エルフのダーテ
「随分と甘いですね。それに濃い」「うん。でも初めて飲む味だね」と決して美味しいと言わない二人。とりあえず飲み物をテーブルに置き、街の風景を眺めている。ちなみに二人は、”アカデミックローブ”を着ている。同じように”アカデミックローブ”を着て歩いている人たちもチラホラ見かける。
「あっ! め、眼鏡が!! だ、誰か…。すみません。眼鏡拾って頂けますか! 眼鏡が無いと20cm先も見えないのです」
突然、隣の席の…エ、エルフ!! の少年が、慌てふためいて叫んでいる。しかし…何のコントだろう? 眼鏡は頭に乗せているではないか…。
「あ、あの…眼鏡は、頭に乗せているだけでは?」と恐る恐る言ってみる。
ハッとしたエルフは、両手で頭をペタペタと触り、眼鏡をかけ直す。
「あ、ありがとう。本当に助かったよ。前にね、眼鏡を落としてしまって、拾いたいのに、何処に落ちたかわからなくなって、大変な目にあったんだよ。僕の名前はダーテ。君たちは学園の生徒だね? 」
「はい。わたしはベネツィオ、こっちはウーラです」
挨拶が終わると、学園の話になり裏情報なども教えてもらえた。
「ダーテさんは、生徒なんですか? 何でそんなに詳しいのです?」
「ふふっ。それは秘密だよ。あっ、僕はそろそろ帰らなくちゃならないけど、最後に”杖屋”さんを教えておくね。魔法使いには、”杖を使う派”と”使わない派”がいるんだけど、学園では杖を使う技術も教えるから杖は必要だよ。杖屋もピンキリだからね。ちょうどここから近い商業エリアにあるんだ。歩いて5分ってところだよ。杖屋の名前は”イーグ鎧店”さ、巫山戯ている名前だろう? ちょっと行ってみないかい?」
「でも…お金を持ち合わせていないから」とわたしは断った。
「ふふっ、大丈夫だよ。見るだけなら、それに杖の料金は、授業料に入っているからね。学園で説明があると思うよ。説明を受けた後に買いにくれば良いのさ」
それを聞いて安心したわたしとウーラは、ダーテと一緒に商業エリアの杖屋・イーグ鎧店に向かった。
エルフの顔はとても綺麗で、テイマリアン・サーガに出てくるように耳がピンと尖っていた。
「ふふっ。僕の顔が気になるかい?」
「あっ、ご、ごめんなさい。エルフの人と話すの初めてだから…」
「いいさ。人間界にいるエルフなんて、本当に少数だからね」
そうなのです。なぜか周りの人たちが、わたしたちを遠巻きにして見ているのです。それほど珍しいんだよねエルフって…。
「ほら、見えるだろ、あの看板、あそこがイーグ鎧店だよ」とダーテが指差した時、「おい、邪魔だ! モルベリック男爵のお通りだ!! なぜ退かぬ!!」と道の反対側で、親子と貴族が揉めていた。
貴族…男爵か…私のお父様より爵位が上位…助けるに助けられない…。ぐっと拳を握る。理不尽だ。
「君たちは、ちょっと離れていて」突如、体の周りにグルグルと蔦が巻かれたと思うと、そのまま近くの屋根の上まで運ばれてしまう。
「こ、これって? 魔法なの?」




