第九話 北の大地(ニ) 其の四『紅蓮商会』
蝦夷地が空き地になったってー
いったい、何が起こるんでしょーか?
一方、樺太には鉄道。
蒸気機関車が走る。樺太の動脈かわ成立。
製鉄業の確立が効いてます。
そして、水道設備の量産。
ついについに上下水道完備ですよー
こんなトコ、世界中どこにもナイヨー
蝦夷地。
小樽港。舟が、離れていく。
人は、もう残っていない。
甲板。風を受ける、一人。
甲斐紅蓮。視線は、北。
米沢で噂を聞いた忍び。
「……出家したらしい」
振り向かない。
「誰が」
「伊達小次郎様だ」
わずかな間。風が、抜ける。
「……そうか」
それだけ。
再び、前を見る。北。状況理解。
力丸は役目を果たした。
もう伊達小次郎を保護する意味は無い。
◆オハ。
人の気配。動き。だが、静かだ。
紅蓮が歩く。止まる。その先に、いる。
力丸。
名は呼ばない。距離だけが詰まる。
「……聞きました。出家した、と」
否定は、無い。それで足りる。
紅蓮は、懐に手を入れる。取り出す。
小さなもの。刻まれた名。
それを差し出す。
「私が出家した、というのであれば」
「この名を、お返し致します」
揺れない。迷いも、無い。ただ、置く。
力丸は、見る。すぐには取らない。
わずかな間。
手に取る。軽い。 だが、確かに重い。
「……そうか」
それだけ。
紅蓮は下がる。振り返らない。
名が、離れる。戻るべき場所へ。
残ったものは、変わる。
森力丸から甲斐紅蓮為成へ。
伊達小次郎から秀雄へ。
呼び名は変わる。
だが、中身は変わらない。
役目だけが、次へと進む。
◆樺太。
この島の前進は、更に拍車がかかる。
音が、走る。
ブフォーーー
シュッ シュッ
鉄の上を、鉄が行く。煙。蒸気。
大地を裂くように、進む。
止まらない。
見たことのないものが、通る。
「……なんだ、あれは」
答えは、いらない。見れば分かる。
速い。 重い。 多い。
紫電
「クックックッ」
「まったく、あやつのやることは……」
積む。人を。荷を。まとめて運ぶ。
道は、繋がる。集落と集落が、途切れない。
オハから、外へ。外から、また別の外へ。
網のように、広がる。
忠太は、立つ。
港を見ていた目が、今は線を見る。
鉄の線。繋がりを、確かめる。
港の整備が落ち着き、鉄道整備の任に就いた。
舟だけでは、足りなかった。
これで――足りる。いや。足りてしまう。
人が、動く。荷が、動く。止まらない。
その間に、立つ者が現れる。
運ぶだけではない。繋ぐだけでもない。
受ける。 渡す。 揃える。
偏りを、無くす。それを、仕事にする。
「……商いだな」
誰かが、言う。
名が、つく。 商人。
頼まれる。任される。預かる。
そして――増える。
持つ者と、欲する者。その間を、埋める。
速い。確かだ。損をしない。
甲斐塾で覚えたことが、ここで使われる。
言葉。数。やり方。全てが、繋がる。
名乗る。
「紅蓮商会」
それだけで、通じる。
疑う者は、いない。既に、知っているからだ。
紫電の名を。
その推薦がある。それで――十分だった。
受け入れられる。あっさりと。
理由は、単純。役に立つ。それだけでいい。
鉄は、止まらない。荷は、流れる。
人は、動く。巡りは、速くなる。
増える。さらに、増える。
もう、戻らない。
その時。
紫電は、いない。
オハを、離れていた。留まらない。
同じものを、別の地へ。
種を、置く。広げる。
国家建国へ。
繰り返す。
誰も、止めない。止められない。
残されたものは、動き続ける。
人が、回す。仕組みが、回る。
それで――足りる。変わる。
静かに。だが、確実に。
この地は、もう――元には戻らない。
⸻
島の発展が止まらない。
水が、通る。汲まない。運ばない。
出る。捨てる。流れる。
溜まらない。腐らない。
気づけば
――それが、当たり前になっていた。
道は、乾く。匂いは、消える。
病は、減る。
「……楽になったな」
誰かが、言う。
頷きが、返る。
特別ではない。
ただ、そうなっただけだ。
⸻
鉄が、届く。
遠くから。まとめて。遅れない。途切れない。
炉が、止まらない。叩く音が、続く。
形が、揃う。
「前より、早い」
「数も、出る」
声が、重なる。
⸻
運ばれる。舟で。鉄で。人で。
止まらない。
紅蓮商会が、受ける。渡す。揃える。
余りを、足りぬ所へ。
偏りを、消す。
「任せておけば、間違いない」
誰かが、言う。
否定は、無い。
⸻
学ぶ。
言葉を。数を。やり方を。
使う。
その場で。すぐに。
損をしない。通じる。増える。
「前より、上手くいく」
「揉めない」
声が、増える。
⸻
集まる。
いくつかが、まとまる。
柵が増え、家が増え、煙が増える。
こうして、島にもたらされた現象は、
急激な速度で広まっていく。
やがて町になる。
また、集まる。道で繋がり、鉄で繋がる。
そして都市になる。
形が、変わる。
広がる。
⸻
「……繋がってるな」
ぽつりと、出る。
「ここも、あそこも」
「同じだ」
頷きが、増える。
⸻
別の場所。
「どこへ行っても、困らない」
「話が通じる」
「数が合う」
笑う。
⸻
また別の場所。
「足りなきゃ、回る」
「頼めば、来る」
「無理がない」
息が、合う。
⸻
声が重なり、どの場所でも、
同じことが聞こえてくる。
知らないはずなのに、揃っていく。
⸻
「……これ、全部か」
⸻
誰かが、気づく。島を、思う。点ではない。
面でもない。
ひとつだ。
⸻
その時。混じる。何気なく。自然に。
「まとめる者が、要るな」
強くない。押しつけない。ただ、置かれる。
「誰が」
「族長たちがいるだろう」
「でも……全体は?」
考える。 黙る。
「この島を、だ」
言葉が、少しだけ変わる。
別の場所でも。
「ひとつにした方が、良い」
「無駄が減る」
「守りやすい」
理由は、単純。感情ではない。実感だ。
さらに、混じる。静かに。
「……治める、か」
誰も、否定しない。
⸻
紅蓮商会は、動く。
表で、繋ぐ。裏で、流す。
言葉を。方向を。
“草”は、置く。火種を。消えない程度に。
⸻
広がる。 速い。 止まらない。
「ここまで来たんだ」
「もう、戻れない」
「だったら――」
一つの形が、浮かぶ。
まだ、名はない。
だが――分かる。
島全体を、治める。
その話が、出る。自然に。
誰かが言い出したのではない。
気づけば、皆が知っていた。
驚くほど、早い。
だが――無理はない。
積み重なっていたからだ。
表では、そう見える。
だが。
整っている。
既に。
あとは――名を、与えるだけだった。
つづく
蝦夷地は?
え?
ほったらかしデスかーー
樺太島に、国が出来る。もう少しで。
紫電が表で働く。恵の象徴。
荻が癒す。救いの象徴。
つぐ が、補助する。
忠太 も、頑張ってマス。
そして………
いよいよ建国の動き




