第九話 北の大地(ニ) 其のニ『良く生きる為』
国造り。少しずつ進んでいます。
力丸の目指す国家とは、どんなものなのか!
なんてねー
朝。
水を、捨てる。家の外。土に、染みる。
⸻
昼。
臭いが、残る。風が、運ぶ。
⸻
夜。
「……またか」
誰かが、顔をしかめる。
⸻
人は、増えた。良いことだ。
だが――残るものも、増えた。
つぐは、黙って聞く。
「流れない」
「溜まる」
「気になる」
小さな声。
だが――増えている。
⸻
守亮は、見ている。
水の行き先を。人の動きを。何も言わない。
⸻
夜。静かだ。
――変わる。
音もなく。人の手もなく。
土が、割れる。細く、長く。線が、走る。
繋がる。家と、家。道と、道。
そして――外へ。
⸻
朝。
水が、流れている。
「……あれ」
昨日まで、溜まっていたものが。無い。
捨てる。流れる。残らない。
「ここに捨てると流れていくぞ」
別の場所でも。また、別の場所でも。
流れる。 臭いが、薄れる。
人は、顔を見合わせる。
「……紫電様の」
誰かが、言う。否定は、無い。
荻は、何も言わない。ただ――見ている。
忠太は、地面を踏む。
「……やりやがる」
小さく、笑う。
守亮は、目を細める。理解している。
だが――口にはしない。
水は、流れ続ける。止まらない。
それは――“整えられた”流れだった。
人は、慣れる。すぐに。
汚れは、残らないもの。水は、流れるもの。
誰も、疑わない。
それが――“当たり前”になる。
◆港にて
荷が、積まれる。
「違う」
声が、止める。
「それじゃ、損する」
男が、眉をひそめる。
「同じだろう」
指が、動く。地に、線を引く。
「ここが違う」
数が、並ぶ。分ける。比べる。
男は、黙る。見ている。
「……ああ」
頷く。
納得する。
周りも、覗く。同じように、見る。
「もう一度」
誰かが、言う。
「ここだ」
繰り返す。ゆっくりと。
◆別の場所。
「その言い方じゃ、通らない」
言葉を、整える。順を、変える。
相手が、頷く。通じる。
見ていた者が――覚える。
「教えてくれ」
声が、増える。頷く。
「……来い」
歩く。連れていく。そこに――ある。
見たことのない、建物。
真っ直ぐな壁。歪みのない形。
「……なんだ、ここは」
答えは、ない。
戸が、開く。
中。
空気が、違う。静かで、暖かい。
音が、よく響く。
通される。奥の部屋。
畳。 低い机。
「ここでやる」
座る。向かい合う。
指が、動く。数を置く。線を引く。
「こうだ」
見る。 分かる。
「……もう一度」
繰り返す。日が、落ちる。
それでも――動かない。
「……よくやったな」
差し出される。食べ物。
「いいのか」
誰も、止めない。
食べる。 笑う。
次の日。また、来る。
その次も。
やがて。人が、増える。
「ここで、いいのか」
頷く。
別の集落。別の部屋。別の机。
教える。 教わる。
日が、落ちる。
「残るか」
残る。
食べる。
⸻
朝。
早く来る者がいる。
「早いじゃないか」
「……腹、減ってるだろ」
出される。
食べる。 座る。 始める。
繰り返す。
それが――日常になる。
人が、教える。覚えたことを。
すぐに。
上手い者が、残る。長く、教える。
「あいつは、上だ」
「まだ、下だな」
いつの間にか。分かれている。
「序ノ口だ」
「三段目か」
呼び方が、生まれる。
また、増える。教える者が、増える。
初めに立っていた者たちは――
下がる。
守亮は、見ている。もう、手は出さない。
つぐは、微笑む。人の声を、聞くだけ。
荻は、静かに、そこにいる。
そして“草”は、混じる。教える。
流す。情報。広がり。残す。
やがて――手は、離れる。
それでも、続く。
「……塾だな」
誰かが、言う。
「甲斐塾」
名が、残る。
朝から、夕まで。来て、帰る。残って、学ぶ。
誰も、強いない。
だが――人は、来る。
知る。 使う。 渡す。
それが――巡る。
数を覚える。言葉を整える。やり方を知る。
教えることは、多くない。
言葉。
数。
それと――仕事。
言葉は、通すため。違えないため。
話す。 整える。 書き残す。
約束は、消えない。
数は量るため。分けるため。損をしないため。
足す。 引く。 比べる。
同じが、分かる。違いが、見える。
仕事は、増やすため。
今あるものを――より良くするため。
育てる。 捕る。 作る。
前より、多く。 前より、上手く。
難しいことは、しない。
使うことだけを、覚える。
それで――足りた。
覚えた者が、教える。
すぐに。
言葉が、広がる。
数が、揃う。
やり方が、残る。
それは――名前がなくても、同じだった。
「言葉、数、仕事……か」
「甲斐塾の三つだな」
そして、気付き始めた。
得る。前より、多く。
「……増えたな」
誰かが、呟く。頷く。皆、同じだ。
だが――
「……もらってばかりだな」
沈黙。
「紫電様に」
否定は、無い。
次の日。
持っていく。魚を。穀を。塩を。
差し出す。
紫電は、受け取る。
「……預かる」
それだけ。
誰も、損をしない。誰も、奪われない。
だが――確かに、渡された。
⸻
さらに、
持ち込まれる。
魚。 穀。 塩。
量は、少しずつ。だが――増えていく。
同じものでは、ない。違うものが、重なる。
紫電は、受け取る。
「……預かる」
それだけ。
置かれる。 積まれる。 崩れない。
番忠太が、見ている。
数ではなく、嵩を。
「……回すぞ」
運ばれる。足りない場所へ。遠い場所へ。
道が、繋ぐ。 人が、運ぶ。
減る。だが――無くならない。
また、来る。また、置かれる。
巡る。
誰も、命じていない。
だが――止まらない。
それは――“流れ”になっていた。
山。 高い。 風が、変わる。
越えない。越えられない。
だが――向こうにも、人はいる。
◆西の地。
空気は、重い。東ほど、柔らかくはない。
だが――凍てつかない。死なない。
地を、叩く音。 鉄。
掘る。 打つ。 運ぶ。
木が、倒れる。
組まれる。 積まれる。
煙が、上がる。
黒い塊が、燃える。赤く、光る。
形が、変わる。鉄になる。
男たちが、動く。
言葉は、違う。だが――通じる。
「……もっとだ」
指で、示す。数で、示す。
理解する。 頷く。
終われば――渡される。
重い。だが――確かだ。
布。 塩。 穀。
そして――金属。
受け取る。数える。合っている。
「……いい」
短い言葉。
だが――満ちている。
また、来る。
誰に言われたわけでもない。
ここには――“得られる”ものがある。
◆東の地。
人が、学ぶ。言葉を。数を。やり方を。
◆西の地。
人が、掘る。打つ。作る。
東は、巡る。 西は、生む。
繋がってはいない。
だが――切れてもいない。
見えないまま。続いている。
預けられる。渡される。 形は、違う。
だが――どちらも、残る。
紫電は、受け取る。
東からも。 西からも。
「……預かる」
変わらない。
それが――基になる。
まだ、名は無い。
だが――支えられている。集められている。
使われている。
確かに――“続いている”。
つづく
インフラ
教育
国造りの根幹かもしれないデスね。
そして、鉱山。
燃料となる石炭。
近代化の象徴、製鉄。
製紙業も始まります。
樺太島。
ここは、200年は文明が先んじている。
逆ガラパゴス?




