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第九話 北の大地(ニ)         其の五『建国(Independence Day)』

とうとう国に

いやあ、皆さんの応援のおかげデスっ

 始まりの地は、オハ。小さかった。

集まって、生きる。それだけだった。

やがて、いくつかがまとまる。集落になる。

 まとめる者が要る。決めた。

見て、比べて、選ぶ。それで足りた。



 島は潤い。

さらに増える。集落が重なり、道が通り、

物が巡る。人が行き来する。

まとまりは大きくなり、町になる。

 町長を置いた。

呼び名が変わるだけで、やることは同じだ。

見て、比べて、選ぶ。それだけ。


 元いた島民も、移って来た者も。

よく働き、よく笑った。


 そして、今。町と町が繋がる。

鉄が走り、水が通り、言葉と数が揃う。

 どこにいても同じやり方で回る。

困らない。滞らない。途切れない。

   だから分かる。これは、ひとつだ。


 ならば同じことをすればいい。

新しいことではない。今までやってきた。集落で。町で。それを広げるだけだ。

 町長が集まる。話す。誰がまとめるか。


 集まる場所は、

最初から決まっていたかのように用意される。

遠い者も迷わない。遅れない。

道が導き、刻が合う。

見えない手が、段取りを整えていた。


 話は、まとまりやすい形で置かれていく。

極端な案は自然に退く。

言葉の順が整い、争点が絞られる。

気づけば、同じ結論に向かっている。

“草”が、混じっている。押しつけは無い。

 流れを、整えているだけだ。


 不思議と、あの名は出ない。

紫電を推す声は、聞かれなくなっていた。

誰も禁じていない。ただ、そうならない。

ここは、ここで回っている。

 外から来た者ではなく、

      ここで積んだ者が選ばれる。


 名が、いくつか上がる。働きで比べる。人で比べる。偏らない。


 その中に、一つの名。モレウ。

甲斐塾で教えていた者。

 番付を上げ、十両となり、

          教頭まで上がった。

教えるだけでなく、場を回した。人をまとめ、

言葉を揃え、数を外さない。

 実績があり、人望がある。

  誰もが一度は世話になっている。


 異論は出ない。反対も出ない。

理由は、すでに共有されているからだ。

決め方も同じだ。声を出し、他が頷く。

外れた声は、自然に消える。

残る声だけが、重なる。


 静かに、決まる。


 呼び方が要る。

     「トノ」


 軽く言われ、すぐに定まる。

重すぎず、遠すぎない。

だが中心にある呼び名。島をまとめる者。

     トノ。モレウ。


 副を置く話になる。

流れの中で、自然に一つが選ばれる。

和人だ。しかし、これは想定外であった。

候補に上がる。それは調べがついていた。

 しかし。

外から来て、内に根を下ろし、両方を知る者。

言葉を繋ぎ、取引を整え、違いを埋めてきた。

外との窓口となる位置。

名よりも役が先に立つ。


 想定以上。

島を発展させてきた者同士。打ち解けていた。

支える者。副。それに相応しい。


 初めに、トノは町長を集めた。

     初めにやること。


    「国の名を決めよう」


 誰も驚かない。ここまで来ている。

名が無い方が不自然だ。


 言葉が出る。いくつか。

短く、強いもの。

 別の場所でも、同じ音が口にされる。

離れていても、重なる。

       残るものが、自然に残る。


     シシリ。


 意味を知る者が頷く。本物の大地。

この地から出た名だ。それで、決まる。


 樺太島。独立国家シシリ。


 名が与えられる。形になる。

だが、やっていることは変わらない。

  集め、  整え、  回す。

ただ、それが島全体になっただけだ。



 そして――その日が、記される。

後に、建国の日と呼ばれる。


    1984年6月21日。


 それは、特別な一日ではない。


 いつもと同じように、人が動き、

物が巡り、話し合いで決まった日だ。

 ただ――名が与えられただけだ。


 だが、それで十分だった。



 建国を発したその日、

準備されていた物が掲げられた。旗。

 珍しくよく晴れた空に、

美しくはためくのは、国旗。

 

