観光しよう!
元々、功労者への勲章授与式の数日前に到着するように、日程は計画されていた。わたしとウーラは、都市フェイリスを見学するべく、早速宿を飛び出した。
都市フェイリスは、領主が住まう領主エリアを囲むように、住宅・工業・商業・観光・学園・貴族の6つの内部エリアが隣接し、さらに農業、酪農、林業エリアが内部エリアを囲む。
今回、わたしたちは、観光エリアにいた。とても広い石畳の道は赤や緑の石でアクセントを入れ、右や左に緩やかにカーブして飽きさせない工夫がされていた。中央にはトウカエデが等間隔で植えられて、その間には個性豊かな屋台があり、また道の左右には様々なショップが立ち並んでいた。
「ベネツィオ! 走っては駄目です、それに前を見て!」とウーラは興奮するベネツィオに注意する。
本当は執事マイラドも付いてくる予定だったのだが、勲章授与式の準備で忙しいため、二人で出かけることになった。そこでウーラが宿場村に続き、ベネツィオのお目付け役になった。
「ベネツィオ、手を繋ぎましょう」とギュッと手を握られた。
「ねぇ、ウーラは何が見たい? あっ! 猫亜人だよ!」
「ベネツィオ! 人を指差しては駄目です!」
「あっ、そうだよね。くんくん、何の匂いだろう? 焼きそば? 唐揚げ? おでん? チョコバナナ? 見たことないものばかりだね!」
「だ、駄目ですよ! 昼食まであと少しですから!」
「み、見るだけだよ! あっ! カフェだよ! エリッサお姉様とお茶したときに、一度は行ってみてと言われていたの!」
ハッと思い出す。ベネツィオは所持金を全て盗まれていたのであった。出発する前に冒険ギルドで貯めたお金をお父様に渡そうとして時、銅貨でさえ一枚もなかったのである。パニックになった自分は泣き叫んでいた…嫌な思い出だ。
実はそんなことはない。前にも行った通り、魔法の箱に入っているのだ。
■所持金(自動保存 ⇒ 魔法の箱)
・金貨0枚、銀貨0枚、銅貨0枚
◎金貨1,598枚、銀貨6,143枚、銅貨88,123枚
◎マークは魔法の箱へ自動移動済み
通常、所持金をチェックするために、わざわざステータスなどを見ないし、”魔法の箱”という魔法など所持している者がいないため、全員が盗まれたのだと勘違いしていたのだ。
ベネツィオもイーノーベがいたころは、全部お婆ちゃんが管理しているのだと勝手に思い込んでいた。
「そうか…お金ないんだった…」
落ち込むベネツィオに「ふふ〜ん、お茶ぐらいなら私が奢りましょう!」とウーラがドヤ顔で言った。
「で、でも…」という私にウーラは「友達でしょ?」って言ってくれた。
「うん! ありがとう!!」
ウーラの嬉しい一言で、お金を盗まれた嫌なことなんて、忘れちゃったよ!
比較的空いていたカフェに入ると、エリッサお姉様のアドバイス通りショコラを頼む。それ以外は苦いよって教えられていた。




