三週間後
「三週間だ。その三週間を短いと感じるか、長いと感じるか、人それぞれだ。海猿を圧倒できる者もいれば、未だに逃げ回る者もいる。だが、それが個性だ。できる者はできない者を助け、できない者は別の得意な何かを探せば良い。それが戦闘スキルでなくともだ。それこそが村がある意味だと、俺は思う。ベネツィオに対して酷い扱いをしてしまった俺だからこそ、もう二度と間違えたりしない」
マレカラートは村長の息子として、率先して午後の狩りを行い、親のいない経済的に厳しい同期へドロップアイテムを配っていた。そんなマレカラートが、最近の訓練で感じた戦闘スキルの格差による上下関係に端を発するいじめを危惧して、訓練前に同期全員に諭した。
「よく言ったね。マレカラート。お前の言った通り、得手不得手は誰にでもある。これからは、より個性を伸ばす訓練を行うよ。訓練内容には、格差がある。愚か者はそれに不平を唱えるだろう。そんなときは、マレカラートの言葉を思い出すがいいさ」
イーノーベ老婆の言葉に、異を唱える者はいない。それを確認して、訓練内容を発表した。
「マレカラートとグラセルは、ベネツィオと共に、”忘れられた地下大迷宮”で魔物を一匹でも狩れるようになること。正直、半年かかっても無理だと思うがね。海猿ごときで調子に乗っていると、確実に死ぬさ」
マレカラートのテイマーする魔物は、ベース:鷹、特徴:笛だ。笛の音色は、相手を混乱させることができるため、接近戦と相性が良い。同期の中でも頭一つ飛び抜けた存在だ。しかし”忘れられた地下大迷宮”となると、鷹ベースの魔物は扱い難いかも知らない。
グラセルは全く戦闘経験が無かった。だが同期の中で一番体が大きく器用だった。剣と盾だけで海猿二匹同時でも落ち着いて対処できる戦闘レベルだ。テイマーする魔物は、ベース:亀、特徴:カマキリ。どっしりと構えた戦闘が得意だけれど、素早いステップで翻弄する敵は苦手みたい。
「次は、ニール、シフォ、ギツァの三人は、己と魔物両方を使い、そして三人で組み、海猿と戦ってもらうよ。チームワークが大事だからね」
体に恵まれず魔物も弱い三人を、協力して戦えるように訓練するみたい。
ニールは力が弱く海猿に強打されると、その後の攻防がまるで駄目になる。わたしのように短剣で攻撃をいなせれば良いのだけど、お婆ちゃんが言うには、そのセンスが無いようです。テイマーする魔物は、ベース:猫、特徴:毒蛇。尻尾が毒蛇なので、決まればそれなりに勝機はある。
シフォは頑張り屋なのだが戦闘センスがまるでない。テイマーする魔物は、ベース:狼、特徴:雷。かなり強い魔物を保持している。魔物一辺倒な戦い方になってしまい戦いに幅がなく臨機応変的な戦いに向いていない。うん、”忘れられた地下大迷宮”なんかに行ったら大変だ。
ギツァは鍛冶屋のブリッドさんの息子だ。将来は鍛冶屋になるらしい。ブリッドさんは、どんな魔物をテイムしていたのだろう? ちょっと気になった。ギツァは生まれつき目と耳に障害がある。生活レベルでは問題ないし、一対一ならば、それなりに戦えるが、周囲の警戒に難があり戦いに向いていない。テイマーする魔物は、ベース:蝶、特徴:幻術。幻術が決まれば圧勝するタイプだね。
「最後は、マーゼ。お前は死ぬのが怖くないだとか言っているが、恐怖が体に染み付いてしまってるよ。恐怖は敵ではない。自分を守るために必要だが、お前は必要以上に怖がってしまっている。それをどうにかしないとね」
マーゼは、海猿を剣と盾だけで倒せる実力はある。でもお婆ちゃんの言う通り心が弱い。その弱さは自分を殺し、他人と組んだとしても他人を巻き込むタイプだ。正直、一番教えるのが難しいと思う。テイマーする魔物は、ベース:パンダ、特徴:針。兎に角、体の大きい魔物だ。力も強く一撃で海猿を粉砕する。また全身から針を出して身を守ることもできる。
全員の訓練内容が発表されると、わたしはマレカラートとグラセルを連れて、”忘れられた地下大迷宮”に移動する。あっと、その前に…。
「”忘れられた地下大迷宮”は、移動直後から、襲われることがあるから注意してね。移動したら、剣と盾と魔物で身を守ってね。絶対に動いては駄目。動くものを積極的に攻撃してくる魔物もいるから」と注意する。