 真っ白な旗に、紫の雷⚡︎一閃。

まさに象徴であった。




 国旗を、空を、じっと見ている後姿。


 この日は、奇しくも

   “あの日”から、丁度 二年であった。



 旗が、はためく。白に、紫の雷。

         風を受けて、揺れる。


 その下で、集まる。町の代表。

その者は町長ではない。分業されている。

各町から、人が出る。言葉を持つ者。

数を扱う者。現場を知る者。


 席が、用意されている。迷いはない。

座るべき場所に、座る。


 話す。各地のことを。余りと不足。

道の詰まり。鉄の遅れ。水の具合。

病の兆し。学びの進み。


 意見が、出る。提案が、重なる。

違いも出る。だが、崩れない。

言葉が揃う。数が合う。


 議する。決め方も、いつも通りだ。

声を出し、他が受ける。

  外れた声は、自然に消える。

    残る声が、形になる。


 だが――最後は、一つに絞る。

視線が、集まる。


    トノ。モレウ。


 聞いている。全てを。遮らない。急がない。


 そして――選ぶ。


    短く。

「これで、いく」

    それだけ。


 反論は、出ない。出せないのではない。

出る前に、収まっている。

そこまでで、整っている。


 名が、付く。


      発布。


 初めて、その形で、外へ出る。


     トノの名で。


 伝わる。早い。鉄で、舟で、人で。

町から町へ、途切れない。


      効く。


 昨日までと同じことのはずが、違う。

 迷いが、減る。

 止まりが、消える。

 後戻りが、無い。


 道が、優先される。詰まりが、ほどける。

荷が、順に流れる。


 偏りは、回される。足りぬ所へ、即座に。

余る所から、迷わずに。


 争いは、裁かれる。長引かない。引かない。

決まりに従う。


 人が、頷く。各地で、同じように。


   「トノの名で、決まった」


 それで、足りる。

繰り返される。何度も。場所を変えて。

同じ言葉が、同じ効きで、通る。

仕組みが、回る。

 人が、回す。

だが――中心がある。


 決める者が、いる。


       トノ。


      モレウ。


 議は、広く。決は、一つ。

それで、滞らない。それで、止まらない。

 それで――国として、動き出す。


 運ばれる。決まる。回る。

各地で、同じように。


   「トノの名で、決まった」

       

           それで足りる。


 貿易では、

やがて――言い方が、変わる。


   「どこから来た」


   「……シシリからだ」


      一拍。


 それで、通じる。

もう、集落の名ではない。町の名でもない。

 ひとつの名で、足りる。それが、残る。



◆海上。


 遠く。影がある。

帆。船。いくつか。噂を、追ってきた者たち。


 近づく。

だが――風が、変わる。波が、立つ。


 静かだった海が、牙を剥く。


 叩く。押し返す。進ませない。


   「……なんだ、これは」


 荒れる。そこだけ。道は、閉じている。

回り込む。別の角度から。

 だが――同じ。荒れる。阻まれる。

入れない。その中で。一筋だけ。

 波が、割れる。静かな帯。

そこを――来る。

  音。 低く。 重く。


      煙。

 鉄の船。

    見たことのない形。


 海を、切る。


      開世丸。


 かつては、運んだ。人を。希望を。

今は――違う。

     止まらない。揺れない。

 まっすぐ、出る。荒れの外へ。

境を、越える。その姿を、見せる。


    「……なんだ、あれは」


誰かが、呟く。近づかない。近づけない。


 理解する。ここは、閉じている。

ただの海ではない。

 ただの土地でもない。

        退く。


 帆が、返る。距離を、取る。

それ以上は、来ない。



 内は、変わらない。外だけが、遠くなる。



    「……シシリか」

誰かが、言う。

 それは、もう。

ひとつの“外”から見た名だった。


━━━

 

 今日も、はためく。

     白に、紫の雷。


 風は、変わらない。

 人も、変わらない。

やっていることも、同じだ。

 集めて、整えて、回す。

ただ――名が、ある。

            それだけ。

 それだけで、足りる。

内は、通じる。外は、遠い。

 境が、生まれる。

越えない。越えさせない。守る、という形で。

 気づけば、そうなっていた。

 誰かが作ったのではない。

 積み重なっただけだ。

 選び続けた、その先にある。

 戻らない。

 戻れない。

 理由は、要らない。

もう――そうなっている。

 国は、生まれたのではない。

   名を、持っただけだ。

 だが。

それで、全てが変わる。




       


       つづく




不勉強で申し訳ないっ

あんまり分かってないのに、少しかじって

描くなんて、良くないデス。

でも、雰囲気が欲しかったんデスぅぅぅぅ

トノって、偉い人

って書いてました。ヤホーで見ました

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