↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ならば世界を喰らうまで(旧作品名:新世界の創世者は、魔王ではなく?)  作者: ニャンコ
第三章 開世

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
46/70

第八話 北の大地(一)         其の四『水を撒く』

小樽、オハに上陸。

この世界になかった国造り。

出来るハズのない場所に

ありえない国が

力があるとはいえ、簡単に出来るでしょうか

 北の海。

空は低く、風は重い。


      ゴォォ……


 白い息が、絶え間なく吐き出される。

 足元は凍り、土は硬く閉じている。


 だが――


      ザァ……


 海は、生きている。


⸻


 オハ近海。


 粗末だった入り江に、変化が生まれていた。


 木材が組まれ、

 簡素ではあるが“形”になり始めた構造物。


    番忠太

「ほう……形になってきたな」

    腕を組み、満足げに頷く。


    忍び

「はい。足場は安定しました。

   これで船の接岸も可能になります」


    番忠太

「よし。漁が出来ねば、話にならんからな」


⸻


 海岸。

現地の者たちが、距離を取りながら見ている。


 警戒。

 疑念。

 そして――わずかな期待。


    つぐ、静かに前へ出る。

「……怖がらせるでない」


    番忠太

「おう」


      だが声は大きい。


    つぐ

「声が大きい」


    番忠太

「すまん」


 つぐは、ゆっくりと腰を落とす。

 目線を、合わせる。


    つぐ

「取って食うわけではない」

    柔らかい声。

 布を差し出す。

 厚手の、防寒用の衣。


    つぐ

「寒かろう」


 現地の女が、戸惑いながら受け取る。

指先が、触れる。 冷たい手。


    つぐ

「……生きておるな」


      小さく、笑う。


⸻


 紫電は、少し離れた場所から見ている。


    紫電

「よい」

    その視線は、鋭いまま。

だが、口元は緩んでいる。


⸻


 別の場所。

小さな囲い。地面が、掘り返されている。


    守亮配下の忍び

「ここまでは、予定通りです」


    力丸

「……」

    土を手に取る。

砕けない。 凍り付いている。


    力丸

「では」

    手をかざす。

      ゴ………

 空気が、変わる。

    見えない何かが、地面へ沈む。

      ミシ……

        ミシミシ……

 凍土が、わずかに緩む。


    忍び

「……!」


    力丸

「まだ浅い」

    静かに。

「だが、足りる」


⸻


 別地点。

小さな集落。 煙が、少し増えている。

 粗末だった小屋に、変化。

 補強された壁。

 隙間を塞ぐ布。


    紫電

「どうだ」

    言葉を交わす。

 相手は、まだ警戒している。

だが――

      頷いた。


    つぐ、小さく息を吐く。

「……通じたか」


⸻


 影の中。

火を囲む数人。


    草の忍び

「見たか」


「寒くない布を持ってきた」


「食も、増えるらしい」


      囁き。


「……あの男」


「偉い者、らしいぞ」


      火が揺れる。


⸻


 小樽。

静かな港。まだ、何も起きていない。

 だが――

      船が一隻、また一隻と入る。

 音を立てずに。


      コト……


    紅蓮

「……順調です」


    守亮(通信越し)

「了」


    紅蓮

「だが……」

    視線が、港の外へ向く。

「静かすぎる」


⸻


 オハ。

再び。子供が一人、港の近くに来ている。

 魚を、見ている。


    番忠太

「食うか?」

    差し出す。


 子供、躊躇。


    つぐ

「……大丈夫じゃ」

    静かに。


 子供が、受け取る。  一口。

      目が、変わる。


    番忠太

「はっはっは!うまいだろう!」


    つぐ

「声が大きい」


⸻


 その光景を、少し離れた場所から見る者。


 年老いた男。

何も言わず、ただ見ている。

 その目は――警戒ではない。

      “測っている”


⸻


 力丸は、立っている。

風の中。すべてを、見ている。


   港。   土。   人。


      一拍。


    力丸

(動き出した)


