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すみません。テイマリアン・サーガを読みたくて  作者: きっと小春
第三章 静かなる狂者の間引き
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衝動

詰め所には人影が少ない。巡回や見張りの交代前後、非番の正騎士達が、剣の鍛錬をするために修練場にいるからである。「先に行って体を解しておけ」とオルベリックに言われ、わたしとエレストの影も修練場にあった。


「このチビ助が、オルベリックさんのお気に入りなのか?」


「はい。ベネツィオと言います」エレストは先輩騎士の質問に答える。


「ほう? 見た所、魔法のローブ? それに魔物を従えている? 本当に剣の達人なのかねぇ?」


「グワハハハッ。そこまで言うなら、ハーブスル、お前が相手してやれよ?」


面白そうなネタが舞い込んできて、暇を持て余していた騎士たちが騒ぎ出した。


「だ、駄目です。オルベリック様からは、体を解しておけと…」エレストは慌てて、その場の雰囲気を変えようとするが、「固ぇんだよ、エレスト坊っちゃんは」とエレストをどかし、わたしの目の前にしゃがみ込む。


「どうした? 怖いのかな? お嬢ちゃん?」煽られたハーブスルも引っ込みが付かない様子だ。


心が乱れ壊れる…。騎士は憎い…。こいつ嫌いだ…。やめろ…殺すぞっ!


「おやめ下さい。今、ベネツィオの心は乱れています。刺激を与えると…誰にも止められなく…」


「煩いんだよ!」とハーブスルを煽っていたボンディスが、エレストを殴りつけた。


「剣を持て、腐った性根を叩き潰してやる。メタフォたちは大人しくしていろ」


怒りが溢れてくる。大好きなエレストを…よくもっ! 許さないっ!!


ハーブスルが剣を構える。「どこからでも、どうぞ」と左手でクイクイと合図する。その言葉に遠慮なく、わたしはダッシュする。予想外の早さなのか? ハーブスルが慌てて腰が引けている。態勢を低く維持したまま、ハーブスルの足元で体をひねり一回転すると、短剣の柄頭で太ももを強打する。


「騎士って、こんなもんなの? 弱すぎる。おい、全員でかかってこいよ」


怒りが止まらない。憎しみに支配される。暴力が愛おしい…。


「やめろ…。ベネツィオを…これ以上刺激するな…」地面から立ち上がるエレストが止める。


「貴様っ!! 騎士を愚弄するかっ!!」ボンディスを始めとする、その場にいた8人の騎士たちが、剣を取りベネツィオを取り囲む。まだ子供でオルベリックのお気に入りということで、手荒には扱えないのだ。取り囲んだ騎士たちも攻めあぐむ。


そんなことは関係ない。ベネツィオは、正面の騎士に向かって斬りかかる。殺気の込められた一振りに、さすがに騎士も反応するが、短剣と剣が触れた瞬間、持っていた剣が宙を舞った。唖然とする騎士の腹部を蹴り飛ばすと、ベネツィオのターゲットは、すぐ横にいた騎士に移る。ベネツィオの短剣が水平に払われる。騎士はバックステップで回避したのだが、着ていた練習具の革の鎧が、スパッと切断されたのだ。


殺す気だった…。騎士たちに衝撃が走る。その小さな女の子は、騎士に囲まれても怯むどころか、本気で殺しに来たのだ。騎士たちに目の色が変わった。こいつは化物だ。


騎士にあるまじき背後からの攻撃。しかも3人同時に…。ベネツィオは振り返ると、剣速順に対応する。一つ一つ丁寧に短剣で剣に触れ、剣を弾き飛ばす。その理屈は何なのか? 物理的な力の法則を利用しているのか、人間の体の仕組みを利用しているのか、それとも魔法的な何かなのか?


剣を弾かれた三人に、ベネツィオの短剣を防ぐ術はない。ベネツィオの視線は、確実に心臓を狙っていた。

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