短く、入る。
「新たな地へ向かう」
ざわめきは、無い。誰もが、待っている。
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「そこでやることは一つだ」
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一拍。
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「現地の者と、信頼関係を築け」
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簡潔。
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だが――それだけ。
誰も、問わない。
それが、何を意味するか。
分かっているからだ。
奪うな。 押し付けるな。
入り込め。 繋げ。
これまでと同じ。
だが――違う。 規模が。
誰かが、わずかに息を吐く。
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紅蓮は、続けない。それ以上は、言わない。
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「私は、別行動とする」
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視線がわずかに動く。理由は問われない。
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問う必要がない。
紅蓮が動く時。
それは―― 常に、核心だ。
紅蓮
「では、行くぞ」
紅蓮の転移魔法が起動する。
嘗てない規模の転移。人数、装備。
それらも一息に移す。
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紅蓮
「各自、宜しく頼む」
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転移後すぐ。
ただ、それだけ。
だが。 十分だった。
全員が、理解している。この任務が、何か。
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そして―― どれほどのものか。
静かに、散る。 声は、無い。
ただ、動き出す。
それぞれの場所へ。 それぞれの役割へ。
新たな地。
まだ、名も知らぬ場所へ。
そして――
紅蓮は、ひとり目的地へ飛ぶ。
誰もいない場で。
ただ一人。
目を、細める。
(……まだ足りない)
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呟きは、風に消える。
人の手では届かぬ領域。そこへ、踏み込む。
誰にも知られずに。
何かが、動き出していた。
◆米沢
もう冬も間近という頃。
紅蓮は、視察に赴く。
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城下。 人の流れ。 音。 息。
その中に――いる。
気配は、溶けている。誰も、気づかない。
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城下を見る。
流れ。 人。 物。
不審な、或いは、違和感を探る。
(……悪くない)
整っている。
だが――
(足りない)
その時。
背後。
「来たか」
振り向かない。
分かっている。
「お待ちしておりました」
安倍重定。
その目は、静かだ。だが――深い。
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「現状は」
紅蓮が問う。
「滞りなく」
即答。
「伊達の内も、外も、問題はありません」
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一拍。
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重定
「……ですが」
空気が、変わる。
紅蓮の視線が、わずかに動く。
「話があるか」
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「はい」
短く。
「火急に」
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沈黙。 場所を変える。
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奥。 人のいない部屋へ移す。
重定から、このような話の切出し方は、
まず記憶にない。
あまり良い話ではない。と想像はつく。
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重定が、口を開く。
「輝宗様が、危うい」
断言。
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紅蓮は、動かない。
「……ほう」
「内か。外か」
重定
「内です」
即答。
「既に、動いております」
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重定の声は、静かだ。
だが――切れている。
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紅蓮は、目を閉じる。
思考する。記憶を。
(……来たか)
開く。
「“粟の巣”だな」
言い切る。
重定の目が、わずかに細まる。
「ご存知でしたか」
「ああ、知っているさ」
短い。
それ以上は、語らない。
重定も、問わない。
必要がない。
紅蓮
(小次郎への配慮か……)
