ドレス選び
リーリエ視点です。
喉を潤してもらった後、早速サージェス様にドレスを選んでもらうことになった。
「それで、どちらがよろしいでしょうか?」
ドレスの隣に立って尋ねる。
サージェス様は並べられたドレスからやや離れた位置に立ち、ドレスを見比べている。
どことなく室内には緊張感が漂っている。
それだけ真剣に考えてくれているのだろう。
固唾を呑んでサージェス様の答えを待つ。
部屋は物音一つしないくらいに静まり返っていた。
皆ただサージェス様の言葉を待っていた。
だけど。
何もおっしゃらない。
サージェス様はドレスを前にして深く悩まれている。
はっとした。
サージェス様はわたしのドレスに詳しいわけではない。
まだ婚約者になったばかりだ。
いくら何でもドレスを見ただけで判断できるはずがない。
わたしにどのようなものが似合うかもしっかりは把握していないだろう。
うっかりしていた。
思考を邪魔してしまうかも、と思いながら声をかける。
「ドレスを当てるか着るかしましょうか?」
着替えるのでは時間がかかってしまう。
それならせめてドレスを身体に当てて見せれば参考になるのではないだろうか?
サージェス様の視線がわたしに向く。
「そうですね。お願いできますか?」
「もちろんです」
もしかしたら言い出せなかったのかもしれない。
もっと早く気づいて申し出るべきだった。
反省しながら侍女に視線を向けると彼女は水色のドレスをトルソーから外した。
とりあえずドレスを当ててみようとそちらに向かいかけたところでサージェス様に言われた。
「よろしければ着ていただいても構いませんか?」
「あ、はい。わたしは大丈夫ですよ」
わたしのほうは問題ない。
サージェス様はお時間、大丈夫かしら?
一応確認する。
「お時間のほうは大丈夫ですか?」
サージェス様は軽く微笑んだ。
「大丈夫です。今日は一日空けてありますから」
時間がかかるかもしれないと思ったのかもしれない。
慌ただしく決めることにはならないように空けてくださったのだろう。
わたしのことを丁寧に扱ってくださっているのを感じ、心が温かくなる。
「わかりました。では着替えますのでしばらくお待ちくださいませ」
「はい。急がなくて大丈夫ですので」
「はい。一応選んでおいた小物も合わせてきますね」
小物もこれでいいか実際に合わせてみないとわからないだろう。
身につければ印象が違ったなどということはよくあることだ。
「はい、お願いします」
「小物のほうも変更点があればおっしゃってください」
「わかりました」
「では一度失礼します」
侍女にドレスと小物を持ってもらって部屋を出た。
途中行き合った侍女にお茶を持っていくように頼む。
うちの領のお茶を出すように言ったので少しは楽しんでくれるだろう。
そうだとしてもできるだけ急がなければ。
あまりサージェス様を待たせるわけにはいかない。
わたしは早足で廊下を進んでいく。
読んでいただき、ありがとうございました。




