きちんと選べるだろうか
サージェス視点です。
リーリエから手紙をもらい、ユフィニー家へと再訪した。
ユフィニー子爵夫妻とリーリエに迎えられる。
リーリエの弟とはまだ挨拶をしていないのでこの場にはいないようだ。
いずれ時機を見て会わせてくれると言われている。
その時を大人しく待つつもりだ。
ユフィニー子爵夫妻とは挨拶をして別れた。
気を遣わせたのかもしれない。
リーリエをエスコートして執事の案内で応接室に向かう。
その途中でリーリエが静かに告げた。
「ドレスは一応二着までは絞ったんです」
候補はもう少しあると思っていたから内心で驚く。
「わかりました。似合うほうを選べるように頑張りますね」
柔和な微笑みを浮かべて告げる。
「ありがとうございます。お願いします」
「はい」
緊張感は誤魔化せただろうか?
実は今も緊張している。
理由は今日の訪問理由だった。
手紙が来た時は事前に告げてあったようにドレスが決め終わっているものだと思っていた。
それが手紙にドレスを選んでほしいと書かれていて驚いた。
こういうことは男性が介入することなく決めるものだと思っていた。
男性が介入するのは自分でドレスを贈る時だと思っていた。
いや、男性が女性と一緒にドレスを選ぶことがあるのは知っていた。
だがそれは男性側にこだわりがあるか、お互いに想い合っているかくらいのこと、という認識だった。
まさか一番初めから選ぶことになるとは。
想定外のことに俄に緊張した。
悩むなら合わせるリボンのことだと思っていた。
きちんと選べるだろうか?
下手なことをするとリーリエに恥を掻かせてしまう。
それだけは絶対に避けなければならないことだった。
リボンのことも母やグレイスに相談するつもりだったのだ。
呆れられたりからかわれたりするかもしれないが甘んじるつもりだった。
どのようなリボンにすればいいのかそれさえもわからないのだ。
商会に持ってきてもらったところで並べられたリボンを前にして途方に暮れる自分が簡単に想像できた。
そういう面はできればリーリエには見せたくない。
リーリエのことだから呆れることはないとは思う。
それでもそれとこれとは別の話だった。
できるだけリーリエの前では情けないところは見せたくない。
きっと紳士としての矜持なのだと思う。
紳士としては淑女の前で情けないところは見せてはならない。
見せていいのは身内にだけだ。
だからグレイスや母の手を借りるのに否やはない。
実は今日、リーリエのドレスを選ぶことはグレイスには伝えてあった。
積極的に伝えたわけではない。
どちらかというと知られたというほうが正しい。
知ればグレイスも来たがるかと思ったが、グレイスはゆるりと首を振った。
「初めて衣装選びをするのについていくほど野暮ではありませんわ」
それは、野暮、なのだろうか?
疑問に思っている間にグレイスは続ける。
「いいですか。リーリエ様に似合うと素直に思ったほうを選ぶのですよ?」
真剣な顔で言われた。
だが私は女性のドレスを選んだことがない。
自分のセンスが不安だった。
今まで婚約者を持たないできた弊害がここにも出てきている。
そう思わずグレイスにこぼせばグレイスはころころと笑った。
「大丈夫ですわ。リーリエ様が絞ってくださっていますからそのどれを選んでも間違いはありません」
「そうか」
それを聞いてほっとした。
回想から意識を戻しリーリエを見た。
「もし駄目だと思ったら遠慮なくおっしゃってくださいね。……その時は一から選び直すのに付き合ってもらうことになってしまうかもしれませんが」
「私はリーリエを信じています」
「信じてくださるのは嬉しいですが、サージェス様のお眼鏡に適うかはまた別の問題だと思います」
私は軽く首を傾げた。
「リーリエの身につけているものはいつもリーリエによく似合っています。それでいてきちんと場に合わせられているので大丈夫だと思いますよ」
軽く目を見開いたリーリエはすぐにほっとしたように微笑む。
「ありがとうございます」
お世辞ではなく本心だ。
根拠も示したからリーリエもそれを察してくれたと思う。
緊張している様子だったから、これで少しは気が楽になってくれたらいいのだが。
リーリエの様子を気にしながら執事の後をついていく。
読んでいただき、ありがとうございました。




