実は用意してきたのだが
サージェス視点です。
二着とも着てみてもらい、水色のデイドレスのほうに決めた。
どちらもリーリエには似合っていたが、主催者のことを考えると水色のもののほうが合っていた。
小物もほとんどはそのままでよかったが、耳飾りだけ変更させてもらった。
その際持っているアクセサリーも確かめさせてもらった。
いずれリーリエには宝飾品を贈ることになる。
その時にどのようなものを持っているのかを知っていることは重要だ。
宝飾品は単品で使うものではない。
必ず何かしらと合わせるものだ。
その時に合わせられるようなものがなければ意味がない。
もちろん一式で贈ればそのようなことはない。
贈るつもりは勿論ある。
だがその組み合わせだけでしか使えないというのも問題だ。
それでは侮られることになりかねない。
持っている物をいかにうまく使いこなせるか。
それは女性の武器であり、評価に繋がるものだ。
手の抜けないものなのだ。
それはいずれ。
今回はリボンを贈ることになっている。
「リボンの件ですが」
「あ、はい。ご用意いただけるのでしたね」
「はい。そうなんですが、」
実はグレイスのアドバイスを受けていくつかリボンを持参してきた。
アルノーに合図する。
心得ているアルノーは持っていた箱をテーブルの上に置いた。
「こちらは?」
「実はいくつかリボンを持ってきたんです」
リーリエが軽く目を見開く。
ドレスが決まってからリボンを贈ると言っていたのだから驚くのも無理はない。
「準備がよろしいですね」
その声に皮肉の響きはない。
それにほっとする。
「グレイスが用意していったほうがいいと言ったので」
素直に明かす。
それにリーリエは微笑ましそうな微笑みを浮かべる。
何故だろう?
「そうでしたか。見せていただけますか?」
「勿論です」
アルノーに目線で指示を出す。
頷いたアルノーが箱を開ける。
リーリエが箱をのぞき込む。
「手にとっても?」
「構いません。是非当ててみてください」
「ありがとうございます」
リーリエがリボンに手を伸ばす。
いくつか実際に手に取って確かめている。
グレイスはある程度リーリエのドレスの予想を立ててリボンを見立ててくれた。
おおよそ外れているものはない。
大体どれを使ってもらってもうまくまとまるだろう。
リーリエの顔が綻ぶ。
「どれも素敵ですね」
「リーリエのお眼鏡に適ったようでよかったです」
「どれも素敵で選ぶのに迷ってしまいそうです。さすがサージェス様ですね。ありがとうございます」
そつなくリーリエが私を褒める。
「いえ。気に入ってくれたようでほっとしています」
実際リーリエが気に入った様子を見せてくれたことにほっとしていた。
気に入らないものを使わせたくはなかった。
リーリエなら気に入らずとも私が贈ったものだからと不満も言わずに使ってくれるだろうが、そんなことはさせたくなかった。
「はい。どれも素敵で見ているだけでもうっとりしてしまいます」
口許が綻んでいるので嘘ではないだろう。
だが気を遣わせもしたのだと思う。
私が何か言う前にリーリエはリボンに視線を戻した。
「それにしてもたくさんありますね」
確かにある程度の幅を持たせるために用意したリボンは箱いっぱいに入っている。
用意したリボンが合わないとなると困るので少し多めに持ってきたことは確かだ。
リボンならいくらあっても困らない、というグレイスの助言もあって用意した。
リーリエでもこれくらいなら遠慮せずに受け取ってくれるだろうとも言っていた。
だがさすがに多かっただろうか?
遠慮してドレスに合わせたものしか受け取ってくれないかもしれない。
できればすべて遠慮なく受け取ってほしい。
グレイスに助言を得ながらだがリーリエに似合いそうなものを選んだのだ。
グレイスにはまあまあ合格、と言われたことは黙っておく。
どうすれば受け取ってくれるかと考えを巡らせているとふと閃いた。
先程これからドレスに手を加えると言っていた。
それならば。
「もしドレスの装飾に使えるのでしたらそちらにも使ってください」
「いいのですか?」
「ええ、勿論。こちらのリボンは全て差し上げますので、自由に使ってください」
リーリエなら上手く使ってくれるだろう。
「ありがとうございます」
リーリエは嬉しそうに微笑う。
このようなものが好きなのだろう。
しっかりと記憶しておく。
こういうふうに知って積み重ねていくものなのだろう。
自分が選んだものを喜んでもらえるのも嬉しい。
身につけてくれればさらに嬉しい。
なるほど、こういうことかと腑に落ちる。
婚約者に贈るものを選ぶのは大変なんだと言いながらも楽しそうだった友人たちはこういう気持ちなのだろう。
少し、くすぐったい気持ちもある。
だけど、悪くない。
私はリーリエに微笑み返した。
読んでいただき、ありがとうございました。




