探索
”夜の森”では魔物に遭遇したことはないんだけど、それは稀に人が通る大通りだからか? それとも比較的に村に近い場所だからか? どちらにしても今いる場所がわからないから、検証もできないのです。ふふふっ。わたしがテイムする魔物たちに勝てるやつは、そうそういないでしょうけど。
驚くことにグラセルは、足場の悪い森をわたしより上手に歩いている。大柄で器用なグラセルは侮れないな…。
太陽の光さえも遮る大森林だ。森全体は薄暗く、たまに抜ける風も草木を揺らし、そこに何かがいると恐怖を煽ってくる。恐怖かぁ…。お婆ちゃんは、マーゼに、恐怖が体に染み付いていると言っていたよね。
「ねぇ、グラセル。恐怖って、そんなに簡単に払拭できるのかな?」
グラセルは足を止めずに、周囲を警戒しながら答える。
「ん〜。ステータスの心と頭がベースだろ? それを変えるのは無理でも、努力次第で多少は変われるんじゃねーかな」
戦闘経験のなかったグラセルは自信に満ち溢れている。うさ角も臆病から慎重に変われた。マーゼも妹のために恐怖を克服して欲しいと思った。
突然、グラセルが足を止めて、わたしに向き直す。「なぁ、ベネツィオ…。お前、男だよな?」
「えっ!?」
「いや…。なんか…昔よりも背が縮んだというか、顔も女っぽいというか…雰囲気がな…」
「あ、あれだよ。俺、男友達も親父いなかったし、お、お婆ちゃんと暮らしていて、女しかしらないし…。そ、それに…。昔じゃ考えられないぐらい、村の人もよくしてくれて、緊張感がなくなったというか…。そんな感じかな?」
「なるほど…な。それに、あれだけ稼げるようになったんだ。食べる物もよくなったせいかもしれんな」
勝手に納得したグラセルは、またマーゼの捜索を開始した。
しばらく捜索を続けていると、花犬という魔物に遭遇するが、グラセルが戦うと言い出した。
「グラセル。その魔物は初めて戦う魔物だ。どんな攻撃をしてくるか、わかってない」
「それはいい。ノーヒントで攻略させてくれ」
敵を中心として、グラセルは剣と盾を構えると左回りに、自身の魔物を右回りに、移動させ挟み撃ちにする作戦だ。
ポイントは鼻の部分が花になった魔物だ。その花からどんな攻撃が来るのか…。
グラセルが敵の正面、自身の魔物が背後というポジションになると、今度は、ジリジリと間合いを詰めていく。うん、グラセルも自身の魔物も瞬発力に欠けるからね。良い作戦だと思うよ。
ハンッ!! と敵が吠え、花の鼻から大量の花粉をばら撒く。グラセルは盾で、花粉の直撃を避けるが後退をしない。それは敵の背後から、自身の魔物が斬りかかるのをアシストするため、つまり敵に後退させないためだ。特徴であるカマキリの鎌が、花犬の後ろ足を切断すると、花粉から逃げるように左回りしたグラセルが、花犬の胴体に剣を叩き込みとどめを刺した。
「やったね…な、グラセル。もう立派なテイマーだな」と素直に褒める。
「ベネツィオに褒められたら、素直に喜ぶしかねぇな」