「どう動く」
問う。
試すように。
重定は、間を置かない。
「救います」
断言。
「確実に」
その言葉に、揺らぎは無い。
「だが」
一拍。
「痕が残れば、全てが崩れます」
事実。
紅蓮は、わずかに笑う。
「ならば、残すな」
即答。
沈黙。
それだけ。 だが――十分だった。
紅蓮
(輝宗殿……どこに置く…か)
「……よろしいのですか」
確認。
「任せる」
紅蓮。
「全てだ」
視線が、重定に刺さる。
「お前の裁量でやれ」
重い。
だが――信頼。
重定は、わずかに頭を下げる。
「承知」
顔を上げる。
その目は――変わっている。
軍師の目。
いや。 それ以上。
“今孔明”の目。
「黒脛巾組も、使わせていただきます」
「当然だ」
紅蓮は、背を向ける。
歩き出す。
「結果だけを持って来い」
それだけを残して。 止まらない。
振り返らない。
その背を見送りながら。
重定は、静かに息を吐く。
(……試されたか)
だが――迷いは無い。
策は、ある。 手も、ある。
足りぬものは――無い。
ならば。 やるだけだ。
誰にも知られず。 何も残さず。
救う。
それが――この戦だ。
◆樺太
空は、高い。
澄み渡る。 雲は、薄い。 光は、冷たい。
珍しい程の秋晴れ。
だが――冬は、すぐそこだ。
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その下に
広がる。 都市。
シデン。
白い。 美しく整っている。
街の印象は、欧州の都市を思わせる。
だが――それだけではない。
線が、走る。 道。
直線と、緩やかな曲線。
自然を、断たない。
だが――従わせている。
街の中心には、高く構える建造物。
石と、木と、鉄。
この地には、不釣り合いな精度。
塔。広場。道は、そこへ収束する。
誰が見ても分かる。
ここが、中心だ。
その上に
はためく、 白。
その中に――紫。
一閃。
雷。
旗は、揺れる。 風を、受けて。
強く。
都市は、動いている。
人。 流れ。 音。
商人。 運ぶ。 交わす。
言葉は、混ざる。
アイヌ。 和人。 異国の言葉。
だが――止まらない。
通じる。 通じさせる。
それが、ここだ。
中央都市 シデン
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足元には泥が無い。地下に水は流れている。
臭いも、無い。 気づかない。
完全なる下水処理。
建物は、調和を保つ。
街全体が様式美を纏う。
異質。
だが――馴染んでいる。
日本ともアイヌとも違う光景。
機能美。様式美。自然との調和。
人は、疑わない。
それが、“当たり前”だからだ。
遠くに見える。
蒸気。
白い煙が、上がる。 低く、唸る音。 鉄の塊が、走る。
都市と外を繋ぐ流通。
システムとして確立している。
そして―― ある区画。
静かだ。
整然と聳える建物。三階。広い。
人が、出入りする。
だが――騒がしくはない。
中央教育機関。 CEI。
(Central Educational Institution)
ここで、育つ。
名もなき者が。 役を持つ者へ。
国家を、回す者へ。
声は、漏れない。
だが――確かに、積み上がっている。
そして――
一人。 歩く。 紅蓮。
止まらない。迷わない。視線だけが動く。
見る。
(……出来ている)
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評価。
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だが――
(まだだ)
足りない。
これは、過程。完成ではない。
もっと、先がある。
この都市は――その為の、器に過ぎない。
紅蓮は歩く。
中心へ。 旗の下へ。 その奥へ。
白き建物が
静かに、佇む。そこに――
“トノ”がいる。
つづく
◎中央教育機関(CEI)
甲斐塾に通っていなかった方達を対象に創立。甲斐塾からの転入も可。
基本的には、
甲斐塾と同じことをしています。
① 交渉(会話+文書)
•言葉で損しない
•書いて残す
→ 契約の概念
② 算術
•分配
•比率
•蓄積
→ 「どれだけ得たか」が見える
③ 産業
•生産性向上
•効率化
この三教科が必修科目です。
CEIでは副教科に、化学、科学、物理。
そして、裏の教科もあるとか。
教わったことは、誰かに教える。
教える実績を積むと評価されます。
◆甲斐塾
各集落に公民館を建てます。公民館の名前は、集落名 公民館。外観は見るからに現代の建築様式、二階建て。二階には、幾つかの会議室、和室です。
一階は小さな講堂。二階の一室は、教室として使われる。教えるのは三教科。
ランク別に学習出来るシステム。希望者は教員育成科で、教育者を育成する。ここは、やっつけ。教わったことを、すぐに他人へ教える。これの繰り返し。教員科の優秀な者が、ランクアップしたクラスを受け持つ。ランクは、番付と呼ばれ。
番付外から順に
序ノ口、序二段、三段目、幕下、と上がる。ここまでが教員養成員と呼ばれ。教えても報酬はない。幕下を卒業すると十両になれる。十両から上は禄取と呼ばれる。十両で実績を積むと教頭に昇進。
教育は無償で得られます。朝から夕方まで、コマごとにあり、どこから出席しても早く帰っても良い。朝早く来ると朝食がでます。夕方最後までいると夕食がでます。これは、日頃の感謝として、取引とは別に紫電へと持ち寄られた食糧を活用したものです。
CEIでは、更にレベルの高い育成が出来ます。下級でも一定レベルに達すると、希望地または、希望産業の地で自立出来ます。
和人でない方達は、①交渉。が初めの壁になりますね。
CEIには、様々な産業の最新技術、情報が閲覧出来る部屋があります。各地での産業の悩み事や、更なる生産性の向上はCEIに問い合わせると、ここで調べて教えてくれます。
また、導入間近の設備に関する情報もあるとか。




