地下大迷宮からの脱出 その5
ジャラン!! ガシャン!!! と巨大な鎖が、床に落ちた。メタフォの尻尾が銀色に輝いている。しかも3本も! えっと計5本になった。
「ワン…」親との別れに尻尾も耳のダランとなる。慰めようと手を出すと、パクッ噛みつかれ、そっぽを向かれた。ぐぬぬ…。天邪鬼め…。
でも、わたしたちは、沢山の人達から、力を貰っているわね。本当に感謝しないと。
無言でわたしのフードの中に入ってしまったメタフォ。まだ子供なんだもん。心の整理も必要だよね。
一応、この部屋を調査したが、巨大な鎖以外は何もなかった。部屋を出て、十字の中心を目指す。途中、食料が多めにやってきた。もう魔物は食料以外の何物にも見えないのです。スパスパッと短剣で切り伏せる。あれ? 短剣の切れ味も鋭くなってる気がする。感謝、感謝。
幼女の肉体では、それほどの距離を歩くことが出来ない。疲労が溜まる前に移動を中止して、野営の準備をする。準備と行っても、ダンモフのモフモフを敷くぐらいなんだけどね。十字の鍾乳洞は、基本的に遮蔽物がない。どこで寝ても同じなのだ。壁際ならば警戒する方角が多少減るぐらい。まずはうさ角に牛肉などを調理してもらって、先に魔物たちを休ませる。ダンモフのモフモフは、それほど体力を浪費しないけど、うさ角の光焔角はそれなりに体力を使うみたい。それに光焔角は、ずっと明かりとして使っているから、うさ角にはゆっくり休んでもらいたい。
真っ暗闇の中、わたしの意識は、音に集中する。水が落ちる音、風の音、魔物の足音。はじめは怖くて、あたふたしていたけど、落ち着くことが一番効果的だと理解してから、達人のように沢山の気配を感じることができるようになった。
■ステータス
・頭:洞察力がある
⇒獲得考察:闇の真理
いつの間にか、新しい能力を手に入れていた。
***** ***** ***** ***** *****
イーノーベは、村長バルベルデに、ベネツィオの死を報告していた。
「”忘れられた地下大迷宮”は、大きく分けて上層、中層、下層と分かれているのは知ってるな。上層と中層の間の扉は閉じられたまま、誰も通った形跡はない。上層の30階層を3度、調査したが…何の痕跡も無かったのじゃ」
村長バルベルデは、机をドンと力の限り叩く。
「誰が”忘れられた地下大迷宮”などに手を出せと言った? あの方になんと申し開きをするのだ! 村そのものが消される可能性もあるのだぞ。それをお前は…」
部屋にはもう一人、魔法の力に満ちた王宮魔道士のみが与えられるローブを身につけた男がいた。
「元王宮魔法使いイーノーベ様が、三ヶ月も探し出せぬとは、もはやベネツィオ様は、存命しておられぬとみて間違いないでしょう。さて、私は報告がありますので、これにて失礼いたします」
***** ***** ***** ***** *****
ベネツィオが、”忘れられた地下大迷宮”から、953m下の十字路の鍾乳洞に落ちたとき、本人の想像を遥かに超え、体は粉砕していた。光の眷属の力により、魂は体に留められ、遺体の腐敗を防いでいた。ダンモフの新芽の力を13回使用して、やっと本人の意識が戻ったのだ。だが、それだけではない。悪魔の契約が履行され、”灰の眷属”の力、つまり悪魔の力を多少借りてしまったのだ。
悪魔の力を借りれば、その代償は、必ず支払わなければならない。またそれは”光の眷属”の力も同様であり、知っているものがいれば、もう力を使わないでくれと、叫びたくなる情況であった。
ベネツィオの運命は、世界を歪ませ、未来を軋ませるのだった。




