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砕け散った初恋の後に、最後の恋をあなたと  作者: 燈華


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ドレス選びのための来訪

リーリエ視点です。

今日はサージェス様がドレス選びのために来てくださった。

応接室に候補を絞ったドレスと小物類は運び込んでおいた。


事前に両親には話してあったので一緒に出迎えた。

弟は誘われて友人の家に遊びに行っているので不在だ。


まだきちんとサージェス様に紹介できていない。

いずれきちんと紹介しなくては、と思ってはいるけれど。


この家の嫡男は弟だ。

幼いからといって挨拶を省くことはできない。


だがまだ正式に挨拶をしていないのでこういう場での挨拶が先というのも場合によっては礼儀に反することになる。

難しい問題なのだ。

だから弟が不在というのは挨拶をしないいい理由になる。


そのうちサージェス様にはいつ挨拶すればいいか相談させてもらうことにしよう。


両親は挨拶だけ済ませるとすぐに退散していった。

きっと余計な時間を取らせないようにしたのだと思う。


サージェス様もお忙しい身だ。

あまり煩わせるのも申し訳ない。


「こちらへどうぞ」


サージェス様を応接室に案内するために歩き出そうとしたところで腕を出された。

エスコートしてくださるようだ。

どこまでいってもサージェス様は紳士だ。

それを無下にする理由はない。


「ありがとうございます」


腕にそっと手を添える。

案内に執事が前に立つ。


「ご案内します」


サージェス様が一つ頷けば執事が歩き出す。

その後に続いて歩き出した。


後ろにはうちの侍女とサージェス様の従者の方がつく。

婚約者とはいえ当然二人きりになどならない。


今日ついてくれている侍女はドレス選びを手伝ってくれた侍女だ。

彼女ならどのようにドレスを選んだかもわかっているので何かあればフォローしてくれるだろう。

それもあって今日わたしについてくれているのだろう。


「お時間を取らせてしまい、申し訳ありません」

「いえ。ドレスを選ばせてもらえるなんて光栄です」


きっとわたしに気を遣わせないためにそのように言ってくれているのだろう。

本当に紳士的な方だ。


それに嫌な顔一つせず、ドレス選びを手伝ってくださる。

人によっては女性のドレス選びに付き合うのは面倒だという方もいるのだ。


ノークス様はご自分で決めたい方だった。

あれは時間を取られたくなかったことと、自分の思い通りに進めることに慣れているからだと思う。

と、今なら冷静に考えられる。


恋に浮かれていたわたしは迷いなく選ぶ彼のことを決断が早くて格好いいと思っていた。

苦い思いが心に広がる。


それを振り払った。

今はサージェス様がいらっしゃる。

ノー……フワル侯爵令息のことを考えるのは失礼だ。


慌てて思考を切り替える。

本当に時間を取っていただいて有り難い。

だけどサージェス様はお忙しい方だ。

あまり時間を取らせないようにしないと。


はっと気づく。

もしかしたらサージェス様はたくさんのドレスの中から選ぶと思っていらっしゃるかもしれない。


わたしが選んだのは二着だ。

少なくて驚く可能性もある。

それならば、と先に告げておくことにする。


「ドレスは二着までは絞ったんです」

「わかりました。似合うほうを選べるように頑張りますね」


サージェス様は微笑んで言ってくれる。

任せてください、ではなく、頑張ります、と言うところがサージェス様らしいと思う。

意外と控え目な方なのだ。

高位貴族なのだからもっと強気な態度でも許される。


フワル侯爵令息は柔和な印象を与えながらも押しが強い一面があった。

それがサージェス様にはまったくない。

もう少し自身の能力をひけらかしても文句など出ないだろうに。


実際優秀な方だと思う。

ノークス様に恋人を宛がう手腕も見事だった。

その後の婚約解消まで持っていく手腕も。


わたしは具体的にどういうことがなされたのかは知らないのだけれど。

この先も知らされることはないように思える。


どこでどう漏れるかはわからないので言葉や文字にしないというのは正しいのだろう。

情報を知る者は最低限に収めるのが最善なのだ。


たとえ漏れたところで今になって難癖をつけられることはさすがにないだろうけど。

社交界での評判は揺れる恐れがある。

それは避けたい。


だから知らされていないことは何の問題もない。


「ありがとうございます。お願いします」

「はい」


サージェス様はきっとドレスを選ぶことには慣れているのだろう。

きっとそつなくドレスを選んでくれるだろう。

いろいろ助言もくれるかもしれない。


そうしてくださると有り難い。

できるだけ早くサージェス様の求めるドレスの方向性を知りたい。


フワル侯爵令息は華やかで品位のあるものを求めていた。

地味な装いで自分の隣に並ばれるのは我慢がならなかったようだ。

もちろん場によっては派手な装いを控える必要はあったが、そういう場でも地味になりすぎないように衣装は選ばれていた。


サージェス様はどのようなものを求めているだろう?


フワル家とトワイト家では求められているものが違うだろう。

フワル家では華やかなものを好んでいた。

トワイト家はどちらかというと品の良さとバランスに重きを置いているように思える。

あくまでもグレイス様たちの装いや屋敷の様子からの推測だけれど。


そういうところにも家としての方針は出るからあながち外れていないと思うけれど。

これからはトワイト家の方針に合わせて諸々揃えていかなければならない。


実は緊張していた。


サージェス様のお眼鏡に適うだろうか?

トワイト家の方針にしっかりと合っているだろうか?


駄目だと言われたら決め直さなければならない。

わたしはそれでもいいのだけれど。

サージェス様に余計な手間をかけることは申し訳ない。


大丈夫でありますように、と願いながら応接室までの廊下を歩いていく。

読んでいただき、ありがとうございました。

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