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すみません。テイマリアン・サーガを読みたくて  作者: きっと小春
第三章 静かなる狂者の間引き
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組み入れ制度

昨年、 王国騎士団第三部隊副隊長レギルス様と共に、大盗賊団・銀の影の撲滅作戦に参加した。元王宮魔法使いイーノーベ様の護衛役として、村長バルベルデの家に足を踏み入れた時、敵の首領である大盗賊団・銀の影の幹部を倒したのが、わずか10歳の女の子だと知った時には衝撃を受けた。その女の子の名はベネツィオ。バルベルデの養女であり、イーノーベ様の保護下にいるほどの逸材。喉から手が出るほど欲しかった。あれやこれや理由を付けて、町まで連れ出してみたものの、蜂蟻などの混乱に乗じて、イーノーベ様の住まう、この村に帰ってしまったのだ。


今年は、王国騎士団第三部隊副隊長レギルス様がいない。去年は下手に動けば、レギルス様にベネツィオを奪われる可能性があったのだ。今年はそんな心配もない。鮭熊の討伐依頼がある一週間前に村を訪れ、ベネツィオを手中に収めるべく、隙きを狙う作戦だったのだが、なぜか…村人と鮭熊が交戦中であった。


私の名はオルベリック。領主イッシュベル侯爵に町の管理を任されたヒルブレッド男爵に功績を認められ騎士爵を与えられた騎士だ。私が成り上がるためには、力が必要となる。そうベネツィオだ。


去年とは違い第三部隊がいないため、私の率いる町の騎士団は、正騎士12名、傭兵58名となる。一応、傭兵にも馬を貸し出し、見栄えは騎士のようにしるのだが…。


「全軍、突撃、村に鮭熊を入れるな!!」


わたしは突撃を指示する。鮭熊の特徴である爪さえも、くっきりと見える距離まで辿り着いたとき違和感を感じる。鮭熊が村を襲っていない? それどころか、何かを中心に渦巻いているではないか?鮭熊ほどの魔物が、騎士団の接近に対して、まるで無防備だった。


「集団に突っ込むぞ!! 敵の布陣を切り裂けっ!!」


無防備な鮭熊を面白いように斬り伏せられた。それも一切の反撃もなしに…。私は見た。その中心で、幼い少女…ベネツィオだ!! ベネツィオが、鮭熊の爪を短剣で優しくいなすと、ベネツィオがテイムする魔物か? うさぎのような魔物が後ろ回し蹴りにて鮭熊をふっ飛ばし、空いた短剣にて、別の鮭熊を切り伏せる。ベネツィオの背後では、鋼色の小狐が目にも止まらぬ連撃にて、次々と鮭熊をドロップアイテムに変えていた…。


私たち騎士団は、鮭熊に敵とすら、認識されていないのだ。


鮭熊が村を襲っていられる時間はわずかなのだ。西の”青い湖”にて産卵する時間、体力を温存しなければならないからだ。太陽が傾き始めると、数千もの数がいた鮭熊も、産卵より戦闘に命を懸けた数十を残すのみとなる。


途中、体力が尽きかけたベネツィオを守るため、村のテイマーたちと騎士団が、ベネツィオを円陣の中に入れ、休憩させたりした。しかし村のテイマーたち、騎士団、ベネツィオの勢いは、最後まで止まらずに、全員無事に鮭熊討伐に成功したのだ。勿論、村への被害もゼロだ。


鮭熊の返り血を浴び夕日に染まる天真爛漫に振る舞う少女ベネツィオに近づく。「大儀であった。ベネツィオ。お前をイフリアン王国軍、組み入れ制度を行使し、召し上げる。現時刻より、お前は、このオルベリック騎士爵の養女となるのだ」と声高らかに宣言する。


組み入れ制度とは、領地または貴族の力を維持または強化する目的のために、考えられた制度である。

条件は、爵位を継承または与えられてから10年後かつ、生涯一度のみに行使可能な権利である。これは制度の乱発による民からの反感を抑えるためである。


ベネツィオはきょとんとした顔でわたしを見る。


「お、お待ちください。ベネツィオは、数週間前に結婚したばかりでございます。そ、それに元王宮魔法使いイーノーベ様の保護下にあらせられます」村長バルベルデが青い顔で訴える。


「ほう? で、イーノーベ様は何処に? なぜ村の危機に手を貸してくださらぬのだ?」

「そ、それは…」と言葉を詰まらせる村長バルベルデ。何事かと騒ぎ始める村人たち。


「ふむ。特に異議申し立てがなければ、ベネツィオを私の養女にするが、問題はないな。まぁ、元より、この制度に対して、王族でない限り、拒否権はないのだが」


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