訓練終了
花犬と戦った場所から、数分の距離にマーゼはいた。呼びかけようとするわたしをグラセルに止められる。「ここから見守ろう」とグラセルは言ったのです。
マーゼが戦っている魔物も初めて見るタイプ。木猿はベースが猿で特徴が木だ。毒とか危なそうな特徴じゃないみたいだから、多少は安心して見守ってられるけど。やはりマーゼは恐怖に支配されているのだろう。攻撃も防御も逃げ腰になっていた。だけど、自身の魔物よりも前に出て、必死に戦っている。
「ありゃ、ベースとなる。心か頭に、刻まれた個性なんだろうね。努力じゃ払拭できないかもしれん。命を落とす前に、別の仕事で稼げるようにしてやらんとな」
いつの間にか背後に立つお婆ちゃんが言った。
「ひぃっ! お、お婆ちゃん、脅かさないでよ…」
「馬鹿タレ、お前が気を抜いて、周囲の警戒を忘れてたんじゃろ!」
うっ…。その通りですが…。話をすり替えよう。
「でも、戦えてるよ?」
「あぁ、だからマーゼは、自身の魔物が勝てる程度の戦いをするべきなんじゃ。下手にプライドを守るために、強敵と戦うようでは死ぬだけじゃ。そこをきっちりと、理解するべきじゃな。例え、弱虫と罵られようが、自分のできることをしっかりと理解することを教えなければならん」
マーゼが木猿に勝利すると、わたしとグラセルをこの場に残し、お婆ちゃんだけがマーゼを迎えに行く。遠くから見ていると、マーゼは、大きな声を出したり、泣いたり、と感情の揺れが激しいと思った。
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お婆ちゃんの家に戻り、解散となる。わたしはマーゼに話があると言われ、緊張しながら、お茶を出す。
「俺がベネツィオに訓練を頼んだから、俺が一番頑張らないといけないし、一番のテイマーになりたかった。でも、イーノーベに言われたんだ。努力じゃどうにもならないって。自分の弱さを認めないまま戦い続けても、他人を巻き込むだけだって。悔しいけど、怖くてたまらなかった。でも、”夜の森”で一人になって、木猿を一人で倒せた。ちょっとは自信が付いた。イーノーベは、恐怖は払拭できない、でも勝てる相手ならば、俺でも戦えると教えたかったんじゃないかな」
「うん。それで良いと思うよ。勝てる相手でお金を稼いで、妹と幸せに暮らす。何も悪いことなんてないじゃない? マレカラートができることをやればいいと言っていたでしょ?」
「あぁ…あのときはプライドが邪魔して聞き入れられなかったけど、今なら理解できる。俺は戦闘に向いてないから、今すぐには見つけられないけど、別の何かを探そうと思う。しばらくはイーノーベの訓練に参加しようと思う」
ちゃっかり話を聞いていたお婆ちゃんが言った。
「残念ながら、訓練は終了だよ。お前たちに教えることはもうない。あとは自分たちでゆっくりと安全に頑張るんだな」
「えっと…もう、”三日月の砂浜”への魔法陣は使えないのですか?」
「村の中央の空き家にね。魔法陣を作っておいたさ。行ける場所は、数カ所で安全なところだけだがね。魔物だって生きているんだ乱獲は禁止させてもらうよ」
「そうですか…。ありがとうございます」
「あぁ、それと狩りばかりじゃなく、マレカラートも、いろいろ考えてるようだし、少しは手伝ってやってくれ」