    だが――


(まだ、繋がっていない)


⸻


 波の音。

      ザァ……


 風の音。

      ゴォ……


 人の声。 微かに、増えている。


⸻


 確かに、前に進んでいる。

だがそれは――

        まだ、“点”に過ぎない。

 国家になるには、 “線”が要る。





 北の大地。

風は、変わらず厳しい。


      ゴォォ……


 だが――

人の気配が、増えていた。


 オハ周辺。  港。

木材が組まれ、船が寄る。


      ザァ……


 魚が、上がる。


    番忠太

「よし、いいぞ!」


    つぐ

「声が大きい」


⸻


 別の集落。

地面。黒い土が、露出している。


      湯気。


    民

「……温かい」

    手を当てる。凍っていない。


 その中央に――一本の、案山子。

             粗末な作り。

だが、どこか異質。

分からないが、不思議な力が感じられる。


    民

「……あの男が、置いていった」


    別の民

「“守る”と言っていた」


 少し離れた場所。


    紫電

「うむ」

    腕を組み、満足げ。


    つぐ

「……本当に、効いておるのか?」


    紫電

「知らぬ」


      一拍。


    紫電

「だが、効いておる」


    つぐ

「なんじゃそれは」


⸻


 別の地。

囲い。木で組まれた柵。


 その中――

     羊。

      メェェ……

    民

「……逃げぬ」


    別の民

「囲われている」


 草を食む。生きている。


    紫電

「増えるぞ」


     民、ざわつく。


⸻


 さらに別の集落。

干された魚。積まれた皮。使いきれない量。


    民

「……余るな。どうしたものか」


 そこへ――

    紫電、一歩前へ。

「預かろう」


    民

「……?」


    紫電

「代わりに、これを」

    袋を差し出す。穀物。


    民

「……食べられる」


    紫電

「うむ」


      一拍。


    紫電

「持っていけぬ物は、持たぬ方がよい」


「必要な物に、変える」


⸻


 別の場所。

   別の集落。


    民

「魚はある。だが……穀が無い」


    そこへ、同じ袋。


    民

「……!」


⸻


 さらに別の集落。


    民

「着る物が、足りぬ」


⸻


    別の品が届く。


⸻


 それぞれが、足りぬものを補う。

誰が運んでいるのか。誰が繋いでいるのか。

 明確には、分からない。


だが――


    民

「……あの男だ」


    民

「紫の者」


 噂が、流れる。火を囲み。

夜の中で。


    声

「持ってくる」


「繋げる」


「困らぬようにする」



 影の中。


    草の忍び

「……広がっている」


    別の忍び

「名が、先に行く」


⸻


 小樽。   港。

      コト……

 静かに荷が積まれ、降ろされる。


    紅蓮

「流れが、出来ている」


    配下

「はい」


      一拍。


    紅蓮

「……誰も、逆らわぬ」


⸻


 オハ。


 子供たちが走る。笑い声。

魚を持つ。パンをかじる。


      笑顔。


    つぐ、それを見る。

「……変わったな」


    紫電

「うむ」


      一拍。


    紫電

「良い」


⸻


 遠く。

複数の集落。煙が、増えている。

 灯りが、増えている。

そして――

      それぞれの集落に、

         “違い”が生まれていた。


 ある地は、穀を育てる。

 ある地は、魚を獲る。

 ある地は、獣を飼う。

それぞれが、“得意”を持つ。


 そして、それぞれが、 “足りない”を持つ。



 ゆえに――繋がる。

力丸は、遠くからそれを見ている。


    力丸

(形になっている)


      一拍。


(だが――)


⸻


 線は、まだ細い。切れれば、終わる。


 風が吹く。

      ゴォ……


 波が打つ。

      ザァ……


それでも、人は、もう知ってしまった。

  “繋がる方が、楽に生きられる”


 国家は、まだ無い。

だが――その“前段”は、

       確実に、出来始めている。


じゅんちょー

このまま何事もなく

平和な国造りができますように

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。